天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

毛虫

みんなに毛嫌いされるが、蝶や蛾の幼虫で、体に多くの毛のあるものの総称。毛は感覚器官でもあり、その配列は種類により決まっているらしい。俳句では夏の季語。傍題に、「毛虫焼く」あり。 自が糸に縋りて桜毛虫かな 石塚友二 青丹よし奈良の毛虫におののく…

五箇条御誓文

ひさしぶりに明治神宮の境内を歩いた。維新からちょうど百四十年経ったとのことで、掲示板には五箇条御誓文が紹介されていた。 一 広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スヘシ 一 上下心ヲ一ニシテ盛ニ経綸ヲ行フヘシ 一 官武一途庶民ニ至ル迄各其志ヲ遂ケ人心ヲシテ…

うつぼぐさ

日当たりのよい草地にはえるシソ科の多年草。花穂が武者が弓矢を入れるのに使った靫に似ているところに由来する。 紫の小さな筒花むらがりて槍の穂立つる野のうつぼ草 窪田空穂 路ばたの草とる人がとりのこし小砂利の中のうつぼ草の花 植松寿樹

アマリリス

と通称されているものは、彼岸花科の園芸植物。18世紀頃から改良されているという。花が咲く時期になると、びっくりするほど成長が早いので、鉢植えにして、家の中で育てることもある。原産地は熱帯アメリカ。実は、本物のアマリリスは南アフリカ原産で別…

芥子

ケシは地中海沿岸から小アジアにかけての地域が原産の二年草。モルヒネ(麻薬としての阿片)は、未熟の果実を傷つけて浸み出した乳汁を集めたもの。 くれなゐの芥子の花風に揺れながらいとまあるとき 亡き母思ほゆ 佐藤佐太郎 父の死につづき罌粟は花ひらき…

ドクダミ

毒を矯めるというところから、この名がついたという。また十の薬の効能があるので、十薬ともいう。ドクダミ科の多年草。本州以南に分布する。十字に開いた四枚の白い総苞片が目立つが花ではない。その中にある穂に見えるものが花である。だが、多くの人はこ…

しゃがの花

著莪、射干、胡蝶花 などと書く。アヤメ科の常緑多年草。 いにしへの嘆ける人の逃れみち流されみちに咲く しやがの花 福田栄一 懸命にうす紫の花咲きて嵐の前の射干の静まり 岡部桂一郎 悲しみに馴れつつおればあたたかく岸べの胡蝶花が 近づいてきぬ 花山多…

ヌマエビ

今日も一日、兵庫県三田の山中にいて、夕方、横浜に帰宅する。 表題のヌマエビは、甲殻類ヌマエビ科のエビ。体長3cmくらい。本州、四国、九州、沖縄に分布し、淡水に棲む。胸脚は根元に副肢をもつ。釣の撒き餌にされる。 道のべに水わき流れえび棲めば心…

勿忘草

今年も出張先の兵庫県三田の山中から今日のブログを書き入れている。もちろん、原稿はあらかじめ作って持参した。 今日はワスレナグサについてである。欧州、アジア原産のムラサキ科の多年草。この花、ヨーロッパでは文字通り「私を忘れないで」の意味で愛と…

河骨

こうほね、と読む。北海道から九州、朝鮮半島の小川や沼にはえるスイレン科の多年草水草。水底に横たわる白く硬い太い根茎が骨を連想させるところから、この奇妙な名前がついた。おしべは多数、めしべは一つ。根茎を乾燥したものを川骨(せんこつ)といい、…

箱根湿性花園

12月、1月と休園し、今年も3月20日に開園した。この時期は初夏の草花を見ることができる。ヒマラヤの青い芥子の花、九輪草の花、ニッコウキスゲ、タニウツギ、コウホネ、ハマナス、ミヤマカタバミ、ノムラカエデ、ワスレナグサ など、とても書ききれな…

白雲木

エゴノキ科の落葉高木。実は卵形で九、十月に熟して裂け、褐色の種子が出る。満開の白花の様子が白雲に似るとしての命名である。 雲ながれ白雲木の花房のさゆらぐ景や風は演出家 玉井慶子 夏あけの風たつ見えて空たかく白雲木の花ひかり咲く 大塚善子 極楽寺…

芍薬

しゃくやく、と読む。ボタン科ボタン属の多年草。アジア大陸東北部が原産で、わが国には、薬用、観賞用として古く中国から渡来した。古名は「えびす草」。ちなみに漢方の処方に当帰芍薬散があり、昔から女性の生理に伴う体調不良、不妊、流産防止などに使わ…

昼顔

ヒルガオ科のつる性多年草。日本全土、東アジアの日当りのよい平地にはえる。花は日中に開き夕方しぼむ。 昼顔に認めし紅の淋しさよ 松本たかし 昼顔や真昼の海の鳴るばかり 伊藤晴子 昼顔や玉石据えし流人墓 那須乙郎 肺尖にひとつ昼顔の花燃ゆと告げんとし…

スカンポ

酸模と書く。いたどり(虎杖)あるいはすいば(酸葉)の別称。雌雄異株のタデ科の多年草。茎は太く直立し高さは二メートルにも達する。若い茎は食用になる。 いづこにもいたどりの紅木曾に泊つ 橋本多佳子 いたどりを噛んで旅ゆく溶岩(らば)の上 野沢節子 …

沢瀉

おもだか、と読む。オモダカ科の多年草。中国原産で平安時代に渡来。この葉を家紋にデザインした戦国武将や大名がいた。 鷺に似てひと花すいと水をぬく青藺のなかの おもだかの花 佐佐木信綱 五月雨の築地くづれし鳥羽殿のいぬゐの池 におもだかさきぬ 与謝…

前衛短歌とは

「短歌人」のスピーチタイムというコラムに書く題材の関係で、寺山修司の俳句や短歌についてあらためて調べている。前衛歌人として名高い塚本邦雄や岡井隆の作品を読むと、喩法が駆使されており明らかにそれまでの短歌と違うことがわかる。だが、寺山の短歌…

石楠花

しゃくなげ、と読む。ツツジ科の低木。アズマシャクナゲ、ホンシャクナゲ、ハクサンシャクナゲ、キバナシャクナゲ などの種類がある。西洋シャクナゲは観賞用に作られた品種で庭木や鉢植にされる。 石楠花は寂しき花か谷あひの岩垣淵に影うつりつつ 島木赤彦…

都忘れ

キク科の宿根草で植物名はノシュンギク。深山嫁菜を観賞用に栽培したものという。 このもの悲しい名前は、承久の変で佐渡に流された順徳上皇が配所で詠んだと伝わる歌 いかにして契りおきけむ白菊を都忘れと 名づくるも憂し に由来するという。が、この歌で…

こでまり

中国中部地方原産のバラ科の落葉低木。日本では、江戸時代の初めから栽培されたらしい。先端が垂れる細枝に、四、五月頃に葉と共に白色五弁の小花が鞠のように固まって咲く。満開になると雪をかぶったように真っ白になる。ただ、右の写真は、近接して撮った…

あやめ

北海道から九州まで、東アジアの山野に自生するアヤメ科の多年草。とはいっても、山野で自生種を見かけるのは珍しく、もっぱら園芸品種を庭園などに見ることが多い。同類の多年草に沼沢地に自生するカキツバタがある。この名前は、花の汁で衣を染める際の書…

紫蘭

ラン科シラン属。止血作用があり、喀血、止血、鼻血、胃、腸の穿孔にも用いられる。鱗茎を8〜11月頃に掘り採り、茎、ひげ根を除き、水洗いした後、蒸してから外皮をはいで、天日で乾燥させたものが生薬で、びゃくきゅうと呼ぶ。 紫蘭咲いていささか紅(あ…

つつじ

「短歌人会」の川井怜子さんから、万葉集研究会で躑躅の歌を紹介されたとのことで、次の二首を教えてもらった。 細領巾(たくひれ)の鷺坂山のしろつつじ われににほはね妹に示さむ 柿本人麻呂歌集より 傘ふかうさして君ゆくをちかたはうすむらさきにつつじ…

妙本寺・袖塚

5月3日の短歌人・横浜歌会で、岡田みゆきさんがこの鎌倉・妙本寺の袖塚の歌を詠んでいた。今までに何度もこの寺には行っているのだが、袖塚については知らなかった。不明を恥じるしかないが、自分なりに歌にしてみようとあらためて訪ねた。 『吾妻鏡』で歴…

花水木

北米原産のミズキ科の落葉小高木。大正初年に渡来した。四、五月に四枚の大きな花のように見える白色、淡紅色の総包片の上に、黄色を帯びた小花をつける。幹には樹液が多い。アメリカ山法師とも。 水木咲いて中宮門主の恋古りし 渡辺水巴 庵ちさし深山みづき…

ゆきもちそう

連休でもあり、雨にも関わらず北鎌倉の円覚寺は人で溢れていた。塔頭の松嶺院は、花の寺として売り出すようであり、様々な草花が名札付で置かれている。これが大いに役立つ。今回注目したのが写真に撮った右の「ゆきもちそう」。初めて聞く名前であり、幻想…

さくらんぼ

バラ科の果樹オウトウの実。実桜と呼び、明治初年に欧州から渡来した。ややこしいが、桜の実とは違う。こちらの方は、さくらんぼより小さい球形の実で、熟すと黒紫になる。 大磯の小さな谷川の傍に見つけたさくらんぼが右の写真である。 ま夏日の日のかがや…

おたまじゃくし

周知のごとく蛙の子のことで、お玉杓子と書く。難しくは蝌蚪とも。大磯の高来神社境内にある小さな池でみかけたお玉杓子の群を写真に撮った。それを右に示す。まことに不気味であり、キモイ(気持悪い)。 子どもらが捕りてもて来しおたまじゃくし夜ふけて動…

大磯・高麗山

五月に入ると湘南の山々の新緑が一層目に鮮やかに映る。それに混じる薄紫の山藤がなんとも気高く感じられる。それに惹かれて大磯の高麗山を歩いた。谷間の大樹を覆うように藤の花が纏わって咲いているが、道がないので近くには寄れない。ただ、山藤の花は、…

藤の花

マメ科のつる性落葉低木。野田藤、山藤の二種がある。ほかに夏藤という初夏に白花をつける自生種もある。古典和歌以来、藤、藤の花、藤波、藤波の花、藤の花房 などの形で大変よく詠まれてきた植物である。ちなみに万葉集では、二十八首ほどに出てくる。 恋…