言(こと)問(と)はぬ樹にはありともうるはしき君が手馴(たな)れの琴にしあるべし
万葉集・大伴旅人
わが背子(せこ)が琴取るなへに常人のいふ嘆(なげき)しもいや重(し)き益(ま)すも
万葉集・大伴家持
言(こと)問(と)はぬ木にはありともわが背子が手(た)馴れの御琴地(みことつち)に
置かめやも 万葉集・藤原房前
秋風にかきなす琴のこゑにさへはかなく人のこひしかるらむ
古今集・壬生忠岑
わび人の住むべき宿と見るなべに嘆きくはへる琴の音(ね)ぞする
遍昭
みじか夜のふけ行くままに高砂の嶺の松風吹くかとぞ聞く
後撰集・藤原兼輔
秋風のことに身にしむ今宵かな月さへすめる庭のけしきに
西行
*秋風楽(雅楽。唐楽。盤渉(ばんしき)調の中曲。舞は四人舞。現在は曲・舞ともに
廃絶。)の琴を暗示している。

琴