天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集・令和二年「日脚」

       即位式経てあらたまの令和かな

       乗り込めるバスの座席に日脚伸ぶ

       枯葉ちる手づくりパンの店先に 

       こも巻きの松を見下ろす天守閣 

       ふたつ垂れひとつ落ちたり烏瓜

       収穫をことほがごと藁ぼつち

       清水や花さく友禅着てあるく

       掘り出だす蓮根積みて壁なせり

       風寒しベビーバギーに犬のせて

       見慣れたる松もあたらし初詣     

       松過ぎてカテーテルとるうれしさよ  

       あらたまの木漏れ陽に聞くリスのこゑ 

       玄関をあけて驚く春の富士 

       この庭に育ちて咲ける桜かな 

       切り出せる石の白さや春日さす 

       ウィルスにつづきて来たる黄砂かな 

       池の面にしだるる花へ鯉の口  

       カーテンの隙間に見たる雪の嵩 

       手作りのマスクして行く花見かな   

       感染を忘れて仰ぐ桜かな 

       人避けて清明の朝散歩せり

       凧ひとつ自粛の空に鳴る 

       人類の足跡のこる望の月

       二十年ともに暮らせるアマリリス

       ザリガニの鋏が真っ赤梅雨の沼

       卯の花や新型コロナ恐れつつ 

       万歩計歩数気にする梅雨の道     

       梅雨出水生存罪悪感の村   

       雨やみて胸はだけたる大暑かな  

       甲虫少年の手に足掻くのみ    

       包装紙はみ出て垂るる葡萄かな  

       雪積める妻の故郷を思ひやる

       忘れしが名札のありて花海棠 

 

花海棠