天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

韮(にら)の花

アルゼンチン原産、ユリ科の球根植物。明治中期に渡来。なお「にら」は、古くは「みら」と呼ばれていたが、院政期頃からm→nという子音交替を起こした「にら」が出現し、「みら」を駆逐して現在に至っている。 はなにらのあたり暮れつつ抽んづる花二三輪揺る…

れんぎょう

漢字では連翹と書く。モクセイ科レンギョウ属。江戸時代に中国から渡来した。蕊は中空、全体に無毛。 連翹の花にとどろくむなぞこに浄く不断のわが泉あり 山田あき 連翹の花のしだれの下あゆむあゆむ寸暇が黄に烟るなり 安永蕗子 うつそみのおみなの残花たゆ…

ポアンカレ予想証明の認定

ユダヤ系ロシア人数学者のペレルマンが、2002年にインターネットで公表した証明が、今になって米クレイ数学研究所が認定した。それだけ証明の検証が困難だったのだ。ちなみに、この研究所は、2000年にポアンカレ予想を含む7つの数学の難問を「ミレ…

神武寺の山桜(続)

花は葉と同時に開く。微紅色の5弁花。果実は紫黒色。ソメイヨシノが出てくる(江戸末期)までは、桜の主役であった。吉野山の桜が典型。 あしひきの山桜花日並べて斯く咲きたらばいと恋ひめやも 万葉集・山部赤人 さざなみやしがの都はあれにしを昔ながらの…

神武寺の山桜

神武寺は神奈川県逗子市にある天台宗の寺院で、山号は医王山。手近なところで山桜と云えば、直にここを思ってしまう。ソメイヨシノに交じって数本の山桜があるに過ぎないのだが、何故か印象に残っている。今年はまだ早いかなと思って出かけたら、とんでもな…

三四郎池

「・・・三四郎は池のそばへ来てしゃがんだ。 非常に静かである。電車の音もしない。赤門の前を通るはずの電車は、大学の抗議で小石川を回ることになったと国にいる時分新聞で見たことがある。三四郎は池のはたにしゃがみながら、ふとこの事件を思い出した。…

東京大学(本郷)を歩く

前回訪ねたのはいつであったか。記憶にないほど間があいてしまった。構内の建屋は大方は見慣れたものであったが、理学情報科学関連の新しいビルができていた。安田講堂の高さを凌ぐほどのっぽである。小柴昌俊教授がノーベル物理学賞を受賞したのが契機にな…

花大根

文字通り、花の咲いた大根だが、中国原産のアブラナ科の宿根草・諸葛菜(しょかつさい)を指すことが多い。紫花菜、大アラセイトウなどとも。 死のときも越前訛り花大根 熊谷愛子 繭倉のほとり風呼ぶ花大根 鈴木蚊都夫 この春の花大根は株ふえて庭一面はそれ…

白木蓮

中国原産、モクレン科モクレン属の落葉高木。中国では玉蘭、白蘭ともいわれ、品格のある高貴な花とされている。木蓮は、通常、紫木蓮を指すが、しばしば白木蓮と混同される。白蓮(はくれん)とも言う。春の季語。 白木蓮咲きさやぎをり吹く風にうたれゐる今を…

辛夷

モクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。果実は集合果で、にぎりこぶし状のデコボコがある。コブシの名前の由来である。九州、本州、北海道および済州島に分布。「コブシ」がそのまま英名・学名になっている。 古くは、やまあららぎ、と云った。 陽に炎え…

切株の移植

鶴ケ丘八幡宮の倒れた大銀杏の行く末が心配で、再び訪ねた。右の写真のように切株の移植が終わっていた。残りの幹や枝がどうなるのか、まだ分からない。元の場所は整地されて、多分苗木が植えられるのだろう、縄張りがしてある。移植した切株には、ひこばえ…

折に触れて

しばらくご無沙汰していた二宮町の吾妻山に行ったら、さまざまの花が咲いていた。最近までは、冬枯れの光景で、色っぽいものなどほとんど見かけなかったので、すべてが目に鮮しかった。辛夷、白木蓮、諸葛菜、こごめ桜、連翹、しゃが、馬酔木、木五倍子 など…

沈丁花

ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木。学名は、ダフネ オドーラ 。 つまり、ギリシャ神話の女神ダフネの体臭。月桂樹のギリシャ名でもある。しかし原産地は中国南部というから、ややこしい。わが国では、室町時代にすでに栽培されていたという。 沈丁や…

知らざあ言って聞かせやしょう

歌舞伎の醍醐味のひとつに、かっこいい台詞(せりふ)と見得を切る所作がある。まさにかぶく装束と台詞である。泥棒の集団なのに、「白浪五人男」に人気があるのは、装束・所作と台詞のかっこよさに惹かれるからである。特に台詞は、気のきいた掛け言葉と七五…

江ノ島・春まつり

三月13日、14日の二日間、例年のように様々のイベントが開催された。大道芸、和太鼓演奏、白波五人男の仮装行列、貝供養、俳句大会、野菜即売会、貝細工体験 など。 鳴り出づる太鼓の音に祖父(おほちち)の膝に揺らげる昔 おもほゆ 和太鼓のリズムに想ふ…

久しぶりの大江健三郎

NHKのBS「プレミアム8 百年インタビュー」の「大江健三郎」を見た。大学の教養課程時代に、芥川賞作家の大江や柴田翔に夢中になったものだが、専門課程にいって以降は、全く興味が失せた。大江の「広島ノート」や憲法九条を守る会の活動を仄聞するにつ…

青鷺

コウノトリ目サギ科アオサギ属の鳥。サギ類の中で最大で全長88-98cm。モンゴルから中国、日本、東南アジアに分布。日本では4-5月に1回に3-5個の卵を産む。本州、四国では留鳥。 なよなよと靄のなかよりあらはれて青鷺づれの顔のしたしさ 吉植庄亮 青鷺にしら…

大銀杏春の嵐に倒れたり

3月10日未明(四時半頃)のことであった。鎌倉鶴岡八幡宮の大銀杏が、春の嵐に倒れてしまった。鎌倉幕府三代将軍・源実朝を暗殺する際に、公暁が隠れたという伝説の大銀杏である。高さ30メートル、幹の周囲は6.8メートル。樹齢推定千年という。悲しい…

小池 光にまねぶ

今、小池 光の歌集『静物』(2000年刊行)を読み返している。助詞や副詞の使い方、固有名詞、本歌取、表記、漢字の読み などさまざまの技法が使われている。それを真似してみた。 金麦とふ麦酒は飲まぬカラス来て自転車置き場の屋根にもの食ふ バスを待…

宿り木

ヤドリギ、寄生木とも書く。ホヤ、ホヨ、ホイ、トビヅタなどとも言う。落葉樹に寄生するヤドリギ科の常緑寄生植物で、北海道から九州、朝鮮・中国に分布する。根は寄生する木の梢に食い込み、養分を吸い取って繁殖する。大きな瘤を作る。早春、黄緑色の小花…

川崎展宏晩年の句

1927年1月、広島県呉市生れた。東京大学文学部在学中に加藤楸邨に師事、1980年には同人誌「貂(てん)」を創刊、代表を務めた。昨年12月29日、肺癌のため死去。以前から、その軽妙繊細な俳風に惹かれていたが、まだまとめて句集を読んだことが…

鎌倉と詩人たち

鎌倉文学館では、4月18日まで「鎌倉と詩人たち」―ことばを旅するー と題した展示がされている。詩に関して述べた詩人たちの短い言葉が興味深い。 「兎も角も先蹤を離れやう、詩歌といふものをもつともつと 自分等の心に近づけやうと試みた。」 島崎藤村「…

稚児ケ淵

江ノ島に稚児ケ淵という断崖がある。今は観光地なので恐ろしくもなんともないが、その昔、忌わしい悲恋の場所であった。自休という建長寺の修行僧が稚児・白菊に懸想してしまい、ストーカーまがいの行為をしたのであろうか、白菊は江ノ島の断崖から身を投げ…

水の門からきている。河や海の水の出入口。瀬戸とも言った。現在は、船が碇泊する河口や湾内の施設を指す。漁船が碇泊するところが漁港である。 磯の崎漕ぎ廻(た)み行けば近江の海(み)八十(やそ)の湊に 鵠(たづ)多(さは)に鳴く 万葉集・高市黒人 もみぢ葉の…

古事記に、「・・・二柱の神、天の浮橋に立たして、其の沼矛を指し下して画きたまへば、・・・」という周知の場面があり、ここに橋がでてくる。「天の浮橋」とは、なんと美しい言葉であろう。虹のように懸かっているイメージがある。 二つの異なる世界をつな…

湯河原梅林

もう梅の花の時期は過ぎたろうと思っていたが、藤沢駅のホームの看板には、湯河原梅林「梅の宴」が三月十四日まで、とあったので、行ってみることにした。東海道線の湯河原駅から幕山公園行きのバスが出ている。えらい人出に驚いた。例年は、行くのが早すぎ…

イヌフグリ

ゴマノハグサ科の二年草。実の形が犬のふぐりに似ていることから、可憐な花にそぐわない味気ない名前がついた。ヨーロッパ原産で明治初期に渡来したオオイヌフグリが多い。 犬ふぐり大地は春を急ぐなり 阿部みどり女 殉教の地の土赫し犬ふぐり 山田美保 冬を…

ローズマリー

地中海沿岸原産、シソ科の常緑低木。茎葉にやわらかい芳香がある。乾燥粉末にして香辛料に、精油は香料、薬用になる。通常4,5月に淡紫色の唇形花をつけるのだが、松田山ハーブガーデンでは、2月の末に早くも咲いていた。 いぬふぐりローズマリーと青いづ…

河津桜と菜の花

JR御殿場線・松田駅あるいは小田急線・新松田駅から徒歩で15分程度のところに、松田山ハーブガーデンがあり、その丘にはこの時期、河津桜と菜の花が咲きみだれる。平日か休日に関わらず大変な人出になる。毎年のように来てみるのだが、今年は目白の姿が…

塚本邦雄と椿(2)

中国では、椿に対して海石榴という字を当てることは既に述べたが、塚本は、この逆輸入の字もよく使う。また、「椿姫」「椿説弓張月」などの合成語、寒椿、藪椿、侘助、西王母 などの種類が出て来る。前回に続き、ここでは還暦以降の序数歌集から一首づつ紹介…