天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集・平成三十年「円位堂」

       こゑ遠きつくつく法師円位堂

       大山を望みてはるか稲架の朝

       銀杏を炒る音高し鶴ケ丘 

       抹茶待つ小春日和の開基廟

       木の間より枯葉ちりくるつづら折り

       息切れて座る山路のもみぢかな

       笹鳴きの声より近き姿かな

       いただきて夫婦涙す年賀状

       息切れて座る山路のもみぢかな 

       水槽にエヒの笑顔や大晦日 

       駅伝や富士の冠雪まだらなる 

       復興を待てず見に行く桜かな

       力石見つけてうれし雪催

       けさ晴れて道に掻き出す塀の雪

       梅園を笑はせてをり猿回し 

       きさらぎの朝日まぶしむ熱海の湯 

       通院も三寒四温となりにけり 

       わが妻の白髪かなしむ桜かな

       見上げたる花のむかふに天守閣 

       太陽の笑みをもらひて福寿草

       凧ふたつ少年野球を見おろせる

       波の間に和賀江島跡月の影

       近況のメモ添へてある新茶かな

       見るほどに蕾ふくらむアマリリス        

       いただきし新茶に今日を始めんと 

       バスを待つ人影いくつ木下闇

       梅雨明けの前触れなるかつむじ風 

       バス待つや右手にメロンぶら下げて 

       青天の西につらなる雲の峰

       うな重を鰻供養と言ひて食ぶ 

       うな重をうなぎ供養と言ひて食べ

       墓地のみが残るふるさと雪が降る

       浜茄子の実や太陽の子を宿す 

       原爆忌いまだ原爆手放せず 

       一週間ごとに取り替へ夏帽子 

       台風も火星も大接近の空  

       あらたまの朝の鏡をまぶしめり

       老いたれば顔が気になる曼殊沙華 

       柿熟るる木の下蔭に駐車せり 

       地に垂れてとる人もなき熟柿かな 

 

マリリス