天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー春(18/21)

平成二十三年 

     大楠の精もらひたる御慶かな

     梅白くゴンドラの唄真愛しく

     雉子啼いてひこばえの田を低く飛び

     里山の古民家に住む享保

     園児らをあそばす花の湘南平

     一月の赤き手が割く穴子かな

     初春の鮪喰らはむ三崎港

     ぎんなんを炒る音高し初詣

     柏槇の大きねぢれも御慶かな

     菜の花や下界は青き相模灘

     金柑の種を吐きだす菜の花忌

     臥竜梅見て熱き茶の初音茶屋

     菅公の祀り絶やさず曽我の春

     流鏑馬の道の分てる春田かな

     新しき和み地蔵や木瓜の花

     万作の花咲く奥に観世音

     余震ありはくもくれんの遊園地

     極楽寺千服茶臼沈丁花

     白梅や石に佛のあらはるる

     首筋をさくらの風に晒しけり

     春愁や原発事故の後始末

     うぐひすやこゑに似合はぬ地味な姿(なり)

     人力車花の大路を駈けゆけり

     たんぽぽの花のをはりやビッグバン

     腰越の路面電車や初つばめ

     里山のうち返されし春田かな

     さへづりや亭々と立つ杉欅

     湯の町の宿を燕の出入して

     地震跡をいたむ鴫立庵の春

     とりが啼く東いちげは白き花

 

平成二十四年 

     退職の身に新春の面映ゆき

     富士さくら見つつ頬張るむすびかな

     あらたまの写経にならぶ弁天堂

     風光るとぎれとぎれの松並木

     万作の花咲く朝の講話かな

     ありし日の祖母を思へり福寿草

     春蘭の自慢の鉢を並べたる

     梅林や柱状節理ロープ垂れ

     鎌倉に手玉石いくつ春うらら

     鎌倉や塔頭はみな花の奥

     地獄沢天より花のちり来たる

     警策の音森閑と桜かな

     こころよきこゑを競へる春田かな

     熊蜂のわがもの貌や藤の花

     軒下にわらび餅食ぶ雨やどり

     鎌倉の谷戸を忘れずつばくらめ

     国交にさきはひあれと年迎ふ

 

f:id:amanokakeru:20220410063658j:plain

流鏑馬