天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

酒の歌(5)

日本酒の原料となる米は、酒造好適米もしくは醸造用玄米と呼ばれ、特有の品質が求められ、食用米や一般米とは区別される。代表的な酒造好適米には、山田錦、五百万石、美山錦、雄町、八反、吟風、ゆめさんさ、夢の香 などがある。なお、安価な酒の原料に使わ…

酒の歌(4)

清酒は、米と米麴とで醸造したもろみを濾して得た澄んだ酒のこと。古代の酒はすべて濁り酒であったが、それを澄んだ清酒にする技術は、菩提泉に代表される平安時代以降の僧坊酒に結集されていく。よって菩提泉をもって日本最初の清酒とする説があり、それを…

 伊良湖崎を想う

同窓会の夜は、知多半島先端の師崎の宿で過ごした。生憎の雨空で三河湾は霞んでいたが、晴れていれば、素晴らしい眺望が開ける。三島由紀夫の『潮騒』の舞台になった神島や日間賀島など、また富士山の頂上などまでが見える。 翌日、個人的な予定では師崎漁港…

愛知県半田市の力石

今年の同窓会は愛知県の知多半島での開催となった。同窓会といっても大学同期の7、8名が集まるにすぎない。午後二時に知多半田に集合する前に、高島先生の著書『愛知の力石』を見て、半田市の二カ所を訪ねることにした。初めに岩滑中町の八幡神社に行った…

酒の歌(3)

日本に酒が存在することを示す最古の記録は、西暦1世紀頃に成立した中国の思想書『論衡』。その後は、3世紀に成立した魏志倭人伝(『三国志』東夷伝倭人条)の記述にある。西暦720年に完成した『日本書紀』には、須佐之男命が八岐大蛇を退治するために八塩折…

酒の歌(2)

米から作る日本酒の歴史は、稲作が日本に伝来した時代までさかのぼる。縄文時代にも酒は作られたようだが、木の実や果実を醸成したものであり、ワインのような酒であったろう。稲の栽培が広く行われ始めた時期の水田稲作遺跡群は2800 - 2900年前とされるので…

酒の歌(1)

2010年9月20日のブログ「酒を詠む」では、洋酒も含めた酒一般をとり上げた。また2011年7月29日と2013年6月4日には「冷酒」の作品を見た。以下では、それらを除いて、日本酒(清酒)に限って見ていきたい。 酒はうるち米を水でといてふかし、麹とまぜ、水を入…

羊歯(しだ)

シダ植物シダ類。シダ植物はデボン紀初期に出現した。石炭紀にもっとも栄え、石灰の起源ともなった。人類による環境破壊の地球を再び再生するには、この羊歯類の力を借りることになろう。花も種子もなく増殖するので(実は胞子による繁殖),ヨーロッパでは…

深みゆく秋(2)

たまの晴天の日に、藤沢の白旗神社、遊行寺の境内に紅葉を探った。白旗神社では、大木のけやきの黄葉がすばらしい。また隣接する公園の銀杏並木の黄葉もみごと。 最新の数学や物理学にも興味があるので、アマゾンから解説書を取り寄せたり、NHKのテレビ番…

深みゆく秋(1)

このところ急に寒くなって都市部でも紅葉が始まった。しかし世界野球「プレミア12」などのテレビ番組に入れ込んで遠出はしていない。近所の俣野別邸庭園とか腰越の漁港や龍口寺、また里山の舞岡公園を散歩するくらいで生活は変り映えしない。 風に揺るる芒…

ユーカリ

オーストラリア原産のフトモモ科の常緑高木。明治初年に渡来し、庭木にした。成長が早く、原産地では、90メートルにもなるという。葉には樟脳のかおりがある。柳葉ユーカリ、丸葉ユーカリなど十数種あるという。コアラの餌になるものもある。 わが去りし島の…

朱鷺(3)

トキは日本では古くから知られていた。奈良時代の文献には「ツキ」「ツク」などの名で現れており、『日本書紀』『万葉集』では漢字で「桃花鳥」と記されている。平安時代に入ると「鴾」や「鵇」の字が当てられるようになり、この頃は「タウ」「ツキ」と呼ば…

朱鷺(2)

ペリカン目]トキ科の鳥で、学名がNipponia nippon。この名は国鳥を意味するものではない(日本の国鳥は雉)。ロシア、朝鮮、中国、日本で乱獲され、各国でその消息を絶ったが、唯一中国で生存が確認され、以後、増殖に努められるようになった。現在は中国と…

朱鷺(1)

トキは天然記念物になっている。かつては日本全国に分布していた水鳥。少数棲息していた佐渡の朱鷺は、1981年以降、野生のものはいない。羽は白色だが、風切羽が淡紅色、いわゆる朱鷺色。後頭に冠毛があり、顔は裸で赤く、脚も赤い。水田、湿地で泥鰌や田螺…

鑑賞の文学―俳句編(43)―

先にご紹介した長谷川櫂『芭蕉の風雅』の芭蕉が、現代俳句に生きていることを具体的に解説する本が出ている。堀切実『現代俳句にいきる芭蕉』である。奇しくも『芭蕉の風雅』より五日早い、今年の10月10日刊行である。さっそく購入して読んだ。以下にこの本…

ベゴニア

ショウカイドウ科に含まれる多年草、小低木。南方の産。2000種ほどあるという。熱帯から亜熱帯の原種を交配して、多くの種や品種がつくられた。日本で栽培されるものは、大きく分けて、木立ち性、根茎性、球根性の三種になるらしい。 ちるべくも見えなき…

とねりこ

モクセイ科の落葉高木。日本原産種で、東北地方から中部地方にかけて温暖な山地に自生する。材質は弾力性に優れ、バットや建築資材などに使用される。また樹皮は、秦皮といって解熱剤や止瀉薬になる漢方薬。谷地に生えるトネリコをヤチダモと呼ぶ。 ふる里へ…

出雲

古代の出雲は、青銅器を主とする西部出雲と鉄器を主とする東部出雲との二大勢力から出発し、統一王朝が作られ、日本海を中心とした宗教国家になった。律令以前の出雲国の影響力は日本神話に見られる。しかし、やがてヤマト王権に下ることとなり、それが有名…

『広辞苑』によれば、海水や湖水が陸地に大きく入り込んだところ。入江。いりうみ。漢字の中に弓が入っているように、弓なりにまがることが前提である。地図を見ると、大きな湾の中に小さな湾がいくつか含まれるという地形もある。例えば、若狭湾の中に栗田…

ジンジャー

インド原産のショウガ科の宿根草。もともと生姜(しょうが)は、熱帯アジア原産のショウガ科の多年生野菜。日本へは古く中国経由で伝来した。古名は「はじかみ」。 蟻などの居らずなりたる庭のうへジンジャーの花 またひとつ咲く 佐藤佐太郎 寂しさに堪へてあ…

毬藻(まりも)

緑藻類シオグサ科の淡水藻。寒冷地の湖に生育。日本では、阿寒湖のマリモが有名で天然記念物。糸状細胞がボール状に生育したものがよく知られている。打ち寄せる波により水面下まで水の回転運動が伝わり、底の毬藻を回転させることで球状になるという。 毬藻…

綿

棉、絮とも書く「わた」は、アジア原産のアオイ科の一年草。わが国には奈良時代に渡来したという。なお、古くは蚕からつくる真綿を指した。室町時代以降に植物のワタからつくる木綿が普及した。綿毛と種を採るのに栽培される。夏の朝に花が開花し、秋に朔果…

野球のうた(4)

日本の全国高等学校野球選手権大会は、朝日新聞社と日本高等学校野球連盟の主催で毎年8月に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。他の国に例を見ないほど国民的人気がある。第1回大会は大正4年(1915年) に全国中等学校優勝野球大会として豊中球場で行…

野球のうた(3)

アメリカ野球殿堂博物館は、ニューヨーク州クーパーズタウンにある。MLBなどで顕著な活躍をした選手や監督・コーチ・審判員、また野球の発展に大きく寄与した人物に対してその功績を称える野球殿堂を総括している。博物館には偉大な選手や歴史的試合のホーム…

野球のうた(2)

野球の歴史を、古代や中世にまで遡る説があるが、ちょっとやりすぎであろう。現在のようなルールや試合の形態の原型を提案したアレクサンダー・カートライトを創始者としてよいのではないか。1845年頃である。日本に伝来したのは、1871年(明治4年)に来日し…

野球のうた(1)

日本でもアメリカでも野球のポストシーズンが終って、今年の優勝チームが決まった。わが好みが、日本のプロ野球からMLBに移ってから随分年数が経った。アメリカのプロ野球の歴史は古いだけに、国民の関心も非常に高い。野茂秀雄がMLBで活躍してから、…

コスモス(続3)

コスモスの花言葉は、花の色によって、次のようになっている。 ★ 白色:『美麗』『優美』 ★ 黄色:『野生の美しさ』 ★ 茶色:『恋の終わり』 ★ ピンク色:『乙女の純潔』 ★ 赤色・紫色:『乙女の愛情』 男女の間でやりとりする際には、気をつけることが肝要…

コスモス(続2)

神奈川県のコスモスの名所といえば、第一に横須賀くりはま花の国であろう。春はポピー、秋はコスモスが百万本も咲くコスモス・ポピー園の広さは、2.3ヘクタールもある。 コスモスの花によせたる愛憐が君と我との距離を近くす 藤岡武雄 ひだまりの日の匂ひし…

コスモス(続1)

(今までのブログで取り上げなかった作品を、今回と次回で紹介する。)原産地はメキシコ。アメリカ大陸を発見したコロンブスがメキシコからスペインに持ち帰ったところから世界に広まったという。日本へは明治時代の初期に渡来。花の色には、白、黄、橙、ピ…

鑑賞の文学―俳句編(42)―

先日発売されたばかりの長谷川櫂『芭蕉の風雅』を読んだ。この本は、芭蕉が語ったという「(俳諧の)言語は、虚に居て実をおこなふべし。実に居て虚にあそぶ事は難し。」の意味を、芭蕉の関係した作品を通して解説する。芭蕉の風雅についての長谷川櫂による…