天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

死を詠む(18)

ああ人は遂に死ぬると思ひつつ寂(しづ)やかに降る雪を見てゐる 犬飼志げの 美しき死などかなはず苦しみておとろへ果てて人は死にゆく 犬飼志げの 死はそこに抗ひがたく立つゆゑに生きてゐる一日(ひとひ) 一日はいづみ 上田三四二 死の側に影をひきつつ生くる…

死を詠む(17)

かくばかり心たひらに毒をのみ人死にゆけば安からぬかも 橋本徳寿 わが命あるひは旅に死なめども今宵見る月は吉備の海の上に 橋本徳寿 さるすべり今年花さく晩夏なり死をあなどりてどこまでゆけるか 岡部桂一郎 「かなかな かな」死はなつかしき声で鳴く 近…

鎌倉探訪―土牢跡

鎌倉の土地の成り立ちもあってか、土牢がいくつもある。護良親王が幽閉された東光寺の土牢(鎌倉宮)、日朗が監禁されていた土牢(長谷・光則寺)、日蓮が龍ノ口法難の際に幽閉されたとされる土牢(片瀬の龍口寺)、悪七兵衛景清が幽閉された化粧坂下の牢、…

死を詠む(16)

みずからのついの座軸に死ぬがよきたかだか五尺のこの身かがまる 山田あき 私が死んでしまえばわたくしの心の父はどうなるのだろう 山崎方代 われ死なば一人とならむ妻のことおもひていのち励ますわれは 安田章夫 死を超ゆる方途たまはざりしかば今の現(うつ…

死を詠む(15)

単衣(ひとへ)きて心ほがらになりにけり夏は必ずわれ死なざらむ 長塚 節 死ぬ者はすでに絶えたるわが家もあぢさゐ咲きて心喪に入る 富小路禎子 死ぬという大仕事だれも残しつつ春は桜花の下にて笑まう 本土美紀江 死ぬるとき生まるるときに日柄など思ふ人なし…

死を詠む(14)

夜の萩白くおもたきみづからの光守れり誰か死ぬらむ 河野愛子 死に去んぬ死に去んぬ灰に作(な)んぬといふものを うすくれなゐの心もてよむ 河野愛子 男の死女の死そのつひの舌の凍ゆる闇を思ひつめつも 河野愛子 死にすればかく絶えまなき沈黙か一人行くうへ…

死を詠む(13)

大といふ字を百あまり砂に書き死ぬことをやめて帰り来れり 石川啄木 苦しければ死なむと思ひたちまちにこころよければ癒えんと思ふ 三ヶ島葭子 迫り来る蘇軍重囲のまぼろしに身は死にがたく子を抱く妻 山本友一 死ののちもかの老人は尾根行けり頬かむりして…

死を詠む(12)

人の死ぬガラス戸のそと日は射して猫の交(つる)むをわれは見てゐる 滝沢 亘 わかさぎは卵をとられ死ぬといふみづうみに聞く春の叫喚 北沢郁子 死ぬときはこんなものかと救急車の固きベッドにゆられ目を閉づ 坪井 清 眠りしまま死んでしまひし父のこと何とい…

死を詠む(11)

なんにしてもあなたを置いて死ぬわけにいかないと言う 塵取りを持ちて 永田和宏 ポケットに手を引き入れて歩みいつ嫌なのだ君が先に死ぬなど 永田和宏 朝と夜をわれら違えてあまつさえ死の前日に死は知らさるる 永田和宏 君が死の朝明けて来ぬああわれは君が…

死を詠む(10)

殷々と夜空を迫るとどろきに死すべきたれかまた選ばれし 小野茂樹 丁寧に咀嚼してゐし老人の死は痕もなく冬晴れつづく 小野茂樹 母は死をわれは異なる死をおもひやさしき花の素描を仰ぐ 小野茂樹 死をうたふうたみづみづしとほざかりゆく少年期・幼年期の朝 …

死を詠む(9)

朝のひかりにひろく見えゐる机あり少年は眼鏡を置きて死にたる 遠山光栄 未明の雪ふみ去(い)にし少年よ透明に透明になりて死にけむ 遠山光栄 人の死を聞くかりそめのことながら夜半に涙のあふれてやまず 坪野哲久 人の死を待つなどもってのほかにしてもって…

与謝野晶子展

横浜から「みなと未来線」に乗り、元町・中華街駅で下車、神奈川近代文学館を訪れた。久しぶりのことで、道順に迷うほどであった。特別展「与謝野晶子展」(3月17日〜5月13日)を見るためであった。(入場券を短歌人会の伊東一如さんから頂いていた。) この…

死を詠む(8)

亡き人をあしざまに言ふを聞きをればわが死のあとの はかり知られず 大西民子 死ぬ時はひとりで死ぬと言ひ切りてこみあぐる涙堪へむ としたり 大西民子 自らの死のために押す釦一つその感触を追ひて夜半ゐつ 高嶋健一 人死にしうすくらやみの皿の上卵黄一顆…

死を詠む(7)

われの死がかずかぎりなき人間の死になるまでの千日千夜 竹山 広 死ぬときは死ぬとかならず言つてよと泣きゆきし妻しづかになりぬ 竹山 広 劇中の死なれば人はうつくしき言葉をいひて死にてゆきつも 竹山 広 はつなつのゆふべひたひを光らせて保険屋が遠き死…

死を詠む(6)

一枚の筵の下にからだ延べ勝利のごとく死ぬるを見たり 香川 進 山峡ゆくだりきたりし木津川のたぎちはわれの死のときのこえ 香川 進 爽やけきひと世をねがえば地に落つる蜩のごと死なれぬものか 香川 進 天上の紺のしずけさすでにして止まれる時間に死はつな…

AIと短歌

最近AI(Artificial Inteligennce: 人工知能)の実用化が広い分野で話題になっている。私が25年前に執筆した『人工知能コンピュータ』(右画像に示す)では、もの(画像、物体、音声など)の認識技術が主要課題であったが、現在ではビッグ・データに基づく…

死を詠む(5)

うたがはず死ぬものはよし悲しみて踏絵に立ちしかぎりなき生 近藤芳美 死にて行く母を見て来し吾が妻か夜明けに帰り吾が名をば呼ぶ 近藤芳美 流血の後なおつづく集会にひとりの死の意味ゐいまだ知るなし 近藤芳美 地階の窓べにも流血あり追ひ撲たれ墜され死…

死を詠む(4)

なにか言ひたかりつらむその言(こと)も言へなくなりて汝(なれ)は 死にしか 斎藤茂吉 いのち死にしのちのしづけさを願はむか印度のうみにたなびける雲 斎藤茂吉 のど赤き玄鳥(つばくらめ)ふたつ屋梁(はり)にゐてたらちねの母は 死にたまふなり 斎藤茂吉 死に…

死を詠む(3)

命あらば逢ふよもあらむ世の中になど死ぬばかりおもふ心ぞ 詞花集・藤原惟成 ねがはくは花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月の頃 山家集・西行 死ぬとても心をわくるものならば君に残してなほや恋ひまし 千載集・源 通親 皆人の知り顔にして知らぬかなか…

これぞショータイム!(続)

ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平が現地時間4月8日(日本時間9日)のオークランド・アスレチックス戦に投手として2度目の先発登板した。三者連続三振で始まり打者19人に対して1人の走者も出さない完璧なピッチングを続けたが、7回1死から2番打者のマーカ…

死を詠む(2)

とへばいふとはねば恨(うら)む武蔵(むさし)鐙(あぶみ)かかるをり にや人は死ぬらん 伊勢物語 恋しとはたが名づけけむことならむ死ぬとぞ唯にいふべかりける 古今集・清原深養父 恋しきに命をかふるものならば死にはやすくぞあるべかりける 古今集・読人しら…

死を詠む(1)

旅にして物恋(ものこほ)しきに鶴(たづ)が声(ね)も聞えざりせば 恋ひて死なまし 万葉集・高安大島 かくばかり恋ひつつあらずは高山の磐根(いはね)し枕(ま)きて死 なましのものを 万葉集・磐姫皇后 今は吾(あ)は死なむよわが背生(い)けりともわれに寄るべしと…

桜狩りー円覚寺

円覚寺の拝観券の裏には、「禅のこころ」として、「大木に学ぶ」という一節が書かれている。 涅槃経には、涼しい大樹の下に坐れば自ずと煩悩が消滅すると説かれている。禅の修行も大樹のような人物になって世の中に木陰を作ってあげられるようになることを求…

桜狩りー大岡川

大岡川プロムナードは、昨年も訪れた桜の名所である(2017年4月11日のブログ)。今回はずいぶん早い時期になったが、満開で川には花びらが散っていた。 横浜の地下鉄ブルーラインで弘明寺駅で降り、大岡川沿いに下流方向に歩いて、岸辺の桜並木を見て歩いた…

桜狩りー鎌倉・長谷

鎌倉はどこを歩いても桜に出会える。極楽寺、成就院、御霊神社、長谷寺、光則寺 といつものコースをたどってみた。どこも桜は満開であった。長谷寺では駐車場に大型の観光バスが並んでおり、境内は外国人観光客で混み合っていた。特に東南アジアからの人達が…

これぞショータイム!

エンジェルスに入った大谷翔平は、先日投手として一勝目をあげたが、本拠地アナハイムに帰ってからインディアンズ戦で打者として見事な働きを見せた(現地4月3日)。指名打者として8番になった大谷は、初打席でスリーランを放ち、その後も二安打したのである…

桜狩りー県立三ツ池公園

京浜東北線の鶴見駅から新横浜駅行きのバスに乗り、三ツ池公園北口で下車。下の池、中の池、上の池の周辺を一周して桜や辛夷、桃などの花々の景観を楽しんだ。 神奈川県立三ツ池公園は、三つの池とそれを取り囲む樹林によって構成される面積約30ヘクタールの…

桜狩りー小田原城址

[はじめに]この桜狩りシリーズは、一週間あまり前のことと思ってください。 東京では桜が満開になった、というニュースが流れた。ならばもっと南にある小田原でも満開が近いはず、と考えて出かけた。予めWEBで開花状況を調べてみたが、例年のことが書い…

イチロー讃歌(12/12)

エイミー・フランツさん(2017年10月時点で46歳)は、もともとシアトル・マリナーズの大ファンであった。1996年から年間シートを購入し始め、20年以上毎年購入している。当初のお目当ては、J.ビューナー(1988〜2001マリナーズ)であった。彼が引退の年の200…

イチロー讃歌(11/12)

マーリンズに来てからイチローの代打は多くなったが、試合が始まる前にダッグアウトに入ってくると大声で派手なジェスチャーで選手やコーチたち一人一人とタッチを交わす。元気を出そうと自分をも鼓舞しているのだ。見ていて時に痛々しく感じる。これがルー…