雷のうた(5/5)
西村尚の歌に出てくる「鰤おこし」は、12〜1月,ブリのとれる時期に鳴る雷のことで、日本海側の地方でいう言葉である。
一輪の朱をのこして実となりし柘榴の闇を雷照らし過ぐ
富小路禎子
雷ながく聞こえてゐしが音もなく風に乱れて雪の降り出づ
樫井礼子
落雷の変電所よりひたしくる闇に沈みて見る白鳥座
馬場あき子
雷に出逢ふ憂鬱な夕ぐれが多い。えらぶのはいつもかれだが
岡井 隆
火渡りのやうなあけくれ帰るさも行くさも怖や火雷天神
山埜井喜美枝
冬の雷一と夜はためき赦さざるひかりはわれと妻を照らしぬ
田井安曇
蛇口にて水ふるえおり遠雷はいましも水源の空を過ぎしか
永田和宏
鰤おこし鳴りてくらめる沖遠く雪の布陣の陸(くが)へ押し来る
西村 尚