天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

新緑の震生湖(1)

秦野市渋沢丘陵の狭間にある震生湖(しんせいこ)は、文字通り大正12年の関東大震災の時に生れた湖である。丘陵の一部が崩壊し、その土砂が谷川を堰き止めてできた自然湖である。主湖盆と副湖盆から成っている。海抜150mのところにあり、周囲1km、…

五浦海岸(2)

27歳で東京美術学校(現東京芸術大学)の校長となった岡倉天心は、1898年に日本美術院を設立、1906年五浦の地に移した。横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山などが日本画の創作活動をした。彼らは五浦にそれぞれの邸宅を構えた。天心の旧居宅と六角堂を…

五浦海岸(1)

西山荘を訪ねた後、水戸駅に引き返し、常磐線で北上して大津港駅に行く。五浦観光ホテルに電話して迎えに来てもらった。 五浦海岸(いづらかいがん、いつうらかいがん)は、茨城県北茨城市五浦にある景勝地である。小五浦、大五浦、椿磯、中磯、端磯という五…

西山荘(せいざんそう)

連休の初めに、上野駅から特急に乗り、水戸駅に行き、水郡線で常陸太田へ。そこからはタクシーで西山荘に向かう。 西山荘は、水戸二代藩主徳川光圀が、晩年を過ごした隠居所である。元禄四年(1691)正月に江戸城を出て、元禄十三年(1700)十二月六日に没す…

三椏の花

ちょっと花の時期を過ぎたが、みつまたについて。中国原産のジンチョウゲ科の落葉低木。わが国には随分昔に入ってきたらしい。楮とともに紙の原料として栽培され、花を愛でて庭にも植えられる。葉の出る前に花が咲く。 みつまたの花を見に出よ。みつまたのさ…

さざえ

リュウテンサザエ科の巻貝。角がでてくるものは、外海に棲む種類であり、内海に棲むものは角がないという。手軽でもっとも一般的な食べ方は、壷焼き。春の季語であるが、何故なのか、よくわからない。雛祭に供え物として欠かせなかった、というところからで…

たんぽぽ

キク科の多年草。日本には約10種が自生し、2種が帰化しているという。カントウタンポポ、カンサイタンポポ、トウカイタンポポ、エゾタンポポ、シロバナタンポポ、セイヨウタンポポなどと呼ばれる。たんぽぽとは面白い名前だが、その由来には、綿を布でく…

引用符

広辞苑の説明では、次のようになっている。 文中で、他からの引用であることを示す符号である。強調・解釈、また「いわゆる」などの意を表すのに用いる。和文では、「」『』、欧文では“”‘’などで、引用した語句を囲む。 短歌では、割と気にせず用いられるが…

富士を詠む

先月のことになり恐縮だが、春分の日と翌日を岡崎に遊んで土曜日、快晴の昼を小田原に向けて帰ってきた時、新幹線の車窓に現れた雪解けの富士の姿に愕然とした。見る角度によるのだろうが、老いて形も崩れている。近くの人が、「富士山も老いたなあ」とつぶ…

さくら草

学名のプリムラでも知られるサクラソウ科の多年草。北半球全体に250種もあるという。わが国では江戸時代から観賞用に栽培されている。色は、紅、紫、白など。 実は、逗子市の国際村が躑躅の名所なので、満開を期待して訪ねた。ここは一昨年、短歌人の夏季…

茅の輪

江ノ島辺津宮には何故か真新しい茅の輪が置かれていて、人々が盛んにくぐっている。六月三十日や七月三十一日に行う名越の祓の際に置かれるはずだが。 まばたきはシャッターとなり吾を見る蔓の きれはし咥へて鴉 断崖を削りて建てし墓場にも花供へあり年ふる…

『天平の水煙』

高野公彦『天平の水煙』がやっと入手できた。第1版が売り切れ、第2版を待っていた。「あとがき」に書いているように、日本の懐かしい言葉を意識しながら歌を詠んだ、という。かつて古典とか諺とか落語などに登場し、いま滅ぶようとしている言葉である。さす…

紫雲英

げんげ、と読む。げんげん、とも言う。角川の歳時記を見ると、次のように説明されている。 中国原産でマメ科の越年草の蓮華草のこと。春の草花として最も親しまれている植物の一つ。かつては緑肥として、刈り終った稲田で広く栽培されていた。 げんげ野を来…

洒水(しゃすい)の瀧

今回はひどい目にあった。何度も行ったはずなのに御殿場線の下車駅を間違えた。山北駅で下車すべきをひとつ手前の東山北駅に降りたのだ。改札口はなく、しかもスイカカードで来たために、後の精算がややこしくなった。 足柄層の隆起に伴って生じた裂線を浸蝕…

黄華鬘

「きけまん」と読む。華鬘草という呼称は、花が多数並んで垂れ下がる状態を仏殿装飾の華鬘に見立てたところからきている。 にんげんに関心持たぬ黄華鬘(きけまん)の小さき 唇(くち)の花ばなそよぐ 伊藤一彦 雷雨去り凪(な)ぎてゆくなりわたくしも卓の…

ワシタカ科の留鳥で、全国に生息。公園などで弁当を食べていると空から急降下してきて奪い去ることがある。「鳶に注意」の看板をよく見かける。 大き鳶たわたわと来て過ぎるとき穂に あざやけき丹波栗の花 北原白秋 安房のくに布良の海べの宿にきて冬夕ぐれ…

勝龍寺城

勝龍寺城が築かれたのは、室町初期。戦国時代に織田信長からこの城を与えられた細川幽斎が入城し、城郭に作り上げたという。明智光秀の娘・玉、洗礼名ガラシャが幽斎の嫡男・忠興に嫁いだ時の城である。天正一〇年(一五八二)の山崎合戦で、明智光秀が城に…

醍醐の花見

久しぶりに京都で旅館に泊まった。部屋にはトイレも浴室もなく共同である。廊下を歩く音や二階の部屋の話し声が一階の部屋に聞こえる。空調機もテレビも古く操作がまともにできない。夫婦だけでやりくりしている様子。女将は若かりし頃祇園の芸妓であったか…

ネコノメ草

ユキノシタ科の多年草。山地の湿地にはえる。名前の由来は、果実の様子を瞳孔を細く開けた猫の目に見立てたところから。枝が地上を匍匐し、茎は5〜20cmになる。茎の頂に数ミリの花を開く。日本には近縁種が14種もあるという。 幾たびもシャッター切れ…

糸桜

彼岸桜の一品種の枝垂桜で、福島県三春の瀧桜、京都の祇園枝垂れなどが有名。枝垂桜を詠んだ現代短歌では、次の歌がよく話題になる。結句が秀逸。 夕光(ゆふかげ)のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝(かがやき)を垂る 佐藤佐太郎 神奈川県二宮の吾妻…

山吹の花

バラ科の落葉低木。一重のものは山野に自生するが、八重のものは庭園で栽培される。八重咲きは花期が少し遅い。万葉集の時代から和歌に詠まれている。特に、井手の玉川、蛙、山吹の花の取り合わせが定番になった。井手は、京都府綴喜郡井手町。玉川は相楽群…

つばめ

冬のカリ、春のツバメとして、古くから和歌になじみが深い。とは言っても、万葉集には次の一首のみであり、新古今集には出てこない。つばくらめは古称、つばくろは別名。 燕来る時になりぬと雁がねは本郷(くに)思ひ つつ雲隠り鳴く 万葉集・大伴家持 すく…

湘南平

日本平、松本平、八幡平など地名の下につけて、「だいら」とか「たい」と読むが、「平」は山間の平地を意味する。湘南平(しょうなんだいら)は、神奈川県の平塚市と大磯町にまたがる標高181mの丘陵である。これまで何度となく登ったのだが、桜の名所でもあ…

花大根

今頃、野辺路を歩くと、紫色の草花が群れて咲いているのに出会う。花大根である。諸葛菜、紫花菜、大アラセイトウなどとも。以前にも書いたが、初めてこの花の名前を知ったのは、鎌倉・瑞泉寺の庭にいっぱい咲いていたので、受付の人に尋ねた時であった。こ…

『茂吉の短歌を読む』

先日、岡井隆著「『赤光』の生誕」について感想を書いたが、実はこの本と併せて岡井の『茂吉の短歌を読む』を購入していた。前者は、後者より後に書かれている。そして後者では、『赤光』のみならず『つきかげ』、『あらたま』、『つゆじも』などの歌集にも…

マアジ、メアジ、オニアジ、マルアジ、シマアジ、カイワリ、ムロアジ など種類が多い。マアジは、刺身、たたき、塩焼き、フライなどに適している。ムロアジは干し物のくさやに使われる。シマアジは全長1メートルにもなる高級魚で、養殖も行われている。 鯵…

黄水仙

ヒガンバナ科の多年草。普通の水仙は、冬の季語だが、黄水仙となると春の季語になる。南ヨーロッパ原産で、わが国には江戸末期に入ってきたという。園芸品種が多く、切花としても好まれる。 黄水仙人の声にも揺れゐたる 村沢夏風 黄水仙茶屋の戸袋風に鳴り …

西海子小路の桜

正午を過ぎたところで、芋焼酎「魔界への誘い」をオンザロックで呑みながら、米国におけるレッドソックとアスレチックスの開幕戦を観る。松坂が日本での開幕戦に続きまた開幕投手で登板している。至福の時。ただ、一週間ほど前から右の顎がものを噛むたびに…

周知のように春の七草の一つ。芹摘は古代より早春の野遊びでもあった。俳句では春の季語であるが、傍題に根白草、根芹、田芹、芹摘む などある。1月遅くとも2月に取り上げると春を寿ぐ気分がでる話題なのだが、今頃になってしまった。 芹の香の朝粥で足り京…

猩々袴

「かたくりの里」で見かけた草木について、少し調べた。猩々袴はユリ科の多年草。紅紫色の花の様子を猩々の赤い顔に、重なる葉を袴に見立てて、この珍しい名がついた。 わが庭に絶えしが中に惜しきもの吉野の 春の猩々袴 植松寿樹 しやうじやうばかまただ一…