天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

萍(うきくさ)

 ウキクサは、浮草、根無草、無者草(なきものぐさ)(秋になると姿を消し、春に再び現れることから)などとも。古名をカガミグサといった。

直径 3–10 mm ほどの葉状体から、多数の根が水中に伸びている。葉状体は5–16脈をもち、裏面はふつう紫色を帯びる。

 

     うき草を吹きあつめてや花むしろ      蕪村

     萍の鍋の中にも咲にけり          一茶

     萍や泥にさし置く舟の棹        佐藤紅緑

     萍は町に入りても走りつつ       山口誓子

     萍のつきたる足の急ぎ足       中田みづほ

     萍を逃るるさまに漕ぎ離れ       中村汀女

     息苦しきまでに萍壮士の墓       永野絢子

 

  水の面におふるさ月の浮草のうきことあれや根を絶えてこぬ

                    古今集凡河内躬恒

  侘びぬれば身をうき草の根を絶えて誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ

                     古今集小野小町

  たぎつ瀬に根ざしとどめぬ浮草のうきたる恋も我はするかな

                     古今集壬生忠岑

  せきもあへぬ涙の川は早けれど身のうき草はながれざりけり

                     金葉集・源 俊頼

  葛飾の真間の手児奈(てこな)が跡どころその水の辺のうきぐさの花

                         北原白秋