梅雨になったので傘を手放せない。最近は折りたたみ傘の値段も随分安くなったし、百円のビニール傘もコンビニに売っているので、手元になければ容易に買うこともできる。
おびただしき蝙蝠を吐き街にしづむ小さき窓にまた雨は沈む
浜田 到
悲しみと言ふならねどもアンブレラその紅の裏返りつつ
高嶋健一
傘を振り雫はらえば家の奥に父祖たちが低き「おかえり」の声
佐佐木幸綱
蝙蝠傘(こうもり)のしずくながれてゆれるたび翳のひろがる
地下鉄の床 小高 賢
折りたたみ傘をたたんでゆくように汽車のりかえてふる里に着く
俵 万智
サ行音ふるわすように降る雨の中遠ざかりゆく君の傘
俵 万智