天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー春(21/21)

平成三十一年(令和元年) 

     あらたまの元号待つやあきつ島

     鉄砲宿さくら並木の東海道

     銭洗ふ妻を見てをり初詣

     梅まつり梯子にあるく小猿かな         

     たらの芽をてんぷらにしてラム酒かな      

     春きたる大島航路の白き船           

     老人と老犬がくる夕桜     

     新元号「令和」ことほぐ花見酒  

     流れくる雲にさそはれ桜散る 

 

令和二年 

     即位式経てあらたまの令和かな

     清水や花さく友禅着てあるく

     見慣れたる松もあたらし初詣     

     松過ぎてカテーテルとるうれしさよ  

     あらたまの木漏れ陽に聞くリスのこゑ 

     玄関をあけて驚く春の富士 

     この庭に育ちて咲ける桜かな 

     切り出せる石の白さや春日さす 

     ウィルスにつづきて来たる黄砂かな 

     池の面にしだるる花へ鯉の口  

     手作りのマスクして行く花見かな   

     感染を忘れて仰ぐ桜かな 

     凧ひとつ自粛の空に鳴る 

     忘れしが名札のありて花海棠 

     人避けて清明の朝散歩せり

 

令和三年 

     宇宙にも初めと終り初茜

     コロナ禍にまたも遠のく花見かな

     家々の輝く丘や年あらた 

     撫で牛を撫でてはならず初詣

     歩道橋春の嵐に帽子飛ぶ

     それぞれの犬つれつどふ桜かな

     馴染めざる建国記念日富士白し 

     飼ひ犬のしつけ手こずる春の芝 

     別邸のむかしをしのぶ蕗の薹 

     空をくる黄砂おそろし雪の富士  

     虫出しや居間に腰うく老夫婦 

     うぐひすや花海棠も遅れまじ 

     うぐひすにそそのかされて口説きけり

     春雨や痔疾押さへてバスを待つ 

     窓たたく春の夜風や眠られず 

     泌尿器科いのちの春をなつかしむ

     春泥にからだを洗ふ雀かな 

 

 

[参考]句集には引用していないが、いくつか参考までにwebから画像を

引いておいた。

 

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友禅