天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

海のうた(1)

海の語源は、「う(大)」と「み(水)」である。海にかかる枕詞には「いさなとり」「にほてる」がある。古語では「わた」とも読む。海原は「わたの原」とも言った。「わたつみ」は海の神をさした。「荒磯海(ありそうみ)」は、岩の多い荒波の寄せる海岸のこ…

山下清さん(8/8)

昭和46年7月に脳出血が原因で自宅で逝去した。享年49歳であった。夕食時に呟いた「ことしの花火は、どこに行こうか」が、最後の言葉であったという。富士霊園に墓所がある。 清さんの才能は、発達障害の一種・サヴァン症候群と関係しているらしい。サヴァン…

山下清さん(7/8)

太った体で精薄の若者を周囲の人達はよくからかった。人が面白がると乞われるままに全裸になったりした。甲府駅でこれをやったために警官につかまり、甲府市の山梨脳病院に強制入院させられるはめになった。 きんたまを人に見せたら警察で手錠かけられ病院に…

山下清さん(6/8)

昭和17年に二十歳になると当時の制度として徴兵検査を受けなければならなかった。恐れていた検査も精神薄弱ということで免除になり、八幡学園に戻って、ふたたび貼絵の制作に夢中になる。 義ちやんが敬礼の違ひをして見せる大将、少尉、一等兵の 空襲の夜は…

山下清さん(5/8)

清さんは、昼食や夕食を見ず知らずの家に立ち寄って貰う、つま物乞いすることに平気であった。また戦中戦後の厳しい世の中ながら、こうした若者に日本人は寛容であった。食事時であればご飯やおかずを清さんの茶碗に入れてくれたし、面倒な時には小銭をくれ…

山下清さん(4/8)

駅の待合室で寝て一夜を明かすことはよくあった。その折、たまに警官に不審尋問を受けて、所持金もあり答えがしどろもどろのために留置所にぶちこまれたりもした。そんな時には、母を呼んでもらって身の潔白を証明せざるをえなかった。ただどんなに困っても…

山下清さん(3/8)

清さんは、二十一歳までは千葉県各地を放浪し、いくつかの職場を転々とした。馬橋の魚や、我孫子の弁当屋、馬橋の妾宅などであるが、いずれも長くは務まらず自ら出奔したり、追い出されたりした。また日数が経つと同じ家に舞い戻ってきて世話になる、という…

山下清さん(2/8)

山下清さんは、大正11年3月に東京浅草で生まれた。3歳の時、重い病気を患い、言語障害・知的障害に遭う。父・清治は、清が10歳の時に死去。12歳で千葉県の養護施設「八幡学園」に入園する。ここで絵の才能が開花し、独自の貼絵技法を始める。ところが18歳の…

山下清さん(1/8)

[まえがき]これから8回にわたるこのシリーズの短歌部分は、「短歌人」誌上に、「山下清さんを訪ふ」と題して平成27年7月号から平成28年11月号にかけて掲載されたものです。 山下清さんとは何の面識もない。テレビで連載の映画『裸の対象放浪記』を見たり本…

鬱金(うこん)桜

鬱金桜はサトザクラの栽培品種で、数あるサクラの品種の中で唯一、黄色の花を咲かせる。御衣黄に似て花弁に葉緑体をもつが、緑色が弱く淡黄色である。ショウガ科のウコンの根を染料に用いた色に似ているところに名前の由来がある。花期は4月中旬〜下旬。 い…

俣野別邸庭園

横浜市の俣野別邸庭園が工事を完了しやっと開園した。ここは旧住友家俣野別邸で、昭和14年に建築された和洋折衷住宅。1998年ごろまでは住友家の縁者が住んでいたが、国に譲渡されて2004年に国の重要文化財に指定された。保存と一般公開に向けて2008年1月から…

桜狩:江ノ島

江ノ島は桜の名所ではない。ただ遠くから見るとところどころに桜の塊があるので尋ねてみた。途中で風が強くなって歩くのに疲れてしまった。児島神社は改修中であったが、参道の樟の大木は、若葉になっていて見応えがあった。 ところどころの広場には桜が数本…

桜狩:鎌倉

はじめは源氏山公園・葛原が岡の桜を見に行こうと思っていたが、前日の雨で山路がぬかるんでいることを危惧して中止し、鶴ケ丘八幡宮と極楽寺を訪ねた。若宮大路の新装なった段葛の桜並木は、満開で見事であった。工事が完了した時点では、まともな花が咲く…

花の詩情(6/6)

あとがき 平成二三年三月一一日、東日本大震災が発生した。大津波とその影響による原発事故が、桜でも知られるみちのくに甚大な被害をもたらした。その後、桜と震災を詠んだ短歌や俳句が多く発表され、被災地に思いをはせた。死者や行方不明者への鎮魂、被災…

花の詩情(5/6)

死と桜 桜の花の咲く頃の野辺送り(葬送)を見かけると、亡くなった人が羨ましくなる。送る人達も悲しみながらも逝く人を祝福しているようにも思える。 夕空を花のながるる葬りかな 飴山 實 花どきの峠にかかる柩かな 大峯あきら 死人(しびと)焼く火加減上げ…

花の詩情(4/6)

病と桜 病状の度合いによって桜に対する思いは違ってくるであろう。眼前に花を見られる場合もあれば、病床にあってただ花の季節が来たことを知り、思いを馳せる場合もある。 正岡子規の場合、二二歳の時に始った喀血の結核の病状が進行して、三十歳で病床に…

花の詩情(3/6)

老と桜 老いて来ると老木の桜の風情に一層心ひかれる。自分の来し方を思い合せることになる。老いてなお花を咲かせる桜の木を見て湧き起るのは、よく長生きして美しい花を咲かせている、自分もあやかりたい、という感情である。ただ稀ではあろうが小林一茶の…

花の詩情(2/6)

生と桜 わが国では、入園式、入学式、入社式また卒業式も桜の咲く頃に行われる。国の年度初めまでがこの時期になっている。桜花は門出の象徴であり、日常生活もうきうきしてくる。 二日酔ひものかは花のあるあひだ 松尾芭蕉 眠たさの春は御室の花よりぞ 与謝…

花の詩情(1/6)

まえがき 桜(花)の誘発する詩情を、人の生老病死という四つの局面に則してみてみたい。 中国文化の影響が強かった奈良時代の和歌では「花」といえば「梅」をさしていた。その後、菅原道真の建言により遣唐使が廃止されて(894年)以降、国風文化が育ち徐々…

桜狩:大岡川プロムナード

近所のバス停・鉄砲宿の桜並木は今が見ごろ。 狼藉の目白をくるむ桜かな 電線が視界さへぎり満開の桜並木を見にくくしたり 天気予報を参考にして曇り空の日ながら出かけた。鉄砲宿からバスで戸塚駅に行き、そこから地下鉄で弘明寺駅に行く。大岡川は横浜市を…

ヘミングウェイと猫

どこのテレビ局の番組だったか忘れたが、フロリダ州キーウェストのヘミングウェイ旧居が博物館になっていて、そこに多くの猫が棲んでいるということであった。WEBで詳しく調べるとヘミングウェイは六本指の猫をもらい、「スノーボール」という名前をつけて可…

桜狩:衣笠山公園

暑くて寝苦しかった一夜が明けて朝日が空にでていた。昨夜の気候を考えると桜は一気に開花したはず、と心弾ませて桜狩に出かけた。案の定、遅いと嘆いていた鉄砲宿の桜は花開いていた。 衣笠山に行くことに決めたのは、二日前の情報で五分咲きと分っていたか…

灯台(2/2)

日本最初の洋式灯台は、明治2年(1869年)に点灯した観音埼灯台である。これについては既に2008年10月09日のブログでご紹介済み。 灯台の光り方には、代表的なものとして次の種類がある(Web参照)。 ☆不動光: 一定の光度を常時維持している ☆明暗光: 一定…

桜狩:小田原城

小田原城の天守閣は、明治維新で解体されたが、1960年に鉄筋コンクリートで再建された。今回、再建後56年で初の大改修を行った。耐震性を強化したほか、展示を刷新したという。 今年の桜の満開時期は予測が大変難しい。東京が真っ先に満開になり、周辺…

灯台(1/2)

灯台は、岬の先端や港内に設置される航路標識で光波標識の一種。世界的に見てその起源は、紀元前7世紀にエジプトのナイル河口の寺院の塔上で火を焚いたことにあるらしい。日本最初の灯台は、839年に復路離散した遣唐使船の目印として、九州各地の峰で篝火を…

雪の詩情 (2/2)

戦後の「雪」には、敗戦による屈折と内省から単純でないものが加わり、暗示的・象徴的な面が現れる。 白きうさぎ雪の山より出でて来て殺されたれば眼を 開き居り 斎藤 史 季語の本意は連歌の時代に盛んに議論されたが、里村紹巴(『至宝抄』)は、それを都人…

雪の詩情 (1/2)

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪 のことかよ 穂村 弘『シンジケート』雪の語源(漢字の意味と日本語の読み)を考えさせられる歌である。現代漢字の「雪」は略字。元の古代漢字は、雨+ 彗で成り立っている。雨は天から水の粒が降っている様子を…

海峡

陸地によって狭められている海域が海峡。陸上生物の分布の境界となることが多い。「瀬戸」や「水道」という言葉を使う場所もある。音戸瀬戸とか浦賀水道とか。 しづかに、海峡をながめてゐると、夜は、この国土が ながれ動くやうでもある。 石原 純 海峡をへ…

ホシガラス

スズメ目カラス科ホシガラス属の鳥。山岳の針葉樹林帯に棲むので、山岳に行かない限りほとんどお目にかかれない。黒茶色の身体に白い斑点が星空のように散らばっている。そこに名前が由来する。松毬の実が主食である。特に北アルプスに棲むホシガラスは這松…

伊豆高原&城ケ崎

今回の伊豆高原の桜狩りは大失敗であった。天気予報、一か月前の宿の予約、人混みを避ける という3点から計画を立てるというやり方が当らなかったのだ。なんと肝心の桜開花が遅れていたのである。結局は伊豆高原駅から城ケ崎までバスに乗り、海岸沿いに歩い…