天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

運河(1)

文字通り物資を運ぶために造られた河。人工の水路でパナマ運河、スエズ運河など小学生でもよく知っている。ただ、歴史的経緯は奥深い。古代エジプトでは、ナイルデルタからスエズ湾に食い込む「ファラオの運河」が造られた。中国では、隋の煬帝が作った大運…

二十六聖人の足跡

一泊二日で長崎県・時津に出張した。(今日のブログのアップロードが遅れた理由です。)時間があれば大村のキリシタン処刑地を訪れたかったが、無理だった。その替りといっては変だが、時津港には「日本二十六聖人上陸の地」という碑が立っているのを見つけ…

カラス科カラス属の鳥の総称。日本には5種が見られるという。ハシブトガラス、ハシボソガラス、ミヤマガラス、コクマルガラス、ワタリガラス。後の3種が冬鳥として渡来。道端に出したゴミを食い散らし、だみ声で鳴きたてるので現代でも嫌われ者だ。しかし…

紅葉狩(2)

東京の多摩丘陵にも紅葉の名所がいくつかある。その内のひとつ百草園に行ってきた。京王線百草園駅から徒歩15分ほどの距離だが、顔に迫ってくるような急勾配の坂を登りきったところに入口があり、そこからさらに階段をのぼるので健脚にも息がきれる。丘陵…

紅葉狩(1)

野趣あふれる雅な日本語である。紅葉の名所を訪ね歩くこと。観世小次郎信光作の能に「紅葉狩」がある。舞台は信濃の戸隠。紅葉の下で美女たちが舞などして楽しんでいるところに、平維茂が通りかかって引き留められ、酒を振舞われて酔いしれる。女は恐ろしい…

時計

宇宙の誕生とはすなわち時間と空間の誕生であった。全ての生物は、時の移ろいを感じているのではないか。 日時計の発明は、紀元前約2000年頃。水時計や砂時計の発明は、紀元前1400年〜紀元前700年頃。文明発祥地においてである。わが国では、『日本書記』斉…

極楽寺駅

「緑と静寂のなか古風な雰囲気で風情とやすらぎを感じさせる駅」ということで、平成11年(1999)に関東の駅百選に選らばれた。江ノ電の稲村ケ崎駅と長谷駅の間にある。 駅前の坂を登って左手の極楽寺入る。境内の石垣のところどころに石蕗の花が、曇り空とは…

奈良時代(710〜784)に大宝令により官道に設置された「うまや」「うまやつぎ」が元になっている。駅は駅馬に乗り継ぐ意で、駅車、駅伝に繋がる。駅伝の制度は、中国では春秋戦国時代(紀元前770〜前221)にはすでにあったらしい。駅は旅と感情…

茶の花

茶は椿や山茶花と同じ椿科の植物。茶がわが国に渡来したのは、奈良時代であった。鎌倉時代以降に各地に広がったという。中国では漢の時代には飲用にされていた。初秋から冬にかけて白色五弁の花がうつむきかげんに咲く。 茶が咲けり働く声のちらばりて 大野…

はじめに言葉ありき(2)

近代の俳句や短歌では、客観写生が主流であった。つまり、初めに風物ありき、であった。これに真っ向から対立した行き方が、初めに言葉ありき、の作法である。その旗手として高屋窓秋をあげよう。彼は水原秋桜子の「馬酔木」に属しながら、吟行による句作は…

はじめに言葉ありき(1)

これは新約聖書のヨハネ伝、第一章、第一節の冒頭に出てくる言葉である。とりとめもない話になるが、文字の発明は、人類が言葉を使い始めてからはるか後のこと。最近アイヌのユーカラを読んでいる。また小林秀雄の『本居宣長』の講演CDを聞いている。小林…

大涌谷

箱根の大涌谷には、年に一回は訪れるのだが、今年は初めてである。もう紅葉の時期だろうと見計らって上ってみた。ただ、天気予報では晴れるといっていたのに、雨がぱらついてきた。紅葉はこれからが見頃といった状態であった。 箱根湯本から登山電車で強羅へ…

渓、たに。山と山の間のくぼんだ所。地学上の定義では、地表の隆起した部分の間の、狭く長くくぼんだ土地。 今日今日とわが待つ君は石川の谷に交りてありと いはずやも 万葉集・依羅娘子 光なき谷には春も外なれば咲きてとく散るものおもひもなし 古今集・清…

横浜港

この港に何を思うだろうか。童謡に「赤い靴」がある。作詞・野口雨情、作曲・本居長世で、横浜港を舞台に作られ大正十年(1921)に発表された。山下公園にこれを記念した女の子の銅像が置かれている。 横浜の はとばから 船に乗って 異人さんに つれられ…

藁塚

「藁ぼっち」と覚えていたが、刈り入れの終った田に脱穀したあとの藁束を積み上げたもの。にお。積み方は地方によって異なる。田畑の肥料や牛馬の飼料にする。秋の季語、にお(にほ)は傍題。 藁塚も屋根も伊吹の側に雪 橋本多佳子 藁塚が見えて目のふち痒き…

みなと、湊。これも大変美しい日本語である。辞書には、「水の門」の意で、川や海などの水の出入口とあるが、船が停泊する場所でもある。この言葉には個人にとってさまざまの情感がまとわり付いている。それは流行歌や小説あるいは映画を見聞きしたその時々…

藤袴

キク科の多年草で秋の七草のひとつ。全体に芳香がある。乾かすとさらによい香がする。漢名は、蘭草、香草、香水蘭など。わが国には、古く薬用として伝来した帰化植物と考えられているが、万葉集では山上憶良が秋の七草を詠んだ歌に現れているように、その頃…

由比ケ浜(2)

由比ケ浜に流れ込む小さな川がある。稲瀬川という。細々とした流れなのに、万葉集の原文で美奈能瀬河として出てくる由緒ある川なのだ。詠みは次のようになっている。 ま愛しみさ寝に吾は行く鎌倉の美奈の瀬川に 潮満つなむか 鎌倉駅から若宮大路を下り滑川の…

由比ケ浜(1)

鎌倉市内若宮大路に並行して流れる滑川が海に出るところの右手に広がる海岸である。左手に広がるのが材木座海岸。特に鎌倉時代に、由比ケ浜でいろいろな歴史的事件が起きた。静御前が産んだ義経の子を、頼朝が部下に命じてこの海岸に沈めて殺したこと、和田…

海や湖に沿った水際の平らな砂地。浦とどう違うのか、辞書を見ても地図を見てもよく分からない。実際に両者の現地に立って見比べても分からない。浜辺という言葉もある。よく知られた浜として、九十九里浜、七里ガ浜、吹上浜、弓ヶ浜 など。 秋風もまさごに…

青鷺(2)

青鷺はコウノトリ目サギ科。鶴とまちがえられるほどの大形のサギ。北海道では夏鳥、本州から南では留鳥あるいは漂鳥。高木の頂上付近に営巣し、沼沢地、水田、川などに下りてきて魚、ザリガニ、蛙などを捕食する。 なよなよと靄のなかよりあらはれて青鷺づれ…

葉鶏頭

熱帯アジア原産のヒユ科ヒユ属の一年草。葉の形が鶏頭に似ている。雁が飛来するころに葉が色づくので「雁来紅(がんらいこう)」ともいう。また「かまつか」とも。 葉鶏頭のいただき踊る驟雨かな 杉田久女 葉鶏頭ひぐれの声が駈けめぐり 加藤楸邨 かまつかや…

青鷺(1)

北鎌倉の円覚寺では、毎年、十一月一、二、三日に、宝物の風入と称して、所蔵の書画骨董を展示し、舎利殿内部を公開する。今年も大勢の観光客が訪れていた。以前に幾度か見ているので、今回はいつものように境内を散策するにとどめた。舎利殿門前横の池の縁…

鬼薊

あざみはキク科アザミ属の多年草の総称で、日本には70種くらいあるという。春から秋にかけて開花する。特に鬼あざみは、初夏から秋に濃い紫色の頭花をつけてうなだれる。あざみ、花薊は春の季語。これはよく見かけるノアザミを主体に考えたからであろう。 …

かもめ

カモメ科の鳥。都鳥、白鴎、背黒鴎、ゆりかもめ。万葉集には一首だけだが、「かまめ」と出てくる次の有名な長歌がある。俳句で都鳥(傍題として、ゆりかもめ)は冬の季語。 大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立つ…

田子の浦

静岡県富士市の海岸一帯。山部赤人の和歌に詠まれた歌枕である。万葉集の歌は次のようなもの。万葉仮名では、 田皃之浦従 打出而見者 真白衣 不盡能高嶺尓 雪波零家留 通常の表記では、 田児の浦ゆうち出でて見れば真白にそ不尽の高嶺に雪は降りける ところ…

海や湖が湾曲して陸地に入り込んだ静かな場所。一般に海辺や水際を指すこともある。 思いつくままにあげると、田子の浦、壇ノ浦、鞆ノ浦、鯛ノ浦、袖ヶ浦 など。 如何にある布施の浦そもここだくに君が見せむとわれを留むる 万葉集・田辺福麿 吾妹子が見し鞆…

鶏頭

熱帯アジア原産のヒユ科一年草。花が鶏のとさかに見えるところからの命名。英語でも同様。日本には万葉時代にすでに渡来していたといい、歌に出てくる「韓藍(からあゐ)」がそれらしい。花の色は、赤、紅、黄、白などと多様。私自身は、黄や白の花をまだ見…

トリカブト

中国原産、キンポウゲ科の多年草で観賞用に栽培される。この名はトリカブト亜属の総称としても使われるので、ヤマトリカブト、ホソバトリカブトなど山野に自生する種類が30ほどもある。アルカロイドを含み猛毒。アイヌは、トリカブトの根の汁を矢に塗って…

ヤビツ峠

神奈川県下にも有名な峠がある。足柄峠やヤビツ峠である。足柄峠については、過去にこのブログで触れた(例えば、2007年6月3日 夕日の滝)ので、今回はヤビツ峠について。漢字で書けば「矢櫃峠」となるらしいが、普通はかたかなで表記されている。この峠は、…