天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー冬(9/9)

平成二十九年 「古希の春」

     鳩来り積める落葉を掻きちらす

     他愛無き言葉に笑ふ七五三 

     小春日や大黒天を撫でまはす

     街路樹の落葉みつめて人を待つ 

     裏山に土牢二つ笹子鳴く

     銭洗ふ師走の水や弁財天  

     冬枯れのけやきの根方鋏塚      

     大寒や熱きご飯に生たまご      

     寒風に顔さらしたる朝湯かな     

     冠雪の富士あからひく朝日光

 

平成三十年 「円位堂」

     抹茶待つ小春日和の開基廟

     木の間より枯葉ちりくるつづら折り

     笹鳴きの声より近き姿かな

     水槽にエヒの笑顔や大晦日 

     駅伝や富士の冠雪まだらなる 

     力石見つけてうれし雪催

     けさ晴れて道に掻き出す塀の雪

     通院も三寒四温となりにけり 

     墓地のみが残るふるさと雪が降る

 

平成三十一年(令和元年) 「からす瓜」

     蜘蛛の囲の主人おどろく落葉かな

     ささがにのねむりをさます落葉かな 

     自転車をおほかた隠す花八つ手

     墓じまひよりはこのまま雪の墓地

 

令和二年 「日脚」

 

     乗り込めるバスの座席に日脚伸ぶ

     枯葉ちる手づくりパンの店先に 

     こも巻きの松を見下ろす天守閣 

     収穫をことほがごと藁ぼつち

     掘り出だす蓮根積みて壁なせり

     風寒しベビーバギーに犬のせて

     カーテンの隙間に見たる雪の嵩 

     雪積める妻の故郷を思ひやる

 

令和三年 「初茜」 

     けさカーテンに霜降の日差しかな

     冬到来大樹の梢震はせて 

     大寒の夜空飛びくる火球かな

     家うちも夫婦でマスク花粉症  

     今ははや過疎の故里雪の中

 

火球