天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

広辞苑によれば、門には七つの意味がある。 1.家の外構えに設けた出入り口 2.物事の出入・経由する所 3.師について教えを受けること、その仲間 4.物事の分類上の大別 5.家がら 6.生物分類上の一階級 7.大砲を数える語 以下の歌はいずれも1の…

川(4)

日本の三大河川といえば、信濃川、石狩川、利根川であろう。また大雨で氾濫する川は、暴れ川と呼ばれ、人間並の名前がついていた。利根川は坂東太郎、筑紫川は筑紫次郎、吉野川は四国三郎 といった具合に。現在こうした河川には多くの箇所にライブカメラが設…

川(3)

河川の管理は「河川法」によってなされる。国土交通大臣が管理する河川を「一級河川」、都道府県知事が管理する河川を「二級河川」と呼んでいる。平成13年4月時点で、わが国には、一級河川が13,979個、二級河川が7,071個 ほどある。(日本河川協会発行『河川…

川(2)

鴨長明『方丈記』の書き出しの部分は、川が多くの人の心に喚起する情感をみごとに書ききっている。 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。 よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、 久しくとどまりたるためしなし。 世の中にある人…

川(1)

川、河に関係する歌語はいろいろある。いくつかあげておく。 川の瀬、川瀬: 川底浅く流れの早い所 滝川: 岩にせかれて流れの激しい所 川隈: 川の曲がる所。 川合: 川と川の合流点 涙川: 涙が多いのを川にたとえた 昔見し象(きさ)の小川を今見ればいよよ…

滝平二郎のきりえを詠む(2)

滝平二郎(1921年― 2009年)は、茨城県出身の切り絵、版画作家である。1970年から1977年にかけて朝日新聞・日曜版に連載した独自の切り絵で広く世に知られるようになった。故郷の思い出らしき絵は、見る人誰にも共有できる懐かしい情景であり詩情にあふれて…

滝平二郎のきりえを詠む(1)

朝日新聞に連載された作品集『滝平二郎きりえ画集』講談社(著者肉筆署名入り)をアマゾンで購入し、一部を俳句・短歌に詠んでみた。姉弟、父母、第三者の筆者 どの立場で詠むかにより口調が変わってくる。 姉ちゃんに背負われて見る彼岸花 下駄の緒が切れて…

目薬

眼病の予防・治療のために眼に滴下する薬。現代ではほとんど用いられないが、賄賂に使う小量の金品を比喩することも。「目薬を利かす」とか。 目薬の一滴をさししばかりにてわが目は水のかたまりとなる 岡崎康行 目薬のしづくをふかくたたへたる近江(おふみ)…

洗濯機

機械なので動力が必要。手や足に頼る人力にしても他に何らかの機構がなければならない。水力を使う場合には、水車の中に洗濯ものを入れて、小川の水流で廻して洗う。これは立派な洗濯機である。ただここでは、電気洗濯機に限ることとする。これは1908年にア…

携帯電話(2)

2001年に日本で世界に先駆けて3G (W-CDMA) の商用サービスが始った。テレビ電話が可能となったほか、パソコンと接続して高速なデータ通信も行えるようになった。またインターネットへのアクセスが可能になった。2007年からは更に進化し、パソコンとの差異が…

携帯電話(1)

百科事典によれば、1987年にNTTが実用化した無線電話サービスが始まりであった。すでに実用化されていた自動車電話を携帯できるようにしたもの。電話機からの電波は基地局を経由して、別の電話につながる。アナログ式からデジタル式へ、回路のIC化…

冷蔵庫

日本では1907年ころに家庭用の氷冷蔵庫が発売され、1960年代まで使われた。ここから氷庫という呼び名も出た。広く普及し始めるのは電気冷蔵庫が出てからである。冷凍室も付いてからは、冷凍食品が家庭用に売られるようになった。 かすかなる顫音起る血清と葡…

櫛(2)

切り込みと切り込みの間の部分は歯と呼ばれ、歯に髪を通すことで髪をとく、挿し櫛として簪(かんざし)と同じように髪を飾るといった用途がある。古くはダニ・シラミ・ノミといった吸血虫やふけ・埃などを取り除く衛生用具であった。 髪とめし櫛をはづしてねむ…

櫛(1)

髪を梳いたり髪の飾りにする道具である。わが国では縄文時代から使われていたという。古来、魔よけの呪具、婚姻の象徴などとされ、もらったり拾ったりすることを忌む風習があった。ツゲ材が良質とされた。江戸時代以後は華美な品が流行、金、銀、べっ甲、象…

 鏡(4)

現在一般に用いる鏡は、硝酸銀溶液をガラス板に塗って銀膜を作り、四三化鉛で保護する。理化学用や反射望遠鏡、バックミラーには銀、アルミニューム、鉛などを真空蒸着する。平面鏡、凸面鏡、凹面鏡がある。 ありありと鏡のなかにくれなゐの炎を見たりわれの…

鏡(3)

鏡に自分の像が映るという現象は、古くから神秘とされた。そこから先ず祭祀の道具として扱われた。鏡が世界の「こちら側」と「あちら側」を分ける面として捉えられ、鏡の向こうにもう一つの世界があるという観念は世界各地の文化に見られるらしい。 鏡に映っ…

鏡(2)

中国系の鏡は円形で背につまみがある。青銅、鉄などを材料としているが、時代によってそれぞれの特徴を持っている。背に付けられた文様には神獣、画像など種々あり、唐代には海獣葡萄文鏡、騎馬狩猟文鏡などもある。わが国では弥生時代や古墳時代の遺跡から…

鏡(1)

穏やかな水面に映る自分の影を自分のものと認識できるのは人間だけであろうか?オランウータンなどの類人猿ではどうか?鏡がないとわれわれは自分の顔の状態を詳しく知ることは難しい。手で触ってみるしかない。鏡は姿見の道具として用いられただけでなく、…

子規を詠む(3)

子規の墓というか正岡氏累世墓が田端の大龍寺にあることは、2011年10月27日のブログで紹介した。地方で生まれ育ったが、後に都会に出て来てそこが生活の中心になり、故郷には近しい親戚もいなくなったために、累代の墓地を都会に移したという例は、明治以降…

子規を詠む(2)

子規は文章の革新にも意欲を示した。すなわち写生文の提唱である。 「ことばを飾らず大げさな表現を加えず、ただありのまま見たままに事物を模写することが、おもしろい文章を作る方法である。」 「感動の中心点をとらえ、写生するものとしないものを選ぶこ…

案山子、鳴子、鳥威し

漢字の「案山子」が意味するものは、山中の平地(案山)に立つ人形のことで、中国の禅僧が用いた言葉という。一方「かかし」あるいは「かがし」は、焼いた獣などの肉を収穫時の田畑に立てて、その匂いを鳥獣にかがせて近づけないようにした仕掛けのことであ…

籾(もみ)

稲穂から掻き取った脱穀前の殻つきの米のことである。広島の山奥に住んでいた小学生の頃、「千歯」と呼ぶ足踏み式の機具で稲束から籾を掻き落す作業を手伝ったことがある。 地下足袋の破れより入りし籾粒が籾かつぐたび足裏(あうら) に痛し 小西久二郎 籾播…

秋ふかむ

里山では稲刈りが済んで、稲架(はざ)があちこちに立っている。民家の庭には脱穀した後の籾が干されている。それらには皆網がかぶせてあって雀たちが近づけないようにしてある。だがそんなことでは雀はあきらめない。網の目から嘴を突っ込んで籾をついばむら…

子規を詠む(1)

子規は35歳で亡くなった。その短い生涯で現代の短歌と俳句の先駈けをなした。病床にあっても意欲は衰えなかった。明治維新以後、日本の政治・経済・文化のすべての面で革新の気風がみなぎっていた。特に地方の若者たちのエネルギーはすばらしかった。子規…

泥鰌(続)

「どじょう」の旧かな正字は「どぢやう」だが、江戸時代には、「どぜう」と書いた。この習慣は現代の旧かな使いにも残っている。また漢字では「鰌」一字を当てることもある。浅草の「駒形どぜう」は有名。柳川鍋は、天保の初め頃評判になった江戸の「柳川」…

泥鰌

ドジョウ科の魚。日本全土、朝鮮半島、中国、台湾などに分布。水田、沼、溝などの泥底に棲んで、有機物や小動物を食べる。条件が悪いところでは腸呼吸することもある。柳川鍋、蒲焼などにして食べる。養殖もおこなわれている。全身が橙黄色のものをヒドジョ…

薬師寺

普通は奈良にある法相宗の大本山を指す。他に栃木県河内郡南河内町にもあったが、現在は寺院跡のみ。奈良の薬師寺は天武天皇が后の病快癒を発願して建立に着手したが、天武の死後、後を継いだ后の持統天皇が藤原京に造営を進めた。その後の平城京遷都に伴い…

焼酎(続)

焼酎の歌は、2010年1月6日に取り上げたが、以下にはそれらと重複しない作品をあげる。戦後しばらくは、焼酎といえば安価低級な酒と一般に考えられていたが、高級な品質の旨いものが出ており、あなどりがたい。「焼酎」という表記と音韻がイメージを悪くして…

斎藤茂吉を詠む(3)

茂吉の短歌や足跡を研究した歌人は多い。塚本邦雄『茂吉秀歌』と小池光『茂吉を読む』は、私が熟読した本であった。茂吉が滞在した場所は、国内外に多い。国内の場合、歌碑が建てられたりしているのでわかりやすい。私は山形県上山市の茂吉記念館、箱根強羅…

斎藤茂吉を詠む(2)

結社「アララギ」の下で茂吉の指導を受けた大勢の弟子たちがいたこと、また茂吉の歌に心酔した多くの歌人たちがいたことも、茂吉がよく詠まれる由縁であろう。 恵まれて雲のかげもなき蔵王山頂茂吉の歌碑は聳えてありき 吉野昌夫 寝ねぎはに読みつつさみし戦…