天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー春(19/21)

平成二十五年 

     ひこばえや村社にふたつ力石

     見上ぐれば花の回廊西行

     薄氷の田の面まぶしむぬかり道

     初春の庭に飛び立つ竹トンボ

     白梅や老いたる幹の芯は洞

     白梅の枝垂るる先に元使塚

     咲き満ちて沈黙ふかき桜かな

     春の日の水琴窟にあそびけり

     うぐひすのこゑ初々し石地蔵

     小田原城さくら吹雪の天守

     花を見る絵島囲ひの狭き部屋

     吾妻山木蔭に蝶々もつれあふ

     母逝きて年改まる六畳間

 

平成二十六年 

     口に手にあまるめでたさ恵方巻

     老犬が老人を牽く花の下

     集まりてにこにこ笑ふすみれかな

     そのかみの村は湖底に山桜

     飼ひ犬をびくつかせたり雉の声

     初春のわが俳枕力石

 

平成二十七年 

     園児らがあそぶ山頂花の雲

     風待ちて凧の休めるたんぼかな

     初春や蛸せんべいに人並ぶ

     立春のひかりまぶしむ朝寝坊 

     山ふたつ尾根をたどりて梅の里 

     よび水や水琴窟に春のこゑ

     なか吊りに桜だよりや小田急

     春眠をむさぼる若きヒグマかな

     回らむともがく水車や水ぬるむ

     甲羅干す亀も見上ぐる桜かな

     骸骨に生前の笑み春うらら 

     羽根ひろげ春爛漫の孔雀かな 

     白藤の風に吹かれてフラダンス

     天竜の蛇行見下ろし揚げひばり

 

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竹トンボ