天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

知覚を詠むー光・闇(1/3)

  油(あぶら)火(び)の光に見ゆるわが蘰(かづら)さ百合の花の笑(ゑ)まはしきかも

                  万葉集大伴家持

  月よみの光を清み神島の磯廻(いそみ)の浦ゆ船出(ふなで)すわれは

                  万葉集・作者未詳

  久にあらむ君を思ふにひさかたの清き月夜も闇のみに見ゆ

                  万葉集・作者未詳

*大意: 長い旅路になるでしょう。そのあなたを思うと、清らかな月夜も、

    まるで闇夜のように見えます。

 

  おほ空を照りゆく月しきよければ雲かくせども光消(け)なくに

                    古今集・敬信

  久かたのひかりのどけきはるの日にしづ心なく花のちるらむ

                   古今集紀友則

  春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる

                 古今集凡河内躬恒

  闇晴れて心の空に澄む月は西の山べや近くなるらむ

                   新古今集西行

 

百合の花