天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ゆりかもめ

チドリ目カモメ科の鳥。ユーラシア北部で繁殖、わが国には冬鳥として渡来する。都鳥は雅称であり、冬の季語。都鳥と言えば、『伊勢物語』九段・東下りからさわりの部分を引こう。 なをゆきゆきて、むさしのくにとしもつふさのくにとの中に、 いとおほきなる…

早春賦―横浜三渓園―

今年の観梅会は、2月11日から3月6日まで。土、日にはいくつかのイベントが催される。初音茶屋では、地面に切った囲炉裏で茶釜をかけて麦茶を煮ていた。それを囲んで熱い麦茶を御馳走になった。芥川龍之介は大正4年の初秋、ここでの印象を次の俳句に詠ん…

アオジ

スズメ目ホオジロ科の小鳥で、日本では本州中部以北の林で繁殖する。「あおしとど」とも。漢字で嵩雀や青鵐を当てる。写真の鳥は、近所の川に添う野道を歩いていて見かけた。チチチと鳴き、しかも緑がかっているので、幼い雀かと思ったのだが、この寒期にそ…

鑑賞の文学 ―俳句篇(13)―

降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男『長子』 [山本健吉]彼ははじめ「雪は降り」と置いて意に満たないまま推敲の結果このような上五にきまった。その時謡曲『鉢の木』の有名な「ああ降ったる雪かな」という文句が働きかけている。この「降る雪や」に…

ツグミ

ヒタキ科の鳥。秋、大群をなして渡ってくる冬鳥である。かつて霞網で大量に捕獲され食用にされたが、現在は狩猟対象から外されている。漢字で鶫と書く。渡り鳥らしい雰囲気が感じられる字である。 私の体のなかで啼くものがある、鶫だ、外は夜あけだ 前田夕…

鴫(しぎ)

シギ科の鳥の総称。仲間が90種もいる。一般にくちばしが長く、上下に曲る場合もある。日本では50種あまりが記録されている。日本で繁殖するものに、イソシギ、ヤマシギ、オオジシギ、アマミヤマシギ、アカアシシギの5種類があるという。『日本動物歌集…

尉鶲

ジョウビタキはヒタキ科の鳥。冬鳥として日本に渡り、林のふちや農耕地にすみ、市街地でも見られる。雄も雌も一羽一羽が縄張りをもち単独ですみ、あまり人をおそれない。頭をぴょこりと下げ、尾をふる習性がある。右の写真は雌のジョウビタキだが、カメラを…

鑑賞の文学 ―短歌篇(13)―

村田耕司さんの歌集『十年贈歌』を読み終えた。前半部と同様、後半部にも分らない歌がいくつもある。その中から例を二首あげて、ともかく解釈してみる。 「大岡の月」観にゆけり三鷹まで中央線に小舟をのせて けふ一日もさびしいですね 油屋の酒蔵角を折れる…

コゲラ

キツツキ科の鳥で、日本産キツツキ類の中で最小の鳥。全国の低い山の林に棲む留鳥である。嘴で木をつついて虫を食べ、穴を開けて営巣する。ギーッ、ギーッ と鳴く。 以下には、啄木鳥(キツツキ)を詠んだ歌もあげておく。 枯山のしろき木膚を啄木鳥は火も出で…

早春賦―里山―

早春の里山では、いろいろな冬鳥を見ることができる。藤沢の新林公園では、コゲラを間近に見た。横浜舞岡公園では、鶫、山鴫、翡翠、尉鶲(じょうびたき)などに出会えた。最近、BSテレビでは、日本各地の里山の四季を紹介しているので、更に多くの生物を知…

ひいらぎ

モクセイ科の常緑小高木。漢字では、柊と表記する。福島県以南から九州の山地にはえる。節分に柊の枝と鰯の頭を戸口にさして悪霊の侵入を防ぐという風習が、わが田舎(広島県の山奥)でも見られた。 世田谷の奥の霜道ひひらぎの古き並樹に白き花咲けり 今井…

辛夷のつぼみ

辛夷(こぶし)はモクレン科の落葉高木。つぼみが開く直前の形が、子供のにぎりこぶしに似ているところからこの名前がついたという説あり。古名は、やまあららぎ。 くぐもりのみづみづしきを刺して立つ辛夷さながらにいまだも 冬樹(ふゆき) 岡部文夫 やうや…

こゆるぎの磯

神奈川県小田原市の大磯から国府津にかけての海岸で、有名な歌枕。よろぎの磯、よろぎの浜、こよろぎの磯、こゆろぎの磯、ともいった。そして、「こゆるぎの」は磯にかかる枕詞になった。この歌枕を詠んだ歌を以下に集めてみた。大磯町郷土資料館作成の配布…

早春賦―下曽我―

久しぶりに訪ねた。JR国府津駅で御殿場線に乗り換えるかバスでゆくのだが、そのどちらも三十分以上待つことになる。しびれを切らして歩くことにした。菅原神社、宝金剛寺、一徳寺、別所梅林、原梅林、城前寺、宗我神社、中河原梅林とたどった。白梅が目立…

鑑賞の文学 ―俳句篇(12)―

鮒ずしや彦根が城に雲かゝる 与謝蕪村 [萩原朔太郎]夏草の茂る野道の向こうに、遠く彦根の城をながめ、鮒鮓のヴィジョンを浮かべたのである。鮒鮓を食ったのではなく、鮒鮓の連想から、心の隅の侘しい旅愁を感じたのである。「鮒鮓」という言葉、その特殊…

椋鳥(むくどり)

むくどり科。全国に分布。平地から低山の林にすみ、木の穴、人家の屋根や戸袋の隙間などに巣を作り、青い卵を産む。群れなして、じゃーじゃー鳴きながら空を渡る様は、まことに不吉である。街路樹に群れると糞害になるし、桃、柿、蜜柑などをついばまれて困…

鑑賞の文学 ―短歌篇(12)―

伝説や歴史の登場人物を主題にして短歌を詠む試みは、戦後の歌人が挑戦している。例えば、塚本邦雄(「水銀傳説」)、山中智恵子(『虚空日月』)、馬場あき子(「頼朝の秋百首」)など。最近では、水原茜さん(短歌人所属)の歌集『ペルセフォネの帰還』も…

栴檀(せんだん)

落葉高木の栴檀は、古名を樗(おうち)(あるいは楝)と言う。四国から沖縄にかけて沿海地に自生するらしい。5,6月になると、若枝の葉腋から花茎を出し、淡い紫色の五弁花を多数、円錐状に開く。果実は冬になって黄熟する。その実は薬用になる。また材は家…

シジュウカラ

四十雀は、鳥類スズメ目シジュウカラ科シジュウカラ属の一種。留鳥。頭と喉が黒く、頬の白色がめだつ。大変活発に動くので、また近づいてカメラを構えるとすぐに飛び立つので、私のような素人の撮影は容易でない。安価なデジカメでは右の写真が精いっぱい。 …

梅の花

梅は、バラ科の落葉高木。中国原産で、上代に渡来。「むめ」「んめ」などとも発音した。万葉集には119首に詠まれている。その後の古典和歌にも数多く詠まれた。中でも菅原道真の歌は、教科書にも載っていて、あまりにも有名。 春もややけしきととのふ月と…

早春賦―熱海梅園―

熱海梅園では、蝋梅と白い野梅が満開であった。紅梅はまだ目立つほどではない。梅は桜と違って、満開になっても遠見には寂しい。今年から入園料をとるようになった。熱海市民でない一般の大人は、三百円。梅園の中を初川が流れているが、そこにいくつかの小…

水仙

ヒガンバナ科スイセン属の多年草。スイセン属には、房咲水仙、ラッパスイセン、ニホンズイセン、口紅水仙、糸水仙、笛吹水仙、八重咲水仙 など色や形の異なる品種が多くある。原産地は、スペインやポルトガルを中心とする地中海沿岸地域で、アフリカ北部まで…

水鶏(くいな)

鶴目クイナ科。冬鳥と夏鳥があり、キョッキョッという鳴き声を古来、「くいなが戸をたたく」と考えた。これは、夏鳥のヒクイナのことをいう。右の写真はクイナ科のオオバンで、相模川河口で見かけた。 おしなべて叩く水鶏におどろかばうはの空なる月もこそ入…

木瓜(ぼけ)の花

中国原産、バラ科の落葉低木。庭木、盆栽、切花などに栽培される。花の色には、鮮紅、淡紅、白、紅白などがあるというが、今迄に深紅しか見たことがない。 古木瓜を咲かせて陶師沈寿官 清崎敏郎 腹空けばそのことばかり更紗木瓜 八木林之助 いとけなき木瓜が…

鑑賞の文学 ―俳句篇(11)―

去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子 [山本健吉]昭和二十五年十二月二十日作。新年放送のために作られたもの。・・・旧年・新年を通しての一つの感慨が、「貫く棒の如きもの」という表現を生んだ。・・作者の感慨が、・・具体的なイメージとして提出される…

鑑賞の文学 ―短歌篇(11)―

斎藤茂吉『白き山』の歌から。次は、昭和二十二年に詠まれた。 健康のにほひしたらむ楽しさよ平安初期のその肉欲も 「山上の雪」 この歌を一首だけ提示されたら鑑賞に戸惑う。茂吉が何を言いたかったのか、背景を知りたくなる。それが、塚本邦雄の『茂吉秀歌…

早春賦―片瀬・腰越―

片瀬漁港では、漁船で獲れた鰯、穴子、烏賊 などを朝市で売っている。自動車で乗り付けた人たちが並んで順番に買っていく。漁港内の水面には、海鵜たちがブイに止まって羽根を広げたり、水に潜って魚を獲ったりしている。その上空を鳶の群が飛んで、時折、海…

大根

古くはオオネ、スズシロと言った。なんともゆかしい名前。アブラナ科の一、二年生の野菜。中央アジアが原産という説あり。 死にたれば人きて大根煮(た)きはじむ 下村槐太 一夜寝て大根うまきおでんかな 長谷川櫂 いにしへはおほねはじかみにらなすびひるほし…