天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

和楽器を詠むー琴(2/2)

  松風のひびきも添へぬひとりごとはさのみつれなき音(ね)をやつくさむ

                        西園寺実宗

  ひと張(はり)の琴かき鳴し中人(なかうど)と無くてめとりしあはれ我妻

                        与謝野鉄幹

  春三月柱(みつきぢ)おかぬ琴に音たてぬふれしそぞろの宵の乱れ髪

                        与謝野晶子

  今の我に歌のありやを問ひますな柱(ち)なき繊(ほそ)糸(いと)これ二十五弦

                        与謝野晶子

  悲しとてわれと断ち得ぬ琴の緒のかぼそきだにも惜しきいのちや

                         相馬御風

  箜篌(くご)の音(ね)を聞くと夢みし常盤樹(ときはぎ)のこの林にか君おはすべき

                         平野万里

  膝の上に琴傾ぶけてひくをとめ伽耶(かや)の都のものがたりせよ

                         岡野弘彦

  耐へかねて鳴り出づる琴があるといふあああれは去年(こぞ)の秋のわたくし

                         稲葉京子