天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

芭蕉

 バショウ科の大形多年草。果実はバナナに似る。玉巻く芭蕉は、巻き葉のことを美しく表現したもの。他にも玉椿、玉串、玉繭などに見られる。

 

     島庁や訴人もなくて花芭蕉       日野草城

     島の子と花芭蕉の蜜の甘き吸ふ     杉田久女

     真白な風に玉解く芭蕉かな       川端茅舎

     玉巻く芭蕉病身反らすこと少なし    加藤楸邨

     軽き太陽玉解く芭蕉呱々の声     中村草田男

 

  かぜふけばあだにやれ行くばせを葉のあればと身をもたのむべきかは

                      山家集西行

  きりぎりすまぢかきかべにおとづれてよひの雨ふる庭のばせを葉

                      夫木抄・寂蓮

  縁先に玉巻く芭蕉玉解けて五尺の緑手水(てうづ)鉢(ばち)を掩ふ

                        正岡子規

  芭蕉葉にさはりし風の音たえてさびし今宵は虫の音もせぬ

                        金子薫園

  秋風の日にけに吹きて破(やれ)芭蕉ゆふべそぞろに寒けくなりぬ

                         岡 麓

  芭蕉葉はのきに植ゑしが夜のあめにあり処(ど)しらるる音いちじるし

                        中村憲吉

  素枯れ葉に垂れりつつ長き芭蕉の花苞(ほう)の中にはこもる花見ゆ

                        土屋文明

 

芭蕉