天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

横須賀 −日本海海戦百周年ー

薔薇にほふ潜水艦の旭日旗 横須賀や薔薇のむかうに自衛艦 横須賀や薔薇の香かげる鉤つ鼻 ひるがへるZ旗まぶし五月尽 皇国の興廃かけし一戦の跡なつかしき 「三笠」甲板 まぶしみて風のマストにひるがへるZ旗見上ぐ「三笠」甲板 荒海にサバニを漕ぎて報せけ…

短歌人・横浜歌会

五月二十八日、横浜女性フォーラム。題詠(餃子)と自由詠各一首。 無記名。詠草十首。 出席者=酒井英子、金沢早苗、川井怜子、秋田興一郎。詠草のみ=若林のぶ、青柳令子 A 題詠「ぎょうざ」 夜更けひらひらファクスの吐くしろき紙ふかひれ餃子のレシピ …

清洲城

いしぶみの拓本の後つややけく青葉にかげる清洲古城趾 天守閣仰ぎて朱き橋わたる朝を目覚めし白き睡蓮 燃え落つる城想へるや庭にたち憂ひ顔なる濃姫の像 信長といへば「敦盛」扇もち片足あぐるこの展示室 鼓打つ濃姫の顔青ざめて父の決意を「敦盛」に知る 敦…

浜茄子と隼

JR東海道線の横浜駅で早朝、信号故障が発生し、いつもの通勤で乗る藤沢駅に行ったところ復旧の目処がたたないとのことなので、休暇にすることにした。メールで会社へその旨通知し、さてどう時間を使おうか迷った末、江ノ島に行く。ヨットハーバー、灯台の…

短歌人東京歌会

今回の場所は上野駅前にある東京文化会館、午後一時からなのでそれまでの数時間を上野公園内で過ごす。 ベルリンの至宝展 大理石クレオパトラのたばねたる髪に残れるはつかむらさき 上唇すこし薄きが気にかかるクレオパトラ七世頭部 皇帝の忘れ得ざりし青年…

日露戦争百年展

勤め先は九段下にあるので、昼休みには靖国神社境内で過ごすことが多い。 今、日露戦争百年展が遊就館で開催されている。入場料は三百円。 底なしの闇を湛へて見つめゐる黒き瞳のをさな児の笑み 戦役のすぐれものなる征露丸いま正露丸わが常備薬 軍隊手牒、…

鎌倉文学館 ―夏目漱石展―

極楽寺 忍性の墓を守りて寺を継ぐ地に散り敷ける青桐の花 成就院 紫陽花の雨にけぶるや由比ヶ浜 権五郎神社 神主の狩衣が入る青葉闇 長谷寺 法要の木魚眠たき五月かな 光則寺 長生きの孔雀啼くなり青葉闇 リス啼くや青葉若葉の谷戸の山 土竉へ青葉の磴をのぼ…

浦賀

雛罌粟や実技試験の視野に入る はつ夏の風は潮の香燈明堂 裏山に藤の花垂る燈明堂 釣り人の陸軍桟橋初夏の風 黒船の浮かびし沖にタンカーの喫水深く白波たてり トベラ咲く垣根の奥にしづもれる横須賀刑務所ならびに官舎 防衛庁第五研究部の横に久里浜少年院…

塚本邦雄の新歌枕東西百景

昭和53年に毎日新聞社から発行された塚本邦雄の 『新歌枕東西百景』を、仕事で姫路に日帰り出張する 飛行機および新幹線車内で読みきってしまった。それほど面白い。 地図から探した日本の美しいあるいは大変魅力的ななつかしい地名を 短歌に読み込んでい…

ルーブル美術館展

恍惚の身を横たふる裸婦なればベッド離るる少年天使 少女らは〈泉〉の裸婦を正視せず顔あからめて母の手を引く くつろぎて浴女の群るるトルコ風呂古典主義なる白き豊満 女ゆゑ心ゆるせし浴槽の床にころがる血塗れのナイフ アトピーの治療に入れり浴槽の床に…

工作船展示館

女子高生腿もあらはに群立ちて躑躅花咲く汽車道をゆく 工作船展示館には熟年の人ばかりなる五月連休 工作船展示館に見る赤錆の船首船尾の暗き弾痕 荒波の海に撃ちたる銃弾は船首船尾に的中したり 血湧き肉踊る映像わが方の命中精度高き銃撃 銃撃に火の手あが…

富士川

角川文庫版(佐藤謙三校注)「平家物語」を拾い読みしながら、JR東海道線を熱海で乗り継いで富士川に向かう。 ”さる程に、兵衛佐頼朝、鎌倉を立って、足柄の山うち越え、黄瀬川にこそ着き給へ。甲斐・信濃の源氏ども、馳せ来て一つになる。駿河国浮島が原…

大雄山

大杉の根の底知れず著莪の花 大杉の梢は暗し著莪の花 藤棚やペットボトルの水を飲む 大寺の赤き石楠花大雄山 鐘楼に龍が巻き付く若葉風 銅鑼打つや赤き石楠花目に滲むる 銅鑼打つや石楠花赤き和合下駄 参道の山門くぐる著莪の花 銅鑼打ちて法螺貝吹けり初夏…

湘南平

未熟なる技量のままにまかせたる電車のダイヤ一瞬の惨 胎内の3.5センチを育みて食欲出づと嫁のメールは 丹沢も箱根の山もかすみたる憲法記念日黄砂ふるらし 朝寝して髭剃りのこす藤の花 懸崖の木にしたたるや藤の花 谷間にむらさき匂ふ桐の花 大磯に木曽…

九十九谷

保田雨晴れて鋸山に靄たつと渚かすめて飛ぶ朝つばめ 鹿能山東山魁夷描きし「残照」の九十九谷は朝靄の中 十二時のとき刻を告ぐるや神野寺の鐘の音わたる新緑の森 神野寺の片への藪に傾けり高野素十の親子の墓は ここにもやヤマトタケルを祀りたる白鳥神社ゴ…

御宿

笠森観音 懸崖の御堂に立たす金色の闇をまとへる笠森観音 懸崖の御堂高きに妻ひとりのぼりてゆけり御仏に会ふ 本数の少なきバスに乗りたれば帰りに会へる運転手同じい 御宿 亭々とホテル、マンション建ちたれどその人影を見ざる御宿 立ち寄りし御宿の夜の砂…