天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集・令和三年「初茜」

       宇宙にも初めと終り初茜

       狗尾草(ゑのころ)や廃車のめぐりとり囲む 

       道の辺に思ひ出したり杜鵑草

       けさカーテンに霜降の日差しかな

       秋風の別れの声か楠の空

       冬到来大樹の梢震はせて 

        コロナ禍にまたも遠のく花見かな

        家々の輝く丘や年あらた 

       撫で牛を撫でてはならず初詣

       大寒の夜空飛びくる火球かな

       歩道橋春の嵐に帽子飛ぶ

       それぞれの犬つれつどふ桜かな

       馴染めざる建国記念日富士白し 

       飼ひ犬のしつけ手こずる春の芝 

       家うちも夫婦でマスク花粉症  

       別邸のむかしをしのぶ蕗の薹 

       空をくる黄砂おそろし雪の富士  

       虫出しや居間に腰うく老夫婦 

       うぐひすや花海棠も遅れまじ 

       うぐひすにそそのかされて口説きけり

       大木の老いを忘るる若葉かな

       春雨や痔疾押さへてバスを待つ 

       窓たたく春の夜風や眠られず 

       泌尿器科いのちの春をなつかしむ

       月蝕は赤黒かりき望の月

       コロナ禍の街に食ひたりうなぎ飯 

       春泥にからだを洗ふ雀かな 

       居眠りて弱冷房車乗り過ごす 

       それぞれの犬つれつどふ桜かな

       思ひ出に苦しめらるる酷暑かな 

       あらためて外出自粛の猛暑かな 

       ななそぢの道につまづく猛暑かな 

       故里の出水気遣ふテレビかな 

       洪水の跡炎天に立ち尽くす  

       今ははや過疎の故里雪の中

 

狗尾草