天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

傘(3)

番傘

 梅雨になったので傘を手放せない。最近は折りたたみ傘の値段も随分安くなったし、百円のビニール傘もコンビニに売っているので、手元になければ容易に買うこともできる。


  おびただしき蝙蝠を吐き街にしづむ小さき窓にまた雨は沈む
                        浜田 到
  悲しみと言ふならねどもアンブレラその紅の裏返りつつ
                        高嶋健一
  傘を振り雫はらえば家の奥に父祖たちが低き「おかえり」の声
                       佐佐木幸綱
  蝙蝠傘(こうもり)のしずくながれてゆれるたび翳のひろがる
  地下鉄の床                 小高 賢


  折りたたみ傘をたたんでゆくように汽車のりかえてふる里に着く
                        俵 万智
  サ行音ふるわすように降る雨の中遠ざかりゆく君の傘
                        俵 万智