山背風(やませ): 東北地方の太平洋沿岸に山越えて吹いてくる冷たい北東風のこと。山瀬風とも書く。
津軽女等やませの寒き頬被 富安風生
やませ来るいたちのやうにしなやかに 佐藤鬼房
勝ち負けの弓のやませに散る花をまとゐの外の人も見よかし
弁乳母
野をわたる山背風(やませ)は頬に寒けれど春のひかりとなりし山々
結城哀草果
春曇り海の岬へ吹き落す長き山背(やませ)の七里長浜
福田栄一
荷風(かふう): 蓮の上を吹き渡る風のこと。
蓮の葉や水を離れんとして今日も暮る 村上鬼城
薫風: 若葉の間を吹き抜けて初夏の香りを運ぶ南風。
薫風や恨みなき身の夏ごろも 与謝蕪村
黄雀風: 陰暦五月に吹く南島の風。
人妻は髪に珊瑚や黄雀風 三橋鷹女
御祭風(ごさい): 「ごさいかぜ」とも。伊勢神宮祭礼(六月中旬)の頃に吹く北東の風。
小枕に仮り寝のさむき御祭風かな 飯田蛇笏
日方(ひかた): 日本海沿岸に吹く夏の季節風。「しかた」とも呼ぶ。
シカタ荒れし風も名残や時鳥 河東碧梧桐
茅花流し: 銀白色の茅萱の花穂を吹き渡る風。
茅花流し水満々と吉野川 松崎鉄之介
もう一度つばな流しに立ちたしよ 角川照子
夕凪(ゆうなぎ): 海岸地方では、夏の日没から午後十時近くまで無風状態になる。朝凪もある。
夕凪や仏づとめも真つ裸 宮部寸七翁
どの家もいま夕凪の伊予簾 今井つる女
朝凪や膝ついて選る市のもの 片山由美子
来ぬ人を松帆の浦の夕凪に焼くや藻塩の身も焦れつつ
藤原定家