天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー冬(8/9)

平成二十三年 「彼岸花」              

     富士の山甲斐へとかぶく冠雪よ

     わらんべが枯葉あつめて風呂といふ

     冬涛のとどろく岩屋龍の夢

     木漏れ日をただよひゆくか雪蛍

     餅搗くや小谷戸の里に子供会

     笹鳴や猫がとび込む藪の中

     猛々し朝の光の水仙

     扁平の仏足石にかざり餅

     佛手柑のあまた垂れをる寒さかな

       とりとめもなく探梅の白なりき

      望遠鏡富士の雪崩をとらふべく

     凩を知らせて木々の唸り声

     窓枠に雪つもりたる書斎かな

 

平成二十四年 「盆提灯」           

      凍蝶が日に羽根ひらく元使塚

      ささがにの囲ひを破る落葉かな

      冬立つと田野に知らす雉のこゑ

      阿仏尼の住ひし谷戸の小春かな

      小鳥来る雑木林にこゑ燦々

      笹鳴の羽根ひるがへる葉蔭かな

     凩や達磨寺に買ふ大だるま

     探梅行剪定の枝持ち帰る

     雪よ降れメルトダウンの原子炉へ

     歌碑句碑の文字を読み解く笹子かな

 

平成二十五年 「大道芸」          

     笹子鳴く道の右藪左藪

     石仏に供へし蜜柑リスが食む 

     雪踏んで子等一列に登校す

 

平成二十六年 「団栗」

     泣きながら冬の橋くる勤め人

     三峰の月に狼吠えしこと

     宝永の噴火のくぼみ雪あかり

     里山や落葉のつもる獣落し

 

平成二十七年 「力石」          

     落葉掻終へたる庭の力石 

     手前には火の見櫓や雪の富士

     極月の客をくどくや人力車

     初雪の山路にころび古希になる

 

平成二十八年 「延寿の鐘」         

     見つむればふくら雀が首かしぐ 

     孫たちにスマホで送る雪景色

     歳晩の波音を聞く円位堂

 

仏足石