天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー秋(10/11)

平成二十四年 「盆提灯」           

     子らの絵や遊行通りの盆提灯

     ゆく雲の影にくもれる稲田かな

     鎌倉に風の声聞く萩の門

     稲穂垂れ東西南北威銃

     ヤナップカービィもゐる案山子かな

     糸瓜忌や墓碑に没年月日なく

     日蓮のをどる筆跡水の秋

     大山は鹿啼くこゑをかなしめり

     ゐのししの潜む高麗山紅葉狩

     海へ出て波掻き立つる野分かな

     月天心一本松をいとほしむ

     木槿咲く犬猫医院休診日

     腹開き軒下に干す新秋刀魚

     走り去る電車の風に秋を知る

 

平成二十五年 「大道芸」          

     秋まつり大道芸も島に来て

     実柘榴に怒りの顔のありにけり

     ジャンパーの袖に執着ゐのこづち

     小吉の御神籤むすぶ紅葉かな

     落柿舎の庭ひびかせて鹿威し

     懸崖の真白き菊や天守

     しきしまの大和は柿と青空と

     掃くほどに大銀杏ちる総本山

     竜胆のつぼみ咲き初むさざれ石

     月天心球場を去る人のむれ

     鉢植ゑの蓮の実がとぶ軒廂

     突堤の釣果やいかに赤とんぼ

 

平成二十六年 「団栗」

     団栗の落下に怯む山路かな 

     天高しはるかに望む古戦場 

     電線を撓めて並ぶ稲雀

     のり出して道に種吐く柘榴かな

     湯けむりの谷より仰ぐ紅葉かな

     もみぢして烏天狗のあらはなる

 

平成二十七年 「力石」          

     ぎんなんを踏みて近づく力石      

     帰りには大山豆腐紅葉狩

     吹く風に背中押されて秋来たる 

     枯れのこる桔梗に矜持ありにけり 

     里山をひととき統ぶる鵙の声

 

竜胆