天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

わが歌集・令和四年「雲海」

折に触れて 七首 認知症に効くとありせば月ぎめで購入したりセサミン錠剤 「折れ枝に通行注意」の赤きコーンもみぢ深まる山の辺の道 いつも見る「ワタシが日本に住む理由」教へてもらふこの国の良さ MLBのテレビ中継見終はりて次にチャネルを国会中継 プ…

わが句集・令和三年「初茜」

宇宙にも初めと終り初茜 狗尾草(ゑのころ)や廃車のめぐりとり囲む 道の辺に思ひ出したり杜鵑草 けさカーテンに霜降の日差しかな 秋風の別れの声か楠の空 冬到来大樹の梢震はせて コロナ禍にまたも遠のく花見かな 家々の輝く丘や年あらた 撫で牛を撫でては…

わが句集・令和二年「日脚」

即位式経てあらたまの令和かな 乗り込めるバスの座席に日脚伸ぶ 枯葉ちる手づくりパンの店先に こも巻きの松を見下ろす天守閣 ふたつ垂れひとつ落ちたり烏瓜 収穫をことほがごと藁ぼつち 清水や花さく友禅着てあるく 掘り出だす蓮根積みて壁なせり 風寒しベ…

わが句集・令和元年「からす瓜」

はるかなる夕陽手前のからす瓜 ひさかきのはるか上なる銀杏かな 蜘蛛の囲の主人おどろく落葉かな ささがにのねむりをさます落葉かな あらたまの元号待つやあきつ島 自転車をおほかた隠す花八つ手 鉄砲宿さくら並木の東海道 窓外に干し柿を見る湯宿かな 銭洗…

わが句集・平成三十年「円位堂」

こゑ遠きつくつく法師円位堂 大山を望みてはるか稲架の朝 銀杏を炒る音高し鶴ケ丘 抹茶待つ小春日和の開基廟 木の間より枯葉ちりくるつづら折り 息切れて座る山路のもみぢかな 笹鳴きの声より近き姿かな いただきて夫婦涙す年賀状 息切れて座る山路のもみぢ…

わが句集・平成二十九年「古希の春」

あらためて過去振り返る古希の春 カーテンに猫がとびつく秋の風 墓ならべ藤村夫妻蝉しぐれ 頭に触れて風鈴鳴りぬ鴫立庵 米ぶくろ抱へて急ぐ秋の雨 観賞にたへて糸瓜の垂れさがる 鳩来り積める落葉を掻きちらす 大輪の黄なるダリアに満ち足りぬ 他愛無き言葉…

わが句集・平成二十八年「延寿の鐘」

秋風に延寿の鐘を撞きにけり 豊作や竹ロケットを打つ秩父 子供らが案山子を笑ふ畦の道 息切れて琵琶の阿弥陀寺もみぢ狩 見つむればふくら雀が首かしぐ 菜の花や路傍に夢のあるごとく 江ノ電や七里ケ浜に風光る 鎌倉や春日をこばむ牢格子 犬猫の慰霊碑かこみ…

わが句集・平成二十七年「力石」

ぎんなんを踏みて近づく力石 落葉掻終へたる庭の力石 帰りには大山豆腐紅葉狩 手前には火の見櫓や雪の富士 極月の客をくどくや人力車 園児らがあそぶ山頂花の雲 風待ちて凧の休めるたんぼかな 初春や蛸せんべいに人並ぶ 立春のひかりまぶしむ朝寝坊 山ふたつ…

わが句集・平成二十六年「団栗」

団栗の落下に怯む山路かな 天高しはるかに望む古戦場 電線を撓めて並ぶ稲雀 のり出して道に種吐く柘榴かな 泣きながら冬の橋くる勤め人 口に手にあまるめでたさ恵方巻 老犬が老人を牽く花の下 集まりてにこにこ笑ふすみれかな そのかみの村は湖底に山桜 飼ひ…

わが句集・平成二十五年「大道芸」

秋まつり大道芸も島に来て 実柘榴に怒りの顔のありにけり ジャンパーの袖に執着ゐのこづち 小吉の御神籤むすぶ紅葉かな 落柿舎の庭ひびかせて鹿威し 懸崖の真白き菊や天守閣 ひこばえや村社にふたつ力石 笹子鳴く道の右藪左藪 しきしまの大和は柿と青空と 掃…

わが句集・平成二十四年「盆提灯」

子らの絵や遊行通りの盆提灯 ゆく雲の影にくもれる稲田かな 鎌倉に風の声聞く萩の門 退職の身に新春の面映ゆき 稲穂垂れ東西南北威銃 ヤナップもカービィもゐる案山子かな 糸瓜忌や墓碑に没年月日なく 日蓮のをどる筆跡水の秋 凍蝶が日に羽根ひらく元使塚 大…

わが句集・平成二十三年「彼岸花」

彼岸花ひと夜ふた夜に茎伸びて 鵙啼いてはやなつかしき空の色 朝顔や藤村旧居の門を入る 大楠の精もらひたる御慶かな 魚跳ねて川面裂きたり炎天下 夏逝くや帆綱帆柱鳴りやまず 糸瓜忌や二百安打へあと七本 稲架あまた立ちたる谷戸の水車かな おしろいや松の…

わが句集・平成二十二年「運動会」

楽湧き来山のふもとの運動会 猫柳黒田清輝の湖畔なる 実ざくろの笑ひひろがる梢かな 干柿の影のつらなる障子かな 門前の日曜画家や石蕗の花 蜘蛛の囲の虫の亡骸日に揺るる 山門の燈籠かげる紅葉かな 首筋に剃刀当つる冬隣 漂泊の雲ひとつゆく冬隣 うち寄する…

わが句集・平成二十一年「花芒」

蟷螂の幼きが斧ふりあぐる 秋風や「寂」一文字の谷戸の墓 釣れざればねころぶまでよ花芒 もみづりのはじまる富士の裾野かな 弟にライダーの面七五三 大寺の甍を濡らすもみぢかな 竹林に朝日射しくる焚火かな 小春日の卵はこび来円覚寺 目の澄める子を褒む老…

わが句集・平成二十年「透きとほる」

鳴くほどに身の透きとほる法師蝉 三頭の乳牛を飼ふ曼珠沙華 ぎんなんのおもたく落ちて地にほふ さまざまの身なりにならぶ案山子かな 初春の光の海の片帆かな 石榴垂る人間魚雷の残骸に 地に落ちてつぼむ花なり酔芙蓉 穂芒やSLを待つカメラマン 丹沢の山並…

わが句集・平成十九年「日の斑」

川沿ひに滝を目指せる紅葉かな 笹子啼く実朝政子墓の前 秋雨や大樹を小鳥棲みわけて 蟷螂の若きが泳ぐにはたづみ 秋風の釣果を競ふ魚拓かな 日の丸の風に散り交ふ銀杏かな 冬きたる広場に消防音楽隊 居眠るや電車の床の冬日差 里山の日の斑にひろふ木の実か…

わが句集・平成十八年「滝口」

滝口の見えざる山のもみぢかな ヘリコプター秋の朝日を侵したり もみぢ(五句) 白菊に絹のひかりのありにけり 白鳩のむつめるさくらもみぢかな 池の面の落葉分けゆく背鰭かな 焼き芋の声昼時のオフィス街 銀杏ちつて足裏にやさし九段坂 石仏の首みんなとれ…