わが句集・平成二十六年「団栗」
団栗の落下に怯む山路かな
天高しはるかに望む古戦場
電線を撓めて並ぶ稲雀
のり出して道に種吐く柘榴かな
泣きながら冬の橋くる勤め人
口に手にあまるめでたさ恵方巻
老犬が老人を牽く花の下
集まりてにこにこ笑ふすみれかな
そのかみの村は湖底に山桜
飼ひ犬をびくつかせたり雉の声
三峰の月に狼吠えしこと
若葉してくぬぎ根を張る岩畳
本堂に足投げ出して涼みけり
子と並びザリガニを釣る日傘かな
紫陽花や孔雀啼く声恐ろしき
梅雨晴れの入江をめぐるカヌーかな
炎帝がからから笑ふ力石
汗ぬぐふ伏見稲荷の一の峯
龍の吐く水に両腕冷しけり
宝永の噴火のくぼみ雪あかり
泡とばす洗車の水の涼やかに
夕焼の空はすかいに五智如来
初春のわが俳枕力石
湯けむりの谷より仰ぐ紅葉かな
もみぢして烏天狗のあらはなる
里山や落葉のつもる獣落し