天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

知覚を詠むー暑さ・寒さ(2/3)

  あつき日を幾日も吸ひてつゆ甘く葡萄の熟す深き夏かな

                     木下利玄

  ひげのびし顔涙して寝るかたへ熱き体を汝も並ぶる

                     近藤芳美

  ゆきづまりの空地に来り考えし暑き夕べとのみ記憶せり

                    岡部桂一郎

  ながらふる妻吹く風の寒き夜にわが夫(せ)の君はひとりか寝(ぬ)らむ

                 万葉集・誉謝大王

  秋の夜は露こそことに寒からし草むらごとに虫のわぶれば

               古今集・よみ人しらず

  岩の上にたびねをすればいと寒し苔の衣をわれにかさなむ

                 後撰集小野小町

 

葡萄