天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

万緑

 王安石漢詩「万緑叢中紅一点」は古くからよく知られているが、俳句の季題

になったのは、以下の中村草田男の昭和十四年作からという。

 

     万緑を顧るべし山毛欅(ぶな)峠   石田波郷

     甕の濡れ一条黒し万緑下      平畑静塔

     万緑の中や吾子の歯生え初む   中村草田男

     万緑や神父の歩幅裾中に      神林信一

     万緑や一人で渡る橋長し     砂井斗志男

 

  万緑の中游ぐかにかへりきてここに左右の頬殴たるる愛

                      塚本邦雄

 

万緑