天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

和楽器を詠むー笛(2/3)

  朝あけて船より鳴れる太(ふと)笛(ぶえ)のこだまはながし竝(な)みよろふ山

                         斎藤茂吉

  沖遠く出でにけらしな汽笛(ふえ)の綱ひけど答ふる山彦もなし

                         石榑千亦

  ものなべて身に染(し)むゆふべわが船の笛のひびきも耳に残りぬ

                         吉井 勇

  山かげの闇に吸はれてわが船はみなとに入りぬ汽笛(ふえ)長う鳴る

                         若山牧水

  笛ふきて踊り出づべきものならば笛ふかずともをどりをどらむ

                        尾山篤二郎

  宵(よ)かぐらの笛の音遠くきく渚ここに根までも生えしわが生

                         鎌田純一