天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

 キク科の多年草。雌雄異株で地下茎を伸ばして繁殖する。

 

     沢水の川となり行く蕗がくれ       高浜虚子

     産褥をはなれて青き蕗洗ふ       百合山羽公

     母の年越えて蕗煮るうすみどり      細見綾子

     蕗むくや歳月かけて妻となりぬ     渡辺喜久子

     水に放つ蕗のさみどり交錯す      奥野美枝子

 

  外濠の見附の土手の蕗の葉の裏ふく風はすでに夏なり

                         太田水穂

  みなぎらひ茂美を出でし激(たぎ)つ瀬は蝕(むしば)む蕗の葉むらを浸(ひた)す

                         柴生田稔

  蕗の葉の円(まろ)きひかりをみるときにみなぎりきたれあすのいのちは

                         坪野哲久

  さざれ水うねれる岸に蕗の薹三つ四つ見えて小雨に濡るる

                         窪田空穂