松風のひびきも添へぬひとりごとはさのみつれなき音(ね)をやつくさむ
西園寺実宗
ひと張(はり)の琴かき鳴し中人(なかうど)と無くてめとりしあはれ我妻
春三月柱(みつきぢ)おかぬ琴に音たてぬふれしそぞろの宵の乱れ髪
今の我に歌のありやを問ひますな柱(ち)なき繊(ほそ)糸(いと)これ二十五弦
悲しとてわれと断ち得ぬ琴の緒のかぼそきだにも惜しきいのちや
相馬御風
箜篌(くご)の音(ね)を聞くと夢みし常盤樹(ときはぎ)のこの林にか君おはすべき
平野万里
膝の上に琴傾ぶけてひくをとめ伽耶(かや)の都のものがたりせよ
耐へかねて鳴り出づる琴があるといふあああれは去年(こぞ)の秋のわたくし