天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

駅(3/10)

野田川駅(webから)

 地方の駅では、ホームの傍らに花壇を設置して、季節の花を見せているところもある。派手やかではないが、電車を待っている間、心休まる思いがする。そんな時、自分の死迄の残された時間をふと考える人もあるだろう。京都丹後鉄道(丹鉄)のいくつかの駅では、積極的に花壇を作っている。画像は、野田川駅のもの。


  次々に子を発たせたるがらんどうの母のやうなる駅の夕焼
                     稲葉京子
  ゆき疲る駅の昼顔生の緒のあまれるかたへまた急ぐべし
                    山中智恵子
  この世にぞ駅てふありてひとふたりあひにしものをみずか
  なりなむ              山中智恵子


  螢田てふ駅に降りたち一分の間(かん)にみたざる虹とあひたり
                     小中英之
  今しばし死までの時間あるごとくこの世にあはれ花の咲く駅
                     小中英之
  いまわれにきざす不安は地下駅の白き壁翳(かげ)なき円柱
  のため                長沢一作


  駅構内に古りし枕木積まれありかかるものらも旱(ひでり)
  にかわく               長沢一作


  秋日さす貨車駅の錆(さ)びし線路の上ふはふはといま白猫
  よぎる                長沢一作