天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

和楽器を詠むー笛(1/3)

 「笛」は弦楽器の総称である「琴」に対して管楽器の総称である。

 

  笛竹のもとのふるねは変るともおのがよよには居らずもあらなん

                   後撰集・よみ人しらず

  笛竹の夜ふかき声ぞきこゆなる峯の松風吹きやそふらむ

                     千載集・藤原斉信

*この歌は、後撰集の「みじか夜のふけゆくままに高砂の峰の松風吹くかとぞ聞く

 藤原兼輔」から派生したもの。

 

  吹きたつる笛の調の声きけばのどけき塵もあらじとぞ思ふ

                         藤原仲家

  あくがるる梅が香ながら笛の音はこころあるべき朧月夜を

                        三條西実隆

*大意: あたりにほのかに漂い心がここになくなるような梅の香ではあるが、

 笛の音にはいかにも心がありそうな朧月夜である。

 

  笛の音(ね)のあなあわれにもきこゆるよ星うつくしき夏の夜ふけ

                         窪田空穂

  笛の音(ね)に法華経うつす手をとどめひそめし眉よまだうらわかき

                        与謝野晶子