天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

初冬の宮ケ瀬

数年ぶりに宮ケ瀬湖を訪ねた。これは相模川水系の中津川に建設されたダムによってできた人工湖である。周囲をめぐる道路やいくつもの橋梁はみごとなもの。吊橋や公園の木々には、師走のイルミネーションに向けて、電飾の準備が進められていた。 冬立ちて風の…

尾花

ススキの花穂。けものの尾に似ているところからの命名。ススキは茅とも言うが、イネ科の多年草。万葉集には、尾花、芒、茅で多くの歌が詠まれている。尾花では十八首ある。次によく知られた一首のみあげておく。 高円の尾花吹き越す秋風に紐解き開けな直なら…

久里浜

横須賀市久里浜は、嘉永5年(1853年)に黒船を率いて同市の浦賀に来航したマシュー・ペリー提督が上陸した地として知られる。その場所に1987年にペリー記念館が開館した。広場にある上陸記念碑の碑文「北米合衆国水師提督伯理上陸紀念碑」は伊藤博文の揮毫に…

菊花展

横浜三溪園の菊花展が、10月26から11月23日まで開催された。大菊、懸崖、古典菊、小菊盆栽に加え、三溪園や神奈川の名所の風景を小菊で表現した「盆景」が展示されていた。 日本に野生するキク属は20種程度と多い。ところが菊花展で見る大ぶりな園芸品種は…

ねこじゃらし

「えのころぐさ」のことである。漢字で、狗児草、狗尾草と書く。狗児(えのころ)とは、犬の子のこと。それが何故猫と関係するかと言えば、子犬の尾に似た花穂に猫がじゃれつくからである。イネ科の一年草。秋の季語。 いつせいに吹かれて海へねこぢやらし …

コスモス

メキシコ原産のキク科の春まき一年草。秋桜ともいう。秋に開花するが、夏前に開花する早咲きの園芸品種もある。 コスモスを離れし蝶に谿深し 水原秋櫻子 コスモスの裏口出れば日本海 長谷川エミ 家持の海うつくしき秋桜 三谷いちろ コスモスは瓦礫の間に花そ…

弁慶草

ベンケイソウは葉が対生し,雄しべは花弁より短く,花弁の色は淡紅色。オオベンケイソウは,葉が 3 枚輪生ないし対生し,雄しべが花弁より長く,花弁の色は赤桃色。明治時代以降に,中国・朝鮮半島から伝来したという。引き抜いても折ってもしおれず、それを…

秋海棠

中国原産のシュウカイドウ科の多年草。ベゴニアの一種。雌雄異花。わが国には江戸時代初期に園芸用に持ち込まれた。(貝原益軒の『大和本草』に、「寛永年中、中華より初て長崎に来る。……花の色海棠に似たり。故に名付く」と記されている。)断腸花という凄…

月影ケ谷(つきかげがやつ)

阿佛邸旧蹟の碑は、鎌倉方面に向かう江ノ電の極楽寺駅の手前の踏切傍にある。周知のように阿仏尼は鎌倉時代の歌人で、安嘉門院に仕えて四条と称した。のち藤原為家(藤原定家の子)の側室となり、冷泉家の祖となる為相を産む。『続古今和歌集』以下の勅撰集…

藤沢宿風物詩

江戸時代、宿場の旅籠屋では給仕をする女として飯盛女公認されていたが、これは多分に遊女として奉仕を期待するものであった。飯盛女のいる旅籠は繁盛した。藤沢宿には旅籠が49軒あり、うち27軒が飯盛女をかかえていた。一軒に二人ずつ置かれた。永勝寺…

バラ科ナシ属の落葉高木の総称。日本の梨は、野生種(ヤマナシ)を古くから改良してつくられたもの。西洋梨やシナナシは明治期に導入された。 うつすらと梨の青みや袋紙 長谷川櫂 道元のつむりに似たる梨一つ 長谷川櫂 露霜の寒き夕の秋風にもみちにけりも妻…

江ノ島風物詩(2)

江ノ島の児玉神社は、日露戦争で戦功をたてた児玉源太郎を神として祀っている。その児玉源太郎の逝去を悼んで詠んだ山県有朋の歌の碑がある。次のように書かれている。 児玉藤園の身まかりける日 讀ける 有朋 越えはまた里やあらむと 頼みてし 杖さへをれぬ…

晩秋の大山

何年ぶりになるか、久しぶりに伊勢原の大山に登ってきた。小田急線・藤沢駅から伊勢原駅へ。そこからバスで終点の大山ケーブル下へ。ケーブルカーに乗って阿夫利神社駅へ。後は登山ルートを歩く。以前は、ケーブルカーを利用しないで、山頂までを往復したこ…

藁塚(わらづか)

脱穀したあとの藁束を刈田に積み上げたもの。摘み方には円錐形が多いようだが、地方によって特徴があるらしい。肥料や飼料にする。にお、藁ぼっち などとも。 藁塚も屋根も伊吹の側に雪 橋本多佳子 藁塚が見えて目のふち痒きかな 高柳重信 おのづから藁塚の…

旅人かへらず

慶応大学の藤沢キャンパスを歩いていたら、2号遊水池を見下す芝生に、アクリル板があって、次のように書かれていた。 旅人は待てよ このかすかな泉に 舌を濡らす前に 考へよ人生の旅人 西脇順三郎「旅人かへらず」 これは詩の冒頭部分であり、次のように続…

芋掘り

薩摩芋はもとは熱帯アメリカ原産のヒルガオ科多年生作物。十七世紀ころ渡来し、十八世紀に普及した。飢饉や食糧難を救ってきた。甘藷、藷(いも)、唐芋とも言う。近郊の農家では、秋になると薩摩芋畑を有料で芋掘りとして解放する。家族連れに人気がある。 ほ…

藤袴

キク科の多年草。川岸の土手などにはえる。秋の七草のひとつだが、日本のものは奈良時代に薬用として渡来したものが根付いたとされる。万葉集では、秋の七草を詠み込んだ山上憶良の一首に現れるのみで、他の歌はない。 幾代経し蔵の罅かも藤袴 松井葵紅 藤袴…

水引草

金線草とも書く。タデ科の多年草。花穂が進物用の「水引」に似ているところから名づけられた。 水引のつやつやと立つ日陰かな 長谷川櫂 稗草にをりふし紅くそよめくは水引草か交りたるらし 北原白秋 わが二十町娘にてありし日のおもかげつくる水引の花 与謝…

鑑賞の文学 ―短歌篇(21)―

雨の日はおとなしい町 間遠なる靴音、とほく犬の なくこゑ 小島熱子『りんご1/2個』 小島熱子さん(「短歌人」所属)の第三歌集が刊行された(本阿弥書店)。この歌集の特徴や読みどころについては、帯文(小池 光)と栞(花山多佳子、大辻隆弘、吉川宏志…

綿

「わた」はアオイ科の一年草。仲秋の頃に淡黄色の五弁花を開き、実を結んで熟すると白綿を出す。重陽の節句前日に菊に綿をかぶせて霜よけとし、菊の露と香のうつった綿で身をぬぐって長寿を祈った。以下の源忠房や馬 内侍の歌は、そうした風習を背景にしてい…

江ノ島風物詩(1)

秋になると江ノ島の磯では、鯖やソーダガツオといった大きめの魚が釣れ始める。そのまま持ち帰ると腐るし、大漁になって箱から溢れることにもなるので、磯辺で頭と膓を取ってしまう。それを空から鳶が狙っている。 角錐の山裾かすむ神無月 まなかひに黒くか…

木犀

モクセイ科の常緑高木。中国原産。雌雄異株だが、日本にあるものは雄株なので結実しないという。 もくせいの夜はうつくしきもの睡る 富沢赤黄男 身を浄くたもつよろこびしくしくに秋の夜ふけて 匂ふ木犀 穂積 忠 葉をもるる夕日の光近づきて金木犀の散る花と…

木の子

漢字で茸や菌を当てる。木耳(きくらげ)とも言う。古くは、「たけ」、「くさびら」と呼ばれた。大形菌類の俗称である。「きのこ」は江戸初期に秋の季語になった。なお、万葉集では、松茸が「秋の香」として詠まれている。 爛々と昼の星見え菌生え 高浜虚子 膝…

湯立神楽

以前から気になっていた湯立神楽を初めて見る機会を得た。湯立神楽は各地にあるようだが、今回は白旗神社のものである。これは藤沢市の指定重要民俗文化財になっている。参加する宮司は、藤沢市内の神社からだけでなく、葉山市の森戸神社からも参加されてい…

赤まんま

イヌタデのこと。日本全土とアジアに広く分布する。密生する小さな花の形状が赤飯に似ているところから、アカマンマとかアカノマンマなどの名が付いた。 ゴム長を穿きてふるさと赤のまま 右城暮石 赤飯(あかまま)の花と子等いふ犬(いぬ)蓼(たで)の花は こち…

むくげ

漢字で木槿と書く。アオイ科の落葉低木で中国原産。五弁花を朝開き夕方にしぼむ。「槿花一朝の夢」とは、栄華のはかなさを譬えた言葉。花の色には、白、淡紫、淡紅などがある。秋の季語で、傍題に「花木槿」「きはちす」「底紅」「白木槿」「紅木槿」「木槿…

アツモリソウ

ラン科の多年草。日本では、北海道と本州中部以北の山中で見られる。名前の由来は、平敦盛の母衣(ほろ)に見立てたところから。ちなみに、同じラン科の多年草にクマガイソウがあるが、こちらは熊谷直実が背負った母衣にちなんだもの。 連子窓よりみちびかれき…

稲扱(いねこ)き

思いがけず懐かしい光景を見た。横浜市戸塚区の舞岡公園をいつものように歩き廻っていたら、小谷戸の里の古民家の庭で、昭和時代に使われていた足踏み式の稲扱き機を動かしていた。右の画像のように一人が横について稲束を手渡し、別の一人が足でペダルを踏…

女郎花

オミナエシ科の多年草。オミナメシとも。名前の由来にはいくつかある。へしは飯であり花が粟粒に見えるのが女の飯であるという説、へしは(圧し)であり美女を圧倒するという説 など。秋の七草のひとつであり、漢方では根を乾かして利尿剤とする。別名として…

女郎蜘蛛

クモ綱クモ目アシナガグモ科に属するクモ。雄の体長は8mmほどだが、雌はその倍以上ある。幼時に作る網の形は丸く、成長すると馬蹄形になる。関東地方では秋の終りに真赤な卵を産む。そして翌春に孵化する。雄で7回ほど雌で8回ほど脱皮を繰り返して成体と…