天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

苔の花

 俳句の季題には苔の花があるが、植物学的には苔には花は咲かないらしい。白や薄紫色の胞子を入れた胞子囊を花に見立てたようだ。

 

     岩角や火縄すり消す苔の花       太祇

     御地蔵や膝も眼鼻も苔の花       一茶

     水打てば沈むが如し苔の花     高浜虚子

     苔咲くや親にわかれて二十年    村上鬼城

     苔さくや仏うするる石の面     石橋秀野

     苔の花顔ばかり日を当て歩く    岸田稚魚

     耶蘇墓地へ土の階あり苔の花    森冬比古

     小流れの音も菩提や苔の花    花田いそ子

 

  父母の墓いしの苔はがしおり乾きこぼるる苔は花持つ

                      武川忠一

 

苔の花