天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

菊の花

「古志」十一月号、長谷川櫂主宰の白桃という十五句の内に、次のような作品がある。 桐一葉又一葉又一葉哉 これは、阿波野青畝の 山又山山桜又山桜 と同じ作法、というか応用である。よく解釈できない作品に、 露の上に露を結べるごとくなり がある。何がー…

夢の跡

横浜ドリームランドは、戸塚区の丘陵地を切り開き一九六四年に華々しく開業した。当時の日本を代表する一大遊園地であった。ドリームランドから大船駅までをモノレールで繋いだが、わずか一年で設計ミスから走行不可となり、放置された。ドリームランド自体…

紫紺野牡丹

今日は夕方六時から、短歌人横浜歌会。昼間は、雨が降りそうなので、いつものコースを歩いた。 つまり極楽寺から裏山に登り、長谷大仏、光則寺、長谷寺と回る。 おしろいや風化に白き石地蔵 舞ふ鳶を下に見てゆく谷戸の秋 梢よりハングライダー銀杏散る 大仏…

今日をにれがむ

日帰り出張で姫路までを往復し、深夜に帰宅した。新幹線車中ではずっと「短歌人」十一月号を読んだ。特集・猫と短歌はなかなか面白い。いつもながら、小池光の文章には感心する。ユーモアがあり切れがよいのだ。 明日になってしまった、もう寝よう。 壁の中…

わかる?

「短歌研究」十一月号に目を通したのだが、なんだか理解できない歌に出会った。例えば、小池光は新作の諧謔歌として、二首出しているが、その片方。 あけび蔓編みたる籠に投げ入れし赤玉ひとつ口より吐きて 口に含んでいた赤玉を吐き出して、あけび蔓で編ん…

横須賀線

最近、横須賀線で信号や車両の故障・不具合が多い。今朝もおかしくなって、東京行きの湘南ライナーが品川までとなり、通勤の足が大幅に乱された。おまけに山手線では早朝の投身自殺なのか、人身事故とのことでダイヤが滅茶苦茶になっていた。帰りには、列車…

予科練の歌

「靖国の時計塔」は、日本遺族会婦人部が奉納したものである。国は昭和三十八年四月一日「戦没者等の妻に対する特別給付金支給法」を制定し、戦没者の妻の特別な立場を認め、慰藉の方途を講じたが、この感激を記念したという。 小泉首相が通常服で秋例大祭初…

きりぎりすが炬燵に?

俳句作りの要諦として、ぎりぎりまで省略して後は読者の読みを信頼すべし、ということが言われる。芭蕉の「かな」句について例をみてみよう。 きりぎりすわすれ音(ね)になくこたつ哉(かな) 何の木の花とはしらず匂(にほひ)哉 梅こひて卯花(うのはな)拝むなみ…

牛膝(いのこづち)

今日の「産経歌壇」小島ゆかり選に次の一首が採られていた。 酸漿(ほほづき)と秋海棠(しうかいだう)を 避けて刈る日向薬師の草刈の鎌 大磯の裏山を歩く。湘南平から高麗山(こまやま)をたどって旧東海道の大磯宿の通りを駅まで戻るコースである。秋薊、秋明菊…

相模国分寺跡

途中でほったらかしにしていた大悟法利雄著『鑑賞・若山牧水の秀歌』を枕元において、眠りに入る前に読んでいるが、大変面白い指摘があった。短歌では五七五を上句、七七を下句という分けかたをしているが、音律の上からいえば、五七、五七と繰り返して結句…

もてなしの心

先の幻影まではいかないが、擬人法の例もある。 雲雀より空にやすらふ峠哉 やすらっているのはもちろん作者・芭蕉なのだが、峠がやすらっているように詠んでいる。 蕎麦はまだ花でもてなす山路かな 蕎麦の実はまだとれないが、花が咲いている山路に旅人は心…

赤シャツ

夏目漱石の『坊ちゃん』には、赤シャツとかマドンナとか面白い綽名の教師がでてくる。いつも赤い頭巾を被っている女の子がいると、本名の代わりに「赤頭巾ちゃん」という通り名、あだ名がつけられる。あるいは、逆に本名がわからない場合に、身に着けている…

悪夢

ひどい夢を見た。すばらしい歌ができたのに、いざ披露する段になって思い出せず苦しんでいるのだ。苦しんだあげく目がさめてできたのが次の歌。 蹴飛ばせる石あたりたるお大師の銅像黒き秋ふかみかもさて昨日の続き。 田一枚植て立去る柳かな 結句の「かな」…

切れ、省略、幻影

会社の昼休み、雨が降って散歩にでかけられない時は、『芭蕉全句』を読んでいる。今日気がついたのだが、切れ字「かな」の句がずいぶん多く、「けり」の句は少ない。それで「かな」の句だけに目をとおしたら、俳句の秘密がわかるような気がしてきた。しばら…

七五三

今日の「産経俳壇」・小沢實選に次の句が入っていた。 黒猫が毛玉吐き出す残暑かな昨夜来の雨が止まないが、明日の湘南ライナーの切符を買いに出たついでに、相模線の宮山駅まで足を伸ばし、寒川神社に行く。十月の手水舎奉掲として、明治天皇の次の御製が書…

一夜城址

昨夜は十一時頃、先日買った浪曲河内音頭「東西男くらべ」「雷電と八角」を聞いた。歌い手は京山幸枝若。「花は祇園に清水に 嵯峨やお室や九重の・・・」「やぐら太鼓は何所で鳴る 五丈三尺空で鳴る・・・」全部七五調である。梁塵秘抄に「・・わが身さへこ…

上村松園

やっと山種美術館にゆくことができた。今は上村松園特集「松園と美しき女性たち」を開催している。松園は、明治八年京都四條の葉茶屋に生まれた。日本美人画で一世を風靡し、昭和二十三年に女性初の文化勲章を受けた。「・・・女性は美しければよい、という…

秋灯

歌謡に気を取られてとうとう河内音頭の浪曲まで買ってしまった。どだい、中世の歌謡には譜面がないのでメロディがわからない。今様という流行歌でさえどのように歌われたのかわからない。短歌に応用するには、リズム、韻律か言葉遣いかしかないが、既に北原…

明月記

藤原定家の日記『明月記』については、詩人の堀田善衛による『定家明月記私抄』を以前に読んだが、あまり印象に残らなかった。現在、「短歌研究」で高野公彦が歌人の立場から現代語に解釈しているが、これがなかなかに面白い。例えば、先日触れた屏風絵と画…

海棠

連休最終日も雨もよいになった。鎌倉の大町を歩く。大巧寺のむらさきしきぶ、今日始めて気づいて立ち寄った蛇苦止(じゃくし)堂、妙本寺の海棠、ぼたもち寺では捕獲されたアライグマ、八雲神社の栗鼠、安養院の宝篋印塔、安国論寺ではほととぎす、本覚寺の散…

サーカスの美少女

連休二日目だが、雨模様であり、どこへも行く気がしない。買い物に付き合っただけで、ごろ寝して読みかけの雑誌を読んだが、久しぶりにめずらしい俳句に出会った。『俳壇』十月号に掲載された、松倉ゆずるという人の特別作品百句「一馬力」である。現代に似…

土牢

三連休の初日を、鎌倉宮と覚園寺で過ごす。鎌倉宮入り口由緒書の掲示板に次の三首を見る。愚なる身も古に生れなば君が頼みとならましものを 水戸斉昭 さしのぼる鎌倉山の秋の月ひかりさやかに 今照しけり 三條実美 今日ここに忍び申さんこともなし落る涙を …

鳥羽一郎

たまたま再放送の「BS日本の歌」を聞いているが、今歌っている鳥羽一郎の「兄弟船」は五七調、最新曲の「銭五の海」は七五調、というように、流行歌はいずれも七音、五音の組み合わせで曲に乗せて歌われているのである。記紀、万葉の時代から現在の演歌、…

田植草紙(続)

七音五音にこだわらないで意味の切れ目で軽く間を入れて読めば、なんとなくリズムがでてくるような気がする。 大磯の虎御前(とらごぜん)は、戀に沈(しづ)うだり 曽我の十郎まいするこひのなぐさみに 虎御前(とらごぜ)、こひをば止(や)めてまゐらせう ・・・…

田植草紙

『山家鳥虫歌』岩波書店「新日本古典文学大系」のうちの『田植草紙』をなんとかリズムつかんで読みたいと思うのだが、『山家鳥虫歌』と違って七音や五音の組み合わせで無いので、まことに難しい。それで歌謡の通史から学ぶべしと、またまたインターネットで…

白鳥

今日は午後からひさしぶりに丸の内に出かけた。東京銀行協会で「デジタル家電のセキュリティ対策」に関するセミナーを聞くためである。開始までの時間を少しお堀端を歩いたが、平成七年に和田倉噴水公園ができており、知らなかった。今上天皇の平成三年歌会…

國のため

10月に入って靖国神社拝殿・社頭掲示の内容が替った。 明治天皇御製: ますらをも 涙をのみて 國のため たふれし人の うへをかたりつ これに続いて、神風特別攻撃隊の海軍少尉二十一歳が父と家族に宛てた手紙。 ・・・・・もう一度家へかへりたいと思ふこ…

八景

海側からの秋の日差しを左に受け長者ヶ崎から一色海岸、芝崎海岸、真名瀬漁港、森戸海岸へと海岸沿いに歩いた。長者ヶ崎の夕照は三浦半島八景のひとつ、森戸の夕照は、かながわの景勝五十選のひとつ、とこのあたりの海岸から相模湾越しに見る夕景の伊豆の山…

里山

今日から十月だ。座間谷戸山公園にいってみる。電車の中で、白川静の『文字遊心』を読む。公園の中には野鳥の観察小屋があるが、晩秋から早春にならないと姿を見ないようだ。小鳥の鳴き声がどう聞こえるか書いてある。フクロウ: 五郎助奉公ボロ着て奉公 メ…