天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

かすみ草

ムレナデシコとシュッコンカスミソウの二種類がある。前者は、カフカス産でナデシコ科の一年草。後者は、欧州、アジア産の宿根草。 霞草かすみて寒の机上なる愚鈍凡庸かくしおほせよ 雨宮雅子 急がねばならぬことなどなくなりし晩年のごと咲く かすみ草 馬場…

金糸梅

キンシバイは、おとぎりそう科の半常緑性小低木。中国原産で日本へは江戸時代中期の1760年頃に渡来。梅雨時に開花する。株分けや挿し木で増やし、庭木や切り花にする。 五月梅・金糸梅とぞ梅といふ文字を持ちて 咲ける花々 醍醐志万子

梅雨の晴れ間

湘南海岸を歩いていていつも不思議に思うのは、休日平日を問わず、黒いウェットスーツを着たサーファ達が、朝から波乗りに興じていることである。どんな職業の人たちなのか。午後から夜にかけて勤務の職業なら、出社の前に遊べる。あるいは夜勤明けに遊ぶと…

ハマナス

漢字で、浜茄子、浜梨、玫瑰、浜薔薇などと書く。バラ科バラ属の落葉低木。根は染料などに、花はお茶などに、果実はローズヒップとして食用になるという。ビタミンCが豊富に含まれる。天狗巣病にかかると枯れる。北海道の紋別町では、対策を検討している、と…

なんじゃもんじゃ

関東地方で、近辺に見られない種類の大木を指していう。千葉県神崎神社のクスノキ、明治神宮や深大寺のヒトツバタゴ、筑波山のアブラチャン、山梨県鶯宿峠のりょうめんひのき 等。なお、右の画像は、鎌倉円覚寺境内のヒトツバタゴである。 おろかなる争ひな…

梛(なぎ)の木

マキ科の常緑高木。雌雄異株。雄花穂は黄白色で円柱形、雌花は緑色で葉腋につく。材は緻密で、家具などに使われる。 檐(のき)の上にさやぐ梛の木春を経て音やはらかし 古葉散りつつ 若山貴志子 伊勢の海(み)を熊野の海と続ければ即ち来り生ひし 梛(なぎ)の木…

ユキノシタ

ユキノシタ科の半常緑多年草。葉は丸みを帯びた心臓形。この葉はてんぷらにして食べられる。また咳止めにもなる。漢字では、虎耳草を当てることも。 雪の下白く小さく咲きにけり喜蝶(きてふ)が部屋の 箱庭の山 北原白秋 虎耳草(ゆきのした)のあはれなる花さ…

紫陽花の里

神奈川県足柄上郡開成町では、毎年、六月に「あじさい祭」が開催される。いつの頃からか、毎年出向いている。見馴れた場所であり、イベントなのだが、季節が来れば自然に足が向く。今年は、6月11日(土)〜19日(日)の期間。ただ、今回は、東日本大震災の被…

定家葛

キョウチクトウ科の常緑つる性木本。今春禅竹作の能『定家』からついた名という。定家と式子内親王の忍ぶ恋。死しても式子の情念は雨となり、定家の妄執は葛となって式子の墓にからみつく。この作品の発想のもとになったのは、次の式子内親王の歌にあるとい…

鑑賞の文学 ―俳句篇(18)―

みちのくの伊達の郡の春田かな 富安風生『草の花』 みちのく、伊達郡、春田 と地形を大から小にクローズアップしていく詠み方であり、「の」の連続によりリズム感のすぐれた作品になっている。 この句に出て来る「みちのくの伊達の郡」とは、福島県伊達市に…

梅雨の長谷

今年の夏は、東電の原発事故のおかげで節電をよぎなくされているが、今の時期、例年より暑く感じる。15%程度の節電ではダメなのではなかろうか。鎌倉では、紫陽花が咲き始めた。「NHKひるブラ」では、鎌倉の長谷寺の紫陽花を中継するということで、朝…

シラン

紫蘭と書く。ラン科シラン属の宿根草。日本、中国、台湾などが原産の野生ランで、準絶滅危惧種に指定されている。乾燥にも過湿にもよく耐え、日向の畑土で栽培できるので、野生ランと区別できにくくなっている。 紫蘭咲いていささかは岩もあはれなり 北原白…

鑑賞の文学 ―短歌篇(18)―

雪ひと日積みたるのみに街川は常なく深き 水音のする 時本和子『遠景』 著者の時本さんは、入門時から森岡貞香について短歌を学び、この歌集を校正中に森岡貞香が亡くなったという。現在は、結社「短歌人」に所属する。短歌暦は、二十年になろうというベテラ…

ギボウシ

ぎぼうしゅ、ぎぼし とも。漢字で擬宝珠と書く。ユリ科(APG植物分類体系ではリュウゼツラン科に入れる)の多年草、ギボウシ属の総称である。山間の湿地などに自生し、また花が美しく日陰でもよく育つため栽培される。花言葉は「落ち着き」「沈静」「静かな…

つつじ

シャクナゲ科ツツジ属の常緑あるいは落葉低木。花の大きさ、色はさまざまで、世界には約850種あり、日本には40種あまりが自生するという。材は緻密で細工物に適する。 水伝ふ磯の浦廻(うらみ)の岩つつじ茂(も)く咲く道を また見なむかも 万葉集・草壁皇…

フラミンゴ

紅鶴とも呼ぶ。フラミンゴ科の鳥の総称。3属5種に分類される。南欧、中央アジア、アフリカに分布する。食物はおもに水中のプランクトンや藻類。 紅鶴(フラミンゴ)ながむるわれや晩年にちかづくならず すでに晩年 塚本邦雄 フラミンゴ一本の脚で佇ちてをり…

花菖蒲

菖蒲は、サトイモ科の多年草。北海道から九州まで、東アジア、インド、北米の小川や池などの水辺にはえる。根茎には芳香があり薬用とされる。古くはアヤメと呼ばれた。 女傘借りて見てをり花菖蒲 清水基吉 わかれわかれになりて歩きぬ菖蒲園 長谷川かな女 時…

あやめ

アヤメ科の多年草。山野に自生するが栽培もする。古くはショウブをアヤメと称していた。 夕されば青きむらさき色をなみただ白くのみ 菖蒲(あやめ)は見ゆる 伊藤左千夫 うるはしき見るにたのしく花あやめ老の腰をば 痛ましめずも 窪田空穂 朝じめる瀬上の道を…

ほととぎす

漢字では、時鳥、子規、杜鵑、郭公、霍公鳥 などを当てる。鶯などの巣に産卵して育てさせる、所謂、托卵で知られる鳥で、和歌では最も多く詠まれたのではなかろうか。万葉集に154首、新古今集に62首に出て来る。鶯よりもはるかに多い。万葉集、古今集、新古…

横須賀菖蒲園

JR横須賀線の「衣笠駅」で下車、池上経由横須賀駅行のバスで、池上中学下車、徒歩15分のところにある。菖蒲園という名がついているが、ここは知る人ぞ知る藤の花と石楠花のみごとな庭園でもある。しょうぶまつりが、6月1日から30日にかけて開催され…

ピラニア

南米特産のカラシン科の熱帯魚。アマゾン川、パラグアイ川、オリノコ川などに分布して、数種類いる。尾部の二本の黒い条が特徴。日本でも観賞魚として飼われる。 ピラニアが豚を喰ふさまみてゐたりわれらときにはピラニアに似る 時田則雄

さくら草

サクラソウ科の多年草。花冠は五裂して先がくぼみ、其部に花筒がある。江戸時代から観賞用に栽培された。クリンソウ、ユキワリソウなどは近縁種である。春の季語。 花の奥より蕾駈け出づ桜草 加藤楸邨 桜草咲いてむかしの暴れ川 松本泰二 鉢植の変種あまたの…

石楠花

シャクナゲはツツジ科で、その類は世界に500種以上あるという。園芸品種は西洋シャクナゲと呼ばれる。 石楠(しやくなげ)は寂しき花か谷あひの岩垣淵に 影うつりつつ 島木赤彦 石楠は木曽奥谷ににほへどもそのくれなゐを人 見つらむか 斎藤茂吉 石楠花のは…

白子

「しらす」と読む。カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、イカナゴ、アユ、エソ、シラウオなどのほとんど無色透明な稚魚の総称という。沿岸の表層近くを目の細かい網を引いてとる。生食も干したちりめんじゃこも賞味される。俳句では、春の季語(白子干…

鵠沼(くげぬま)海岸

小田急線の鵠沼海岸駅で下車、海岸に沿って江ノ島まで歩いた。この海岸はビーチスポーツの発祥の地である。ビーチバレーのコートがいくつもあって、平日でも数人が球を打っている。 ここは、古くは「砥上ヶ原」と呼ばれる砂地の荒野であった。鎌倉時代初期、…

都忘れ

キク科の宿根草で植物名はノシュンギク。深山嫁菜(みやまよめな)を観賞用に栽培したものという。四月から六月にかけて花が咲く。 名を問へば吾妻菊ちふむらさきと白と咲きたる鉢の植込 伊藤左千夫 山に来て都忘れの花を見ぬ遠き痛みにかよふ花の名 田谷 鋭 …

やまぼうし

ミズキ科の落葉高木。本州から九州の山地にはえ、庭木にもする。山法師、四照花(やまぼふし)などと書く。 山法師妻籠(つまご)は雨に変りけり 松本陽平 遙か見るとき遙かなる山法師 篠崎圭介 銀漢の彼方より来したましひのほのかに白き山ぼうしの花 馬場あ…

新樹光

初夏の樹木の息吹を浴びたくて、吾妻山に行ってきた。いつものように、初めに梅沢海岸に寄って潮騒を聞き、釣人たちの様子を眺めた。吾妻山では、今の時期、目立つ花はない。上方にはコゴメウツギ(バラ科コゴメウツギ属)、マルバウツギ(ユキノシタ科ウツ…

鑑賞の文学 ―俳句篇(17)―

あひびきやわれら子規忌を修しゐる 加藤かけい『生涯』 [塚本邦雄]『百句燦燦』の鑑賞から。 「・・・世間を憚りながら華やぐ密会の二人と、閉鎖的な、人目には暇な風流人の儀式に参じた少数者の座とへ作者の乾いた目はこもごもに向けられてゐるのだ。・・…

浜昼顔

海岸の砂地に群生するヒルガオ科ヒルガオ属の多年草。蔓のように茎が砂丘を這う。北海道から琉球まで分布する。 浜昼顔咲きてききゐる汐鳴りのかなた原油の流されし海 苔口万寿子 ひとつひとつ花仰向けてあかねさす日を留めて咲く 浜ひるがほは 大塚布見子 …