天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

わが訪れし芭蕉の足跡

江東区芭蕉記念館で、「おくのほそ道」のビデオを見ていた時、今までにどれだけ芭蕉の足跡を訪ねたか、ふと思いついてあげてみたくなった。芭蕉の紀行を意識して辿ったわけでないので、順不同にあげるとおおむね以下のようになる。 ★深川芭蕉庵跡 ★千住・草…

深川芭蕉庵跡(2)

深川の芭蕉庵跡の正確な位置は、よく分らない。杉山杉風の世話で生け簀の番屋を改築して最初に深川の庵(第一次芭蕉庵)に住んだのは、延宝八年(1680年)の冬であった。これが二年後の天和二年(1682年)十二月に、江戸大火で焼失する。一年後に友人知己の…

深川芭蕉庵跡(1)

テレビで深川の旨いもの店を紹介している番組を見て、久しぶりに深川に行ってみたくなった。 地下鉄東西線の門前仲町駅からぶらぶら歩いて富岡八幡宮、深川不動尊、清澄公園、芭蕉庵跡、芭蕉記念館などを巡った。相撲部屋が多い地区らしい。遅い昼食には、浅…

カンナ(続2)

開花時期は、 6月中旬から10月初旬の頃で、夏のあいだじゅう咲き続ける。花の色は赤、黄、橙、白などいろいろある。カンナの花言葉は、「情熱」「快活」「永遠」「妄想」。 想いしろく真夏の坂を登りゆき午後からはあかきカンナ になろう 糸川雅子 こんあ日…

カンナ(続1)

2009年7月28日の続きである。熱帯アメリカを中心に9種〜50種が分布する。日本には江戸時代前期にカンナ・インディカが渡来した(檀特(だんどく)と言った)。現在では河原などで野生化しているものがある。カンナはギリシア語で「葦」を意味するが、その草姿…

歌集『思川の岸辺』(10)

小池さんは、現代歌人ながら「あはれ」を気にせず使っている(実は内心では、使う場所に配慮している)。周知のように、「あはれ」には、名詞(悲しみ)、形容動詞(ふびんだ、感に耐えない)、感動詞(ああ)と、三つの働きがある。いずれに用いているかは…

歌集『思川の岸辺』(9)

従来の歌集では、小池さんの短歌の特徴は、副詞(句)の用法に顕著であるが、本歌集においても変わらず健在である。 トリニダード「三位一体」而(しかう)してトバゴは 「たばこ」 夕陽が赤い よろこびに満ちてふたりはただ居ればわが感情はしづか となりぬ …

歌集『思川の岸辺』(8)

従来の歌集にも共通するが、助詞・助動詞の使い方に古典和歌(特に万葉集)の継承と工夫(「を」「も」「は」「つ」「つつ」「に」「さへ」等々)が見える。例えば「を」の省略など新鮮。 それぞれに結婚をしてふたりの子めぐりを去りし 空しきものを 正座し…

歌集『思川の岸辺』(7)

擬人法にも注目した。哀憐と悲しみにつながっているようだ。 生まれてよりつひに笑はぬまま終る東土竜(あづまもぐら) の完全なるいのち 二階のベランダの手摺りに手をかけしのうぜんかづらを 憎むごとゐる 炎帝が没するまであと一時間 のうぜんかづらは花散…

ハチ公

2015年3月8日、東京大学農学部キャンパス内にハチ公と上野英三郎博士像が建った。除幕式では、東京大学大学院農学生命科学研究科長・古谷 研農学部長が挨拶をしたが、その中にハチ公と上野博士との関係が次のように、簡潔にまとめられている。 「秋田犬のハ…

歌集『思川の岸辺』(5)

この歌集は、奥さんを癌で亡くした悲しみが主題だが、小池さんの作品に共通するユーモア、ウィット、ペーソスで溢れている。副詞(句)や対句、比喩などの巧みな用法による。 海峡をいつとはなしに抜けしとき静かの海は ひろがりてをり 「ボナパる」といふ動…

歌集『思川の岸辺』(4)

次の注目点は、ひらがな表記の工夫が従来に増して目立つことである。和歌の雅さを感じる。近代以降の短歌では、ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、記号など組合せ表記が可能であるだけに、シンプルなひらがな表記の特徴がよく現れる。 さざんくわのゆふべ…

リヤカー

自転車の後ろに連結したり、人が引いたりして荷物を運ぶための2輪の荷車。大正10年頃、海外から輸入されたサイドカーとそれまでの荷車の主流だった大八車とを融合して作られた。金属製パイプと空気タイヤで構成される。日本人が発明した。リヤカーという名…

歌集『思川の岸辺』(3)

猫の歌は、『滴滴集』(2004)の38首を1首越えて39首ある。今回の歌集に最も多い。全542首の内、7.2%を占める。内15首を以下に紹介しよう。 ゑさ食はなくなりたる猫は診てもらひ虫歯のために 食はなくなりぬ バスタオルでぐるる拘禁しスポイトで抗生物質飲…

歌集『思川の岸辺』(2)

最初に注目したのは、従来の歌集に比べて、口語調の作品がかなり多いということであった。旧仮名遣いではあるが。 最後の靴二年半前買つたつきりそれからそれから いろいろの事 バケツに首突つこんで水飲んでゐるうしろすがたも しみじみ女猫 水飲みに行つた…

歌集『思川の岸辺』(1)

小池光さんの第九歌集である。刊行されてからすぐに購入して読んだ。今後、飛び飛びになるが10回程度にわたって、このブログで特徴を分析してみたい。 初めに短歌でどこまで私事・家族のことを表現するのか、ということを考えさせられた。現代歌人に例をとる…

鴨とアオサギ

久しぶりに藤沢・新林公園の里山を歩いてきた。ふたつある溜池のうち、手前の浅い方にはいつもは見かけない大きなアオサギが一羽佇んでいた。起伏の激しい尾根道は、運動不足解消にはちょうどよい。ところどころで紅葉が始まっていた。 池の面に立ちてはばた…

道のうた(8)

「みち」に当てる漢字には、道、路、径、途 などがある。この内、「径」は図形上の差し渡しの長さを意味している。また「途」は、旅の道すじを意味する。 くらやみに水の音する道端を這ふ集塵車うしろがさびし 篠 弘 おぼめける梨の花径細眉の匂うおみなが月…

道のうた(7)

道の性格は、「・・・道」ということで表される。鉄道、水道、石畳道、坑道、廃道、県道、野道 等々。 等高線青く列なる山の上索道は細くひかりつつ垂る 林 善衛 引きかへさむと思ふばかりの峻(さか)しき道保つは 親し古への道 吉田正俊 伐採の終りし谷の廃…

道のうた(6)

「人の道」という言葉がある。辞書によれば、人間として踏み行うべき道筋、人が人として生きてゆく上で遵守すべき規範 などと解説されている。「けもの道」は、物理的な目に見える道だが、「人の道」は、精神的な概念である。 紅梅の炎めきたる神の庭 生くべ…

道のうた(5)

山野において獣が通る道のことを「けもの道」と呼ぶ。山野を往き来する哺乳類にも、生活上の道があるのである。森林などでは、人間が開拓した林道と重なる場所もある。熊、猪、鹿などを狩る猟師や猟犬は、けもの道をよく知っている。 放心してわが佇(た)ちつ…

道のうた(4)

道の絵では、東山魁夷の名作を一番に思い浮かべる。青森県八戸市東部にある種差海岸にある道がモデルである。この絵を描いた頃の魁夷と日本の情況を知ると思いは深くなる。 「この作品の象徴する世界は、私にとって遍歴の果てでもあり、また新しく始まる道で…

道のうた(3)

ところで北海道は何故、北海県としなかったのか? 「道」というのは、律令国家の地方行政の基本区分で、起源は古代中国である。天武朝は、日本を五畿(山城、大和、河内、和泉、摂津)七道(東海道・東山道・北陸道・山陰道・山陽道・南海道・西海道)に区分…

道のうた(2)

大化改新の詔で制定された「七道駅路」が、わが国に国道が作られる端緒であった。すなわち東海道・東山道・北陸道・山陰道・山陽道・南海道・西海道である。これらは官道であり、現代の2車線〜4車線幅の堂々たる道だった。 かりそめの行きかひ路(ぢ)とぞ思…

道のうた(1)

辞書によれば、道が意味するものには、(1)人、獣、車などが往来する所、道路。 (2)距離、道のり。 (3)途中。 (4)人の行うべき義理、道徳。 (5)手段、方法。 (6)教え、教義。 (7)方面。 (8)すじ道、条理。などがある。 後(おく)れ居て恋ひつつあらずは追ひ及(…

狐(3)

「狐の嫁入り」という言葉もある。天気雨、日照り雨のことをさすが、この矛盾した気象現象を狐火のように妖しいと捉えたもの。狐火は、火の気のないところに、提灯とか松明のような怪しい火が一列になって現れ、ついたり消えたり、別の場所に現れたりするも…

狐(2)

きつねは霊獣として親しまれ信仰の対象にもなった。また洋の東西を問わず頭が良く人を騙すといわれる。そして稲荷明神の使いともされる。童話や伝説によく現れる。「狐につままれる」「キツネうどん」「きつね目」などの熟語もある。 冬ちかく夜霜はいまだ降…

狐(1)

古名は「きつ」。日本全土に分布する。夜行性、肉食イヌ科。日本の野生狐には、アカギツネの亜種ホンドギツネと北海道の別亜種キタキツネがいる。世界的には、棲息地域の名前のついた狐の種類がある。またオオミミギツネ、カニクイキツネなど身体的特徴や食…

名月(3)

満月の夜には、次のようなおまじないをする風習もあるようだ。詳しいことは分らない。 ・満月水を置く ・体にいいものを取り入れる ・願いを引き寄せる ・財布を振る ・いらないものを手放す ・パワーストーンのチャージ ・恋愛運のアップ 動くものなき満月…

名月(2)

満月は引力が最も強くなり、海では満潮になる。人体は、約70%が水でできているので、満月の影響が出るようだ。例えば、満月のときは出産が多くなる。また出血が多くなるので、手術はひかえるという話も。 生死のけじめはないよなんとなく猫いて大き満月が…