天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

和楽器を詠むー琴(1/2)

  言(こと)問(と)はぬ樹にはありともうるはしき君が手馴(たな)れの琴にしあるべし

                     万葉集大伴旅人

  わが背子(せこ)が琴取るなへに常人のいふ嘆(なげき)しもいや重(し)き益(ま)すも

                     万葉集大伴家持

  言(こと)問(と)はぬ木にはありともわが背子が手(た)馴れの御琴地(みことつち)に

  置かめやも              万葉集藤原房前

 

  秋風にかきなす琴のこゑにさへはかなく人のこひしかるらむ

                     古今集壬生忠岑

  わび人の住むべき宿と見るなべに嘆きくはへる琴の音(ね)ぞする

                         遍昭

  みじか夜のふけ行くままに高砂の嶺の松風吹くかとぞ聞く

                     後撰集藤原兼輔

  秋風のことに身にしむ今宵かな月さへすめる庭のけしきに

                         西行

*秋風楽(雅楽。唐楽。盤渉(ばんしき)調の中曲。舞は四人舞。現在は曲・舞ともに

 廃絶。)の琴を暗示している。