天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー夏(14/14)

平成三十年 「円位堂」

     近況のメモ添へてある新茶かな

     見るほどに蕾ふくらむアマリリス        

     いただきし新茶に今日を始めんと 

     バスを待つ人影いくつ木下闇

     梅雨明けの前触れなるかつむじ風 

     バス待つや右手にメロンぶら下げて 

     青天の西につらなる雲の峰

     うな重をうなぎ供養と言ひて食べ

     浜茄子の実や太陽の子を宿す 

     一週間ごとに取り替へ夏帽子 

 

平成三十一年(令和元年) 「からす瓜」

     窓に入る日差しに咲けりアマリリス 

     紫陽花のなだるる先に由比ヶ浜

     何事か帽子に蝉のぶつかり来 

     墓じまひ決断迫る蝉のこゑ 

 

令和二年 「日脚」

     二十年ともに暮らせるアマリリス

     ザリガニの鋏が真っ赤梅雨の沼

     卯の花や新型コロナ恐れつつ 

     万歩計歩数気にする梅雨の道     

     梅雨出水生存罪悪感の村   

     雨やみて胸はだけたる大暑かな  

     甲虫少年の手に足掻くのみ    

 

令和三年 「初茜」 

     大木の老いを忘るる若葉かな

     コロナ禍の街に食ひたりうなぎ飯 

     居眠りて弱冷房車乗り過ごす 

     思ひ出に苦しめらるる酷暑かな 

     あらためて外出自粛の猛暑かな 

     ななそぢの道につまづく猛暑かな 

     故里の出水気遣ふテレビかな 

     洪水の跡炎天に立ち尽くす  

 

ザリガニ