天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

洒水(しゃすい)の瀧

洒水の滝

 今回はひどい目にあった。何度も行ったはずなのに御殿場線の下車駅を間違えた。山北駅で下車すべきをひとつ手前の東山北駅に降りたのだ。改札口はなく、しかもスイカカードで来たために、後の精算がややこしくなった。
足柄層の隆起に伴って生じた裂線を浸蝕する瀑流が流れ落ちる洒水の滝は、「日本の滝百選」にある。またその水は「全国名水百選」に入っている。瀧は三段構成になっているらしい。おおまかにいうと、一の瀧は69m、二の瀧は16m、三の瀧は30m。現在、落石の危険のため、滝壺近くには行けない。
この滝は鎌倉時代、文覚上人が百日の間、滝に打たれる荒行を積んだことでも知られる。付近には文覚上人が安置したという滝不動尊がある。

      
  つばめ飛びげんげ花咲く山北に道違へたり洒水の瀧へ
  遠しとも近しとも言はず教へくれし老婆の道をたどりゆきたり
  幹分かれ枝分かれして三百年若葉小暗きおほいなる楠
  国道に沿ひて歩けばダンプカー ガス噴きつけて我を追ひ越す
  酒匂川治水工事のやまざれば次々とくるトラックの群
  名水に淹るる珈琲美味ければその香思ひて道を急げり
  くたびれてたどりつきたる谷間(たにあひ)の茶房は休み
  珈琲を恋ふ


  切れ込みの深き狭間(はざま)にかかりたる洒水の瀧の
  なまめかしけれ


  山峡(やまかひ)にかかれる瀧のなまめかししぶきに濡るる
  若葉の繁み


  山女釣る渓の川上ひとすぢの切れこみ深き瀧かかりたり
  近づきてしぶき浴びたき瀧なれど人寄せつけぬ落石の音
  足引きの山北の道わが着きし洒水の瀧は石も落とせり
  幾すぢの瀧かかるらむ山峡を曲りくねりてゆく酒匂川


      達筆の句碑読めざりし若葉かな
      山女釣り赤きウキ見る二人かな
      釣糸の赤きウキ見る山女かな
      落石の音に驚く山女釣り