天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー秋(7/11)

平成十七年 「アライグマ」           

    ぎんなんを残らず拾ふ神明宮

    赤々と熟柿くづるる谷戸の雨

    秋の日の大名行列うらがなし

    石塊に魂一字菊香る

    臨済宗大本山のもみぢかな

          椎茸のほだ木あたらし赤まんま

          黄葉の陰なす山や海光る

          街道へ脚立はみだし松手入

          山もみぢ鎌柄はウシコロシとも

          いてふ散る皿布切に刀剣に

    虫食ひの穴点々と酔芙蓉

    政治家の文人画家の盆灯籠

    黒猫が毛玉吐き出す残暑かな

    入組める運河が臭ふ残暑かな

    朝顔の大輪浮かぶ洗面器

    回遊の鯉のはやさも水の秋

    にはたづみ鳩が水飲む残暑かな

    大輪の朝顔盆にうつぶせる

    すれちがふ電車無人の秋灯(ともし)

    玄関に木の葉ふき入る野分かな

    予期せざる時と処に彼岸花

    をさな児が指差しだすや赤とんぼ

    畦に立つ案山子と見れば農夫かな

    月影に萩の花散る極楽寺

 

平成十八年 「滝口」

    滝口の見えざる山のもみぢかな

    ヘリコプター秋の朝日を侵したり

    白菊に絹のひかりのありにけり

    白鳩のむつめるさくらもみぢかな

    銀杏ちつて足裏にやさし九段坂

    石仏の首みんなとれ秋の風

    夕されば夢見る東京秋灯

    すれちがふ電車無人の秋灯

    大銀杏黄葉(もみ)づる時宗総本山

          台風のきざす海鳴り鴫立庵

    コスモスや空手に先手なしといふ

    この寺に土牢ふたつ谷戸の秋

    ぎんなんのむれたる下の神楽かな

    裁定をまちて今年もつくつくし

    白萩を掻き分けてゆく奥之院

    無患子の実は青きまま秋の風

 

ぎんなん