天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ポアンカレ予想

数学や物理の難問・大問題が解かれた経緯を読むと血湧き肉踊る思いがする。「フェルマーの最終定理」の場合がそうであった。今度、『ポアンカレ予想を解いた数学者』ドナル・オシア著、糸川洋訳(日経BP社)を、インターネットで取り寄せた。先日、NHK…

短歌と創作

「短歌研究」十一月号に、〈短歌で許される「創作」の範囲とは〉 が特集されている。短歌に関っていない人から見ると、変なことを議論しているな、と思うのではないか?短歌といえども文芸なのだから創作は当然でしょう、そもそも和歌が盛んになった平安時代…

ウ科の鳥の総称。世界的に見られ約30種。日本には、ウミウ、カワウ、ヒメウ、チシマウガラスの4種が生息。鵜飼に使うのはウミウである。私が実際に見て知っている神奈川県下のウミウのコロニーは、猿島と城ヶ島の二箇所である。 俳句では、夏の季語。万葉…

山茶花

ツバキ科の常緑小高木。日本の特産で、四国、九州、沖縄に自生種あり。だが万葉集には詠まれていない。椿は、九首詠まれているのに。 あしひきのやつを八峰の椿つらつらに見とも 飽かめや植ゑてける君 万葉集・大伴家持 山茶花や金箔しづむ輪島塗 水原秋櫻子…

猿島

この島の名の由来は、日蓮が房州から鎌倉へ渡る途中嵐に遭い、進む方向が分からなくなった時、白猿が舟の舳先にたち、この島へ案内したという伝説による。ちなみに日蓮が遭難しかけた時、白猿が現れて助けた話は他にもある。 猿島には縄文時代から人の痕跡が…

前衛短歌と「われ」

佐佐木幸綱著『万葉集の〈われ〉』を読み終えた。なにせ電車に乗っている時だけ読むので時間がかかる。雑誌で連載していた時期に一度読んでいたのだが、本になってまとめて読むと全体がよく理解できる。「終わりに」の章で、前衛短歌と〈われ〉について、寺…

病膏肓に入る

とまではいかないが、作詞家・阿久悠の本を三冊購入した上に、定価8400円のCD版「人間万葉集」を買った。ここには、1965年から2005年までの代表詞108曲分が入っている。CD5枚と解説書のセットであるが、解説書の見開きに次の阿久の詞が…

沢蟹

エビ目カニ亜目の甲殻類の総称。世界に約5千種、日本には約千種。ほとんどが海産で、純淡水産はサワガニのみという。蟹は古事記の世界から登場する。サワガニは日本固有種で、本州以南から屋久島までに分布する。俳句では夏の季語。 原爆許すまじ蟹かつかつ…

馬酔木

つつじ科。動物の呼吸中枢を麻痺させる有毒成分を持つ。わりと身近に見かけるように思うのだが、絶滅危惧種になっているらしい。 磯のうへに生ふる馬酔木を手折らめど見すべき 君がありと言はなくに 万葉集・大来皇女 馬酔木なす栄えし君が掘りし井の石井の…

ある日江ノ島

朝9時過ぎからMLB放映を見た。レッドソックスの松坂にラストチャンスが残された。今までことごとく負けているので、とてつもないプレッシャがかかってくるはず。ワールドシリーズ進出のためのインディアンズとの最終戦でも負けたら、アメリカでは再起で…

スズメ目モズ科の鳥。昆虫や蛙を餌にする。日本には、夏鳥のアカモズ、チゴモズ、冬鳥のオオモズ、オオカラモズなどがいる。他の鳥や動物の鳴き声をよくまねるというが、未だ聞いたことが無い。万葉集には、以下の二首が出ている。大好きな鵙の俳句も二句あ…

やぐら

漢字では、矢倉・谷倉・矢蔵・屋蔵・窟などを当てる。中世の横穴式墳墓のことである。鎌倉を中心に、13世紀末から14世紀にかけて造られた。山腹の崖に掘られている。これは鎌倉の地形に深く関係している。三方が山に一方が海に面している狭い平地では、…

短歌と比喩

洋の東西を問わず、時代の古今を問わず、詩の本質は比喩にあるといってよい。佐佐木幸綱著『万葉集の〈われ〉』角川選書を読んでいるが、あらためて短歌の本質も比喩なのだ、ということを思った。当たり前のことで、何をいまさら、となるのだが、実際に短歌…

ある日の小田原城

城郭の内にある報徳二宮神社では、生れたばかりの子供を籠に入れて御祓いにくる夫婦や祖父母から孫までが並んで写真に納まる三世代、神殿で祝言を挙げる一族など秋らしい光景が見られた。城壁や道路のところどころで工事が続いていた。 石垣の反り美しき秋薊…

秋の蝶

蝶は古来、ひらがなでは「てふ」と書いた。万葉集には、二箇所、歌の序文に出てくる。 「梅花の歌三十二首併せて序」に「・・・庭には新蝶舞ひ、鳥はうすものにこめられて林に迷ふ。・・・」とあり、また「二月廿九日、大伴宿禰家持」と題する序に「・・・戯…

言葉の位置と効果

短歌人・東京歌会に出席した。いつものように小池光の含蓄あるコメントを紹介しておこう。今回は、「言葉の位置と効果」という観点からまとめる。 膠原病に苦しみし夫が使ひたる十六色のああ サクラクレパス *当然「ああ」が気になる。無くても十分心に 沁…

コーラス

横浜桜木町にある県立音楽堂に、地域のコーラスグループが開催したチャリティコーラスを聴きにいった。聴衆もコーラスメンバーもほとんどが老人・熟女。しかも女性が圧倒的に多い。どうも居心地悪い。おまけに最初にラテン語のミサ曲コーラスを五十分。他の…

うつぼかずら

代表的な食虫植物で、捕虫嚢の形が、矢を入れる靱(うつぼ)に似ているところから命名された。この嚢の下部に水液がたまり、虫が入ってくると内面の腺から消化酵素を分泌して溶解し、養分とする。雌雄異株。観賞用に園芸品種が多く作られている。 人の手に集…

季語について

「俳壇」十月号の特集「俳句のゆくえ」で、高野ムツオが「季語覚え書」と題して、季語に関する考え方をまとめている。よく納得できるので、次に要約しておく。 *俳諧の座が、当座の感興の共有の必要性から 季題を求め、季題が、その時節の景物を示す 言葉を…

朝顔

ヒルガオ科のつる性一年草。熱帯アジアが原産地。奈良時代に遣唐使が唐から持ち帰った。種子を牽牛子と称し、下剤に利用されていた。江戸時代以降に鑑賞用としての栽培が盛んになった。変化が多様であるため、遺伝の研究材料ともなる。以前にも話したと思う…

金木犀

大磯には庭に金木犀を植えている家が多い。大磯駅から高麗神社まで、旧東海道沿いに歩いている時に気付いた。それで思い出したのだが、先日の短歌人・横浜歌会で岡田 幸さんが出した次の詠草。 秋の陽の付録のやうなものですね金木犀のこぼす かをりは 岡田 …

農家の庭に柿が熟れはじめた。朝の食卓にも 野菜と共に柿の切り実がならぶ。わが国では、 有史以前から栽培されていたらしいが、万葉集 には詠われていない。野生の柿は揚子江流域に 生育したという。 里古りて柿の木持たぬ家もなし 芭蕉 柿ぬしや梢はちかき…

ダリア

晩夏に咲くキク科の多年草。メキシコ原産。わが国では「てんじくぼたん」という名もある。今や世界中で3万種以上が栽培されているという。 君と見て一期の別れする時もダリヤは紅し ダリヤは紅し 北原白秋 ダリヤの葉いちめんに黒くこげただれ むごたらしき…

葉山御用邸

葉山御用邸は、明治27年からあったらしいが、現状の家屋は昭和56年に建てられた。1926年12月25日、この地で大正天皇が崩御され、皇太子裕仁親王が践祚した。昭和時代の始まりである。葉山御用邸は、2月〜3月の間に主に利用されるというが、十月六日は…

New Taste(2)

阿久 悠は歌謡曲の作詞において、いろいろな様式を開拓し、多数のヒット曲を生み出した。たびたび日本作詞大賞にかがやいた。New Taste が高く評価されたのだ。定型の短歌の世界で、New Taste を生んだ技法を、以下に例示して見よう。 ■枕詞、序詞 ささなみ…

New Taste(1)

有楽町駅近くで開催された東京工科大学・産業技術総合研究所リサーチ・フォーラムに出席した。今回、刺激を受けたのは、五十嵐健夫准教授の特別講演「インタラクティブコンピューティングの世界」。簡単にいえば、幼児でもアニメーションを作れるソフトウェ…

古句の解釈

名古屋への日帰り出張の車内で、だいぶ前に読みかけて放っておいた柴田宵曲『古句を観る』を読んだ。夏の項の途中だったが、そこを飛ばして秋の項から続けた。以前にもふれたと思うが、俳諧の鑑賞には、独特の言葉の使い方・省略の方法さらに漢詩文の素養が…

大山詣で

大山山頂の阿夫利神社に人々が講を作って集団で参詣することを大山詣であるいは大山参りという。江戸中期に最高潮に達した。修験道の大山寺が中心であった。徳川家康の「寺院法度」の発布により修験者が山をおり、麓に大山講の御師となって沢山の宿坊を作っ…

赤い羽根

「赤い羽根」に象徴される共同募金は、福祉事業、厚生保護事業の資金を民間機関の手で募集する仕組みで、1910年代にアメリカで広まった。日本では、1947年から共同募金会が実施している。これだけの歴史があるので、俳句では秋の季語になった。毎年…

杜鵑草(ほととぎす)

30日は朝から雨になった。家の近くで杜鵑草が咲いているのを見かけたが、貧弱なので建長寺に行くことにした。というのは、随分以前のことになるが、建長寺・正統院門前の路傍で見た杜鵑草の花が大きくて、ほととぎすと呼ばれる由縁の紋様がはっきりでてい…