天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2018-01-01から1年間の記事一覧

冬を詠む(5/9)

あたらしきよろこびのごと光さし根方あかるし冬の林は 上田三四二 正確に何かを掴みひきしまる拳殖(こぶしふ)えゆき冬に入る視野 岡井 隆 冬のゆくゆふべ茜の雲吹きあげ街歩む人に悲しみもなし 鹿児島寿蔵 木鋏を鳴らして冬の枝を断つ芽ぐめる枝も容赦なく断…

冬を詠む(4/9)

喨々(りやうりやう)とひとすぢの水吹きいでたり冬の日比谷の鶴(つる)のくちばし 北原白秋 街をゆき子供の傍を通る時蜜柑の香せり冬がまた来る 木下利玄 ひめうづの葉のあをあをと茂るとき荒れたる庭に冬は来むかふ 柴生田稔 嶺の雪の林のうへにかがやきてこ…

冬を詠む(3/9)

おき明かす秋のわかれの袖のつゆ霜こそむすべ冬や来ぬらむ 新古今集・藤原俊成 冬深くなりにけらしな難波江の青葉まじらぬ蘆のむらだち 新古今集・藤原成通 うちはへて冬はさばかりながき夜になほ残りける有明の月 新勅撰集・二条院讃岐 窓の外(と)に白き八…

冬を詠む(2/9)

蘆の葉に隠れて住みし津の国のこやもあらはに冬は来にけり 拾遺集・源重之 冬されば嵐の声も高砂の松につけてぞ聞くべかりける 拾遺集・大中臣能宣 はつ雪はまきの葉白くふりにけりこや小野山の冬のさびしさ 金葉集・源経信 冬くれば谷の小川の音絶て峰の嵐…

冬を詠む(1/9)

冬の語源は、「ひゆ(冷)」。日本では、新暦で12月から翌年2月までの期間を差す。 秋の田のわが刈りばかの過ぎぬれば雁が音聞ゆ冬かたまけて 万葉集・作者未詳 冬過ぎて春来るらし朝日さす春日の山に霞たなびく 万葉集・作者未詳 霜枯れの冬の柳は見る人の…

涙のうた(11/11)

怯懦とも悔いつつ吾の日々あれば或る宵やさし涙ぐむまで 扇畑忠雄 この椅子に涙ぐみつつゐしことも老いてののちにわれは思はな 上田三四二 ほほゑみ多き少女なりしがただ一度かすかなる涙見しことありき 吉田正俊 かかる世に涙を持ちて生れしがわが過失(あや…

涙のうた(10/11)

涙ぐむ母に訣(わか)れの言(こと)述べて出で立つ朝よ青く晴れたる 渡辺直己 幾度か逆襲せる敵をしりぞけて夜が明けゆけば涙流れぬ 渡辺直己 ゆふぐれに何を泣くこどもよ 汝が涙汝を抱ける父に溢れぬ 葛原妙子 塩甕(しほがめ)にいっぱいの塩を充たすとて溢るる…

涙のうた(9/11)

涙、涙、つかれし脳よりまぶたへ、流るるみちのはつきりとみゆ。 土岐善麿 頬(ほ)につたふなみだのごはず一握(いちあく)の砂を示しし人を忘れず 石川啄木 べにばなのすぎなむとして土乾く庭すみにしてわが涙いづ 五味保義 わが心君に近づくこの日まづ悔の涙…

涙のうた(8/11)

袖のうへに人の涙のこぼるるはわがなくよりも悲しかりけり 香川景樹 かの人の目より落ちなばいつはりの涙も我れは嬉しと思はむ 落合直文 野に生ふる、草にも物を、言はせばや。涙もあらむ、歌もあるらむ。 与謝野鉄幹 ふるさとを恋ふるそれよりややあつき涙…

涙のうた(7/11)

夜もすがらちぎりしことを忘れずは恋ひむ涙の色ぞゆかしき 後拾遺集・定子皇后 こぞよりも色こそこけれ萩の花涙の雨のかかる秋には 後拾遺集・麗景殿前女御 くれなゐの濃染(こぞめ)の衣うへに着む恋の涙の色隠るやと 詞花集・藤原顕綱 五月雨の空だに澄める…

涙のうた(6/11)

涙川おなじ身よりは流るれど恋をばけたぬものにぞありける 後拾遺集・和泉式部 涙川そでのゐぜきも朽ちはててよどむかたなき恋もするかな 金葉集・皇后宮右衛門佐 なみだがはその水上をたづぬれば世のうきめより出づるなりけり 詞花集・賢智 涙川たぎつここ…

涙のうた(5/11)

あさみこそ袖はひづらめ涙川身さへ流るときかばたのまむ 古今集。在原業平 つれづれのながめにまさる涙川袖のみぬれて逢ふよしもなし 古今集・藤原敏行 世とともにながれてぞゆく涙川ふゆも氷らぬみなわなりけり 古今集・紀 貫之 なみだがはまくら流るるうき…

涙のうた(4/11)

くれなゐに涙の色のなり行くを幾しほまでと君にとはばや 新古今集・道因 忍ぶるに心のひまはなけれどもなほ漏るものは涙なりけり 新古今集・藤原兼実 わが恋はしる人もなしせく床の涙もらすなつげのをまくら 新古今集・式子内親王 恋ひわぶる涙や空にくもる…

涙のうた(3/11)

忍びねの袂は色に出でにけりこころにも似ぬわが涙かな 千載集・皇嘉門院別当 ころも手におつる涙のいろなくば露とも人にいはましものを 千載集・二条院内侍参河 つつめども枕は恋を知りぬらむ涙かからぬ夜半しなければ 千載集・源 雅通 年ふれどあはれにたえ…

涙のうた(2/11)

つつめども袖にたまらぬしら玉は人をみぬめの涙なりけり 古今集・安倍清行 おろかなる涙ぞ袖に玉はなす我はせきあへずたきつ瀬なれば 古今集・小野小町 おとなしの河とぞ遂に流れ出づるいはで物思ふ人のなみだは 拾遺集・清原元輔 人知れず落つる涙のつもり…

涙のうた(1/11)

「なみだ」の語源は、「なきみずだり(泣水垂)」の略「なみだ(泣水垂)」。古くは清音だったが、奈良時代には濁音化していたという。玉や露にたとえられ、古来和歌の主要な題のひとつであった。 朝日照る佐(さ)太(だ)の岡辺(をかべ)に群れ居つつわが泣く涙…

忘れる・忘却の歌(6/6)

いつとなく親しむとなく寄るとなく馴れし情も忘られなくに 北原白秋 とこしへに、泣きてわかるる雨の日のいとけなき子を忘れたまふな 平野万里 忘却の彼方より湧きをりをりに悲し彼ひとり沖縄に死す 山本友一 物忘れしたるがごとくひろびろとせる思ひもて昼…

忘れる・忘却の歌(5/6)

哀れさらば忘れて見ばやあやにくに我が慕へばぞ人は思はぬ 風雅集・進子内親王 忘るなよさすが契りをかはしまに隔つる年の波は越ゆとも 新続古今集・尭孝 かへらむと我がせし時にわが紐を結びし姿いつかわすれむ 田安宗武 鶯の鳴く一声にわすれけりいづこに…

忘れる・忘却の歌(4/6)

身にそへるその面影も消えななむ夢なりけりと忘るばかりに 新古今集・藤原良経 わすれじの行末まではかたければ今日をかぎりの命ともがな 新古今集・儀同三司母 わすれじの言の葉いかになりにけむ頼めしくれは秋風ぞ吹く 新古今集・宣秋門院丹後 いまぞ知る…

忘れる・忘却の歌(3/6)

忘るるは憂世のつねと思ふにも身をやるかたのなきぞ侘しき 千載集・紫式部 思ふをもわするる人はさもあらばあれ憂きを忍ばぬ心ともがな 千載集・源 有房 嬉しくば忘るることもありなましつらきぞ長きかたみなりける 新古今集・清原深養父 忘れじと言ひしばか…

忘れる・忘却の歌(2/6)

忘るとは恨みざらなむはしたかのとかへる山の椎はもみぢず 後撰集・読人しらず 皆人の老をわするといふ菊は百年をやる花にぞありける 古今和歌六帖・読人しらず 人よりはわれこそさきに忘れなめつれなきをしも何か頼まん 古今和歌六帖・読人しらず 忘るなよ…

忘れる・忘却の歌(1/6)

物事の記憶がなくなる症状である。「わすれる」の語源は、「う(失)」の音転から。「う・わ(失)―わすーわするーわすれる」と発展した。 人はよし思ひやむとも玉鬘影に見えつつ忘らえぬかも 万葉集・倭大后 庭に立つ麻手刈(あさでか)り干し布さらす東女(あ…

西行と雲と仏教と

西行の雲の歌については、過去のこのブログ(2016年9月5日、6日)で取り上げている。ここでは、さらに詳細を調べてみたい。 出家した西行は、仏教に何を期待し、何を学んだのであろうか。和歌における精進業績は、よく語られているが、仏道での足跡はほとん…

紅葉狩りー源氏山公園

鎌倉駅から寿福寺に向かい、墓地の裏山の道をたどって源氏山公園に入った。鎌倉の山々が黄や赤に染まるには、まだ少し時間を要するようだが、所々に見事な紅葉の木々が見られた。 頼朝像の前の桜並木はすでに落葉してしまっていてがっかりした。日野俊基の墓…

山田洋・遺句集『一草』

「古志」同人の山田洋さんの遺句集『一草』(花神社)が、奥様から送られてきた。山田洋さんとは全く面識もないので驚いた。この遺句集の行き届いた作られ方と奥様のあとがきに感動した。 奥様の書かれた在りし日の山田洋さんの俳句への取り組みに、我が身を…

神を詠む(9/9)

神杉の直ぐなる幹に晩秋の海より反る光があそぶ 八重嶋勲 せせらぎは水の合唱か森林をいま神渡り木も紅葉せり 阿部洋子 ちちははの声を聴かんと神(み)渡(わた)りの亀裂するどき氷湖に来たり 田村三好 遣りがたきかなしみ持たば聞きに来よ日向の国の大鳴(おほ…

神を詠む(8/9)

神の世の遠き言葉聞ゆると思はるるまで男鹿の落日 阿部正路 神持たぬわれは歩みゆく吾が上に日輪がある雲雀のこゑがある 小暮政次 青葉濃き五月みちのく若やかに能をみている神涼しけれ 馬場あき子 霧晴れて頂あをし神様はそんなに高くおいででしたか 大寺瀧…

神を詠む(7/9)

われの神なるやもしれぬ冬の鳩を撃ちて硝煙あげつつ帰る 寺山修司 捨つるべき捨てよといふは神のこゑ生命(いのち)は二つあるものならず 木俣 修 わが神(しん)の嘆きのすゑの薄明り一(いち)瀧(ろう)落ちて羊歯を濡せり 小中英之 わがごときさへ神の意を忖度す…

神を詠む(6/9)

いけにえに少女をもとめし古代より神は刃ものの冷たさを持つ 香川 進 酔へば喧嘩作品のほか何もなし幼き妻は神のごとしも 大野誠夫 娶りはとほき奇蹟なれども帆柱を神として若き漁夫ねむるなり 塚本邦雄 神田の一隅にゐて神をおもふ軽くはなやぎて世紀終らむ…

神を詠む(5/9)

未だ知らぬ野みち山みちいづれにか神のめすらむ方に行かばや 片山広子 あをぞら の ひる の うつつ に あらはれて われ に こたへよ いにしへの かみ 会津八一 われはここに神はいづこにましますや星のまたたき寂しき夜なり 柳原白蓮 さびしあな神は虚空の右…