歌集『夜のあすなろ』(2/6)
はらほろり風船かづらしら花にほらふりはらり七月の雨
ぴしぴしと目高はひかりくぐりをりすいれん鉢に七月の雨
情(じやう)ふかき女のごとし夜(よ)はふけてしんしん雪が降るふりつもる
かすていらほろろほぐるる春の日やわが手のひらに雀子よ来(こ)よ
さかさかとふれあふおとを確かめて地這胡瓜の種を買ひたり
ばつさばつさ伐りおとしたる枇杷の枝うちかさなりし六月の庭
車椅子ぐぐいと漕げば病棟の廊下にこころいささか弾む
剥がれさうな大きな月がのぼりをり幼子ついと頭(かうべ)をまはす
あうあうと鴉さわげる午後にして樹木葬などわがおもひをり
ふるるるる電波時計の針ふるへうごきはじめて家よみがへる
わらわらと鉢の底より湧きあがり目高ら生きておよぐ 嬉しも
[注]このブログに載せた画像は歌集には無く、WEB上のものを筆者が参考までに添付した。