歌人を詠むー西行(1/2)
朽葉いくつしづむ清水を手にむすぶ花(はな)狂人(くるひびと)ここに
命やしなひき 上田三四二
西上人(さいしやうにん)の御霊(みたま)つつむと春ごとに花散りかかる
その墓のうへ 安田章生
真に偉大であった者なく三月の花西行を忘れつつ咲く
三枝昂之
西行の桜の散れるころと思ふ志賀の桜も麗らかにして
国崎望久太郎
對馬恵子
金雀枝(えにしだ)縦横無尽に吹かれ西行が持ちかへりける砂金三萬両
頑丈なる体さびしみ旅を行く西行法師の笑わぬ一生
夢の中に夢見る如きかなしみか、西行が見る佐藤義(のり)清(きよ)
西上人長明大人の山ごもりいかなりけむ年のゆふべに思ふ
願ひおきて死にし西行の墳(つか)おほふ春の木(き)草(ぐさ)の
こんもりと青し 十鳥敏夫
吉野にはなど死なざりし西行と問ふわが胸に月昇りけり
湧き上がる春の白雲 能因も釈阿も西行も入道なりき
栗木京子