天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

石蕗

つわ、つわぶき と読む。蕗とは別属で、キク科の常緑多年草。東海、中部以南の海岸や海に近い山に自生する。葉が蕗に似ていて、つやつや光っているところから、艶蕗に名前の由来があるという。この葉には腫物、湿疹に薬効がある。俳句では冬の季語。 地軸よ…

熱海の夜

毎年のように大学同期卒業のメンバーが集まって同窓会を開いている。このメンバーは、大学時代から、山中湖や伊豆で合宿して騒いだ連中。かといって日頃は全く接触はない。世話役が気を使っているからである。 今年は、熱海で開催、十名の出席であった。 天…

うめもどき

モチノキ科の落葉低木。落葉後もついているたくさんの小さな赤い実を愛でて、庭木、盆栽、生花などに使う。漢字で、梅擬と書く。 ひゑ鳥のうたた来啼や梅もどき 蕪村 晩年の濃き茶二人で梅もどき 福田紀伊 鎌倉のいたるところに梅もどき 中川宗淵 裏やぶにこ…

三島・水辺の文学碑

JR三島駅には、伊豆修善寺や柿田川を訪ねる際に、たびたび下車した。駅前の桜川沿いに、三島市を作品に書いた文学者の碑が数メートル置きに並んでいる。町起し企画の一環であろう。俳人、歌人の碑をあげると、 すむ水の清きをうつす我が心 宗祇 面白やどの…

木瓜(ぼけ)の返り花

藤沢市新林公園を歩いていたら、驚いたことに、木瓜の返り花を見かけた。十月桜やつつじの返り花は、毎年のように見かけるが、写真のような木瓜の返り花には初めて出遭った。 木瓜は中国原産のバラ科の落葉低木。春、葉に先立って短い柄のある五弁あるいは八…

木賊

これで「とくさ」と読む。砥草と書くこともある。シダ植物トクサ科の多年草。表皮にケイ酸が蓄積して硬化し、砥石のように茎でものを研ぐことができることから、砥草(とくさ)の名がついた。実際には、茎を煮て乾燥させ、紙ヤスリのような研磨に使う。高級…

秋明菊

別名、貴船菊、漢名は秋牡丹。秋冥菊とも表記する。キクの類とは無関係で、アネモネの仲間でキンポウゲ科の多年草である。 まっ白な僧衣の干され貴船菊 萩原起代子 今の時期、鎌倉の寺をめぐると庭で秋明菊をよく見かける。極楽寺、長谷寺、光則寺といういつ…

団栗

どんぐりは、ブナ科コナラ属落葉高木のクヌギの実のことだが、樫の実なども入れるのが普通。子供から大人までみんなが知っている童謡「どんぐりころころ」は、大正10年に作られた。作詞・青木在義、作曲・梁田 貞である。 団栗や倶利伽羅峠ころげつつ 松根…

高来神社

たかくじんじゃは、は神奈川県大磯町高麗(こま)にある神社。江戸時代までは高麗寺に属し、明治元年の神仏分離によって高麗寺は廃寺、高麗神社となり、明治30年に高来神社と改称。垂仁天皇の時代の創建と伝える。大磯町高麗は、江戸時代から明治にかけて…

松茸

キシメジ科の茸。主にアカマツの林に生える。特産地は、広島、岡山、京都など。日本のほか朝鮮半島、沿海州、サハリンなどにも分布。 尼が得し秋の松茸窯戸(くど)のべにさむしろ 敷きて干しにけるかも 尾山篤二郎 屈む背に露ひややかに降りにけり匂ふ松茸…

蜜柑

むかし、食用の柑橘類は、橘、その実は「香(かぐ)の菓(このみ)」と言った。蜜柑の文字は室町時代の文献に初めて現れる。江戸時代から庶民の口に入るようになった。果皮は薬用・香料になる。 我友は蜜柑むきつつしみじみとはや抱きねと いひにけらずや 斉…

酢橘

すだちは、徳島県特産の小柑橘。かおりが高く土瓶蒸などの料理に使われる。 うらぶれて土佐三界に日を経れば酢橘の香にも 涙さそはる 吉井 勇 鮭とばに酢橘を搾る昼の酒 「晩春」とふ古き映画を見つつ酌む芋焼酎は妻の買ひ置き

稲田

稲の起源は、インドから東南アジアの熱帯地方ではないか、と思われる。紀元前数千年には、すでにインドや中国で栽培されていた。栽培用の稲には、アジアイネとアフリカイネとあるが、後者は地域がごく限られるため、イネといえば通常、前者を指す。日本へは…

鎌倉湖のあたり

鎌倉今泉にある散在ガ池(通称・鎌倉湖)のあたりを歩く。ここもわが定番の散策ルート。山の農道の傍らに背の低い蜜柑の木が一本あって、実がいくつも熟れていた。称名寺の庭には、かりんの青い実が葉の散った木についていた。瀧の下り口には茶の花が咲き残っ…

かりん

バラ科の落葉高木。原産は中国。古く日本へ伝来したらしいがはっきりした年代は不明。花が咲くのは3月から5月頃。熟した果実はトリテルペン化合物による芳香を発する。10月、11月に収穫。実には果糖、ビタミンC、リンゴ酸、クエン酸、タンニン、アミグダリン…

秋鯖を釣る

この時期、江ノ島の浦磯では、鯖がよく釣れる。ただし、まだ大きくはない。生の鯖は腐りやすい。はらわたを抜いた鯖を子供たちに分け与えていたが、家に帰ってすぐにお母さんに料理してもらいなさい、と注意していた。 以前に、三浦市松輪の松輪サバについて…

ボラ科の魚。成長するにつれ名前が変わる。オボコ → イナ → ボラ → トド など。稚魚は淡水域あるいは汽水域で成長し、秋に海に下る。水面上によく跳ねる。冬に食べると美味。卵巣を塩漬けにしてからすみを作る。 渚辺を歩みてくればまのあたり鯔の跳ねゐる …

魚の直売

近年整備された片瀬漁港には、それほど多くの漁船は係留されていない。水揚げされた釣果は、片瀬漁港で直に売るようにもなっている。「直売所」の幟がはためいているので分かる。覗いてみたが、スーパーで買う値段と大差ないように思えた。新鮮さを買うのだ…

サギ科の鳥の総称。青鷺、五位鷺、白鷺など、日本には16種が棲むという。全身が白色の白鷺には、大鷺(全長89センチ)、中鷺(全長68センチ)、小鷺(全長60センチ)などが本州以南の水辺に生息する。 水の辺に歩みを運ぶ白鷺の翼がうつくし 水に映り…

蜘蛛

今の季節、林に入ると巣をかけた女郎蜘蛛をよく見かける。以下のように古くから歌に詠まれている。「ささがに」とも言う。また、「ささがねの」「ささがにの」が「くも」「いと」「いづく」「いかに」「いのち」などにかかる枕詞として使われる場合もある。…

赤い羽根

十月に入って見るテレビ画面で目立ったのが、NHKアナウンサーのスーツの襟につけられた赤い羽根だった。公園やコンコースのそこここで共同募金の呼びかけが始まった。 昭和二十一年(1947)に社会福祉運動として始まったので、もう半世紀を越えたこと…

すすき

イネ科の多年草。漢字で薄あるいは芒と書く。夏から秋にかけて茎の先に黄褐色、紫褐色の20、30センチの花穂を出し、のちに毛羽立って白くなる。これが尾花。 世の交はり遠くなりゆくはてにして今朝の尾花の まそほに向ふ 土屋文明 風媒はたのしき秘密、…

アザミはキク科の多年草。多くは秋に開花するが、種類により開花時期が少しずつ異なる。野薊、鬼薊、フジアザミ、ハマアザミ、モリアザミなど日本産は80種もある。根は食用になるというが、一度も食べたことはない。 ここを過ぎれば人間の街、野あざみのう…

杜鵑草

ホトトギスはユリ科の多年草。この季節になると毎年とり上げている。本州から九州の山中に生えるが、庭に植えられているのをよく見かける。花に浮く斑の模様が、鳥のホトトギスの胸毛の斑点に似ているところから命名された。以下の安永蕗子の歌にあるとおり…

鷺草

湿原にはえるラン科の多年草。夏、茎の先に白鷺が羽根をひろげたように花が咲く。 志くずれゆくごと見られつつひと庭しろき 鷺草も散る 馬場あき子 湿り田に生ひ立ちて咲く鷺草の飛翔のかたち 幾日保たん 武田弘之 [注]ここ2,3日は、富山のホテルから入…

横浜開港百五十年

大赤字のプロジェクトに終ってしまった。3箇所の会場の入場者数がもくろみ500万人を大きく割り込んで100万人程度になった。内容の割りに入場料が高すぎた。こんなに杜撰なコスト見積は前代未聞だ。私自身、会場の入口まで行って、入場料の高さに止め…

木犀

モクセイ科の常緑小高木。雌雄異株。中国原産だが、日本にあるものは雄株のみ。よって実を結ばない。黄色の花のキンモクセイ、白色の花のギンモクセイがある。 木犀の香に昇天の鷹ひとつ 飯田龍太 行きすぎて金木犀は風の花 木村敏男 山麓の百年の家銀木犀 …

たたみ鰯

カタクチイワシの稚魚を生のまま抄いて薄く平らに伸ばし板状にして天日で干した食品。かるく炙って食べる。大根おろしを加え醤油をたらして、熱いご飯と食べると、いくらでもお替りしたくなる。東海地方の特産というが、鎌倉腰越二丁目のこゆるぎの浜では、…

紫式部

クマツヅラ科の落葉低木。十、十一月に紫色の珠実をびっしりつける。白い珠実の白式部もある。 水漬くまで紫式部の珠垂れて野ねこ遊べる しばらくの間は 福田たの子 家々の門に照る実も似つかはし紫式部よ 洛東の道 小市巳世司 雨気づく細き坂をば鉢物の紫式…

海蔵寺、宝戒寺の萩

鎌倉の萩は、はや盛りを過ぎた。海蔵寺は山門前の石段両側に枝垂れる萩が有名。萩の寺としても知られる宝戒寺では、白萩が大勢を占める。 わが背丈越えて咲きたる紫苑かな 咲けば鬱枯るれば屈の萩の花 寺めぐる谷戸の高みに鵙の声 朝日影川面に垂るる花芒 勤…