天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

十国峠

伊豆・駿河・遠江・甲斐・信濃・武蔵・上総・下総・安房・相模の十国を眺めることができる箱根路の峠である。熱海駅からバスにのって訪れた。初島を望む峠の端に源実朝の次の名歌の碑がある。 箱根路をわが越えくれば伊豆の海や沖の小島に 波の寄るみゆ 『金…

岬(みさき)を取り上げたので、峠(とうげ)も見ておこう。これもロマンを呼ぶ魅力的な言葉である。広辞苑によると、手向(タムケ)の転といい、通行者が道祖神に手向けをするところからきた。山の坂路を登りつめた所。山の上りから下りにかかる境。そして…

照ケ崎

岬や崎が付いた地名なのに、実態としての地形が見当たらないということがたまにある。近代国家になって以降、大規模な土木工事が実施されて地形が変形してしまったのだろう。神奈川県大磯町の照ケ崎もそのようなところに思える。ここはわが国海水浴場の発祥…

萱草

カンゾウの花は夏の季語だが、城ヶ島には、十月半ばでもところどころに咲いているのでとりあげる。ユリ科の多年草で、藪にはえるのがヤブカンゾウ海岸にはえるのがハマカンゾウである。昼間だけ咲き一日でしぼむという。若葉は食用になる。古く中国から来た…

城ケ島灯台

城ヶ島東端の安房崎とは反対側の西端の山に立っている。江戸時代に設置された灯明台が、この灯台のルーツというが、もともと安房崎にあったのろし台を移設したもので、後に松明を焚く篝屋に変更された。城ヶ島を描いた江戸期の絵には当時の篝屋の姿が描かれ…

安房崎灯台

三浦半島・城ヶ島の東端に位置する。安房の国と呼ばれていた房総半島を一望出来ることから安房崎の名前が付いたといわれる。この灯台は東京湾をはさんで千葉県野島崎灯台に対する。地元の陳情により1962年に設置された。 灯塔高:11.5 m、光度:2,000 cd、光…

皮剥

フグ目カワハギ科の魚。腹鰭は退化して1本のとげになっている。皮が硬く厚いので剥いで調理する。ハゲの名もあり。特に肝臓が美味で好まれる。フグの刺身のように薄く切って皿に並べ胆酢につけて食べたり、煮付にして食べる。 鮟鱇に代へて皮剥の鍋を食ふ吝…

みさき。まことに美しい日本語である。しかもロマンをかきたてる。何故だろう。広辞苑によれば、「み」は接頭語で、海または湖に突き出した陸地の端。崎(さき)。 そこから先へは同じ手段では行けない、行き止まりの地点である。その先には茫々たる水域が広…

くらげ

腔腸動物のハチクラゲ類とヒドロ虫類の浮遊生物の総称ということで、種類は多い。漢字では海月、水母などを当てる。見た印象からきた字である。体の大部分が無色透明の観点質。動物プランクトンを主食にしている。 くらげが出てくるわが国最古の文献は、古事…

カマキリ

漢語では、蟷螂(とうろう)である。鎌切の字をあてることもある。斧虫、いぼむしりなどとも言う。直翅目カマキリ科の昆虫の総称。日本には十一種いるらしい。大蟷螂が多い。蛙やトカゲまで食べるし、交尾中の雌が雄を食べる。実際にこの目で見たことはない…

京浜急行・三浦海岸駅からバスで剱崎に向かう手前に松輪というバス停があるのを知って、ああここが有名な松輪鯖を釣る漁業基地なのか、と認識をあらたにした。この地区では、6〜11月の漁期に沿岸域に来遊するマサバを一本づつ釣上げるサバ漁が盛んである。…

剣崎灯台

京浜急行・三浦海岸駅から剣崎行のバスに乗って終点で下車。徒歩20分ほどのところに灯台はある。剣崎は、「けんざき」と言う人もいるようだが、「つるぎさき」が正称らしい。名前の由来は、次のようなもの。 徳川幕府の官材を積んだ五百石船が、この沖で暴…

男郎花

おとこえし、と読む。オミナエシ科の多年草。花に醤油が腐敗したような臭いがあるので、敗醤という漢名がある。男郎花は女郎花に対する和名。 晩年は口閉ぢてあれ男郎花 田川飛旅子 男郎花あの稜線が大菩薩 古沢太穂 昼寝ざめまだうつつなしながめゐてしらし…

鳳仙花

東南アジア原産のツリフネソウ科の一年草。名前の由来は、中国で花を鳳凰に見立てたところから。日本には十七世紀頃に渡来したという。紅色の花の汁を絞って爪を染めたことから、爪紅(つまべに、つまぐれ、つまくれなゐ)の名がある。花の色には、紅の他に…

秋のヨット

よく晴れた体育の日だったが、江ノ島水族館に行った。生きている鯖の遊泳が見られるか、と期待したのだが、どこにも見当たらなかった。別の水族館でも見た記憶がない。マグロは見たことがある。ノーベル賞を受賞した下村博士のオワンクラゲが話題になってい…

雨あがりの鎌倉

明け方まで降っていた雨が止んだので鎌倉に出かけた。大巧寺、妙本寺、ぼたもち寺、八雲神社、安国論寺、長勝寺 とめぐった。わが定番の散策コースである。 ぎんなんの踏まれて臭ふ蛇苦止堂 祀らるる身投げの井戸や蔦紅葉 秋風や「寂」一文字の谷戸の墓 妙法…

蒲の穂

蒲はガマ科の多年草。古くはカマといったらしい。日本では北海道から九州まで、北半球の温帯から亜熱帯の沼や池のほとりに生える。花粉は利尿・止血の漢方薬で「蒲黄」という。 蒲の穂のつっ立つ重み馬祀る 才川道子 蒲の穂の四五本剪れば重かりき 松浦智恵…

背高泡立草

キク科の多年草で北米原産。わが国には明治期に渡来し、第二次世界大戦後に急速にふえた帰化植物で、芒を駆逐するほどに繁殖している。同じ北米原産で明治初期に渡来したブタクサとよく間違われる。ブタクサは花粉症を引き起こすが、セイタカアワダチソウは…

杜鵑草

ユリ科の多年草。花の斑が鳥のホトトギスの胸毛の斑点に似ているところからこの名がついた。ヤマジノホトトギス、ヤマホトトギス、キバナホトトギス、チャボホトトギス、タマガワホトトギス、ジョウロウホトトギス などの種類があるというから驚く。 墓の辺…

観音崎灯台(3)

観音崎周辺の台場について、路傍の説明板から紹介しよう。 江戸時代後期、外国船の来航が激しくなると 江戸幕府は海防のため浦賀奉行所をはじめ 各大名に三浦半島の警備を分担させました。 観音崎台場は、文化九年(1812)会津藩 によって築造されました…

観音崎灯台(2)

灯台の庭には、ふたつの句碑が立っている。 霧いかに深くとも嵐強くとも 虚子昭和23年秋、高浜虚子がここを訪れて詠んだ句。 汽笛吹けば霧笛答ふる別れかな 橙青初代海上保安庁長官・大久保武雄氏が昭和43年に詠んだ句。 この灯台の沿革は、次のように説…

小紫

別名・小式部、クマツヅラ科ムラサキシキブ属。日本、朝鮮半島、中国に分布する。紫式部と混同されることが多いが、それよりも高さが低くよく分技して珠美をびっしりつける。観賞用に庭木として植えられる。一方、紫式部は山野に生え,観賞には向かない。 次…

観音崎灯台(1)

俺ら岬の 灯台守は 妻と二人で 沖行く船の 無事を祈って 灯をかざす 灯をかざす これは映画『喜びも悲しみも幾歳月』の主題歌の一番目の歌詞である。映画の監督は木下惠介、歌の作詞・作曲は弟の木下忠司、歌手は若山彰。映画も歌も大ヒットした。映画は、新…

桔梗

キキョウ科の多年草。古名はオカトトキ。キチコウとも。秋の七草の一つ。次の漱石の句は毎年のように紹介しているが、桔梗となればはずせない。 仏性は白き桔梗にこそあらめ 夏目漱石 山中に一夜の宿り白桔梗 野澤節子 白埴(しらはに)の瓶に桔梗を活けしか…

原子力空母

9月25日(木曜日)に原子力空母ジョージ・ワシントンが横須賀に入港した。この空母は、1986年8月25日、ニューポート・ニューズ造船所で建造が始まる。1990年7月21日に進水し、1992年7月4日に就役した。命名は、当時のファーストレディ、バーバラ・ブッシュに…

白粉花

おしろいばな、と読む。南米原産のオシロイバナ科の多年草。夕方咲くので、夕化粧(ゆふげはひ)の別名もある。まだ見たことはないが、種子は黒く、割ると白粉状の胚乳がでるという。江戸時代に渡来、命名したのは江戸時代の博物学者・貝原益軒との説あり。 …

秋の潮

吾妻山の山頂には、まだ体の色づきが浅い赤とんぼが群れて飛んでいた。黄花コスモスが陽光に輝いていた。二宮海岸に下りて突堤の釣人を見ていた。大磯沖にかすむ釣舟を見ていた。 秋風や鳩の和毛(にこげ)も駅ホーム 彼岸花蘂が支ふる落葉かな 山頂の我をめ…

あめんぼ

半し目アメンボ科の昆虫。あめんぼう、水蜘蛛、川蜘蛛 とも。肉食性で、水面に落ちた虫に口吻を突き刺し消化液を注入して溶けた体汁を啜る。魚の死体にむらがることもある。獲物が水面で動く時にできる小さな波紋を感知してその位置を把握する。名称の由来は…

蜥蜴

トカゲ科の爬虫類の総称。昆虫やミミズを食す。石竜ともいう。最長の種はハナブトオオトカゲと言い、全長475cmが観測されている。テレビでよく見るコモドオオトカゲには、人間を襲って食った例があるというから恐ろしい。正に恐竜の末裔である。夏の季語。 …

蓮の実

鎌倉・鶴ヶ丘八幡宮の源平池では、今盛んに蓮の実が飛んでいる。蓮の花が終ると、蜂の巣状に穴が開いた円錐形の花托が現れ、穴の中の実が熟すとやがて飛び出す。俳句では秋の季語。「蓮の実飛ぶ」は傍題。 蓮の実にはじかれてたつ蜻蛉かな 千代 蓮の実のしら…