天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集・平成二十七年「力石」

       ぎんなんを踏みて近づく力石      

       落葉掻終へたる庭の力石 

       帰りには大山豆腐紅葉狩

       手前には火の見櫓や雪の富士

       極月の客をくどくや人力車

       園児らがあそぶ山頂花の雲

       風待ちて凧の休めるたんぼかな

       初春や蛸せんべいに人並ぶ

       立春のひかりまぶしむ朝寝坊 

       山ふたつ尾根をたどりて梅の里 

       よび水や水琴窟に春のこゑ

       なか吊りに桜だよりや小田急

       春眠をむさぼる若きヒグマかな

       回らむともがく水車や水ぬるむ

       甲羅干す亀も見上ぐる桜かな

       骸骨に生前の笑み春うらら 

       羽根ひろげ春爛漫の孔雀かな 

       白藤の風に吹かれてフラダンス

         天竜の蛇行見下ろし揚げひばり

       梅雨いまだ天竜川をうるほさず

       涼風やうたたねに本すべり落ち 

       恐竜の模型が吼える夏休み 

       大花火窓辺の妻を影絵とし

       山の端に月かたぶきて花火終ふ 

       吹く風に背中押されて秋来たる 

       初雪の山路にころび古希になる

       アオバトの群れきて飲むよ青葉潮

       三門の二階の涼し南禅寺        

       枯れのこる桔梗に矜持ありにけり 

       里山をひととき統ぶる鵙の声

 

人力車